今回のマイ・コレは、モーツァルトのクラリネット室内楽を二つ収録した、Arte Novaから出ていたアルバムです。
さて、そもそもクラリネットの室内楽というのもじつは珍しいものではあります。室内楽と言えば、たいてい弦楽のみあるいはそれにピアノが付くというパターンが多いからです。
しかし、モーツァルトにはクラリネットで有名なものが二つあり、このアルバムはその二つを同時に聴けるという、ある意味とても贅沢な一枚です。
けれども、私はその重要性に買った時は全く気が付かなかったのですね、これが。単に素敵だ、聴きたい!という気持ちだけで買ったものですから。14年くらい前です。
クラリネットは神奈川県立図書館所蔵CDのコーナーのハイドン交響曲全集の時にもご紹介しましたがモーツァルトの時代ようやく日の目が当たった楽器でして、こうやって主役に躍り出ることが珍しかった時代なのです。
神奈川県立図書館所蔵CD:ハイドン交響曲全集33
http://yaplog.jp/yk6974/archive/643
協奏曲では古典派あるいはそれより前ではソロで使うということはよくあったわけなのですが、クラリネットはそういったことがなかった楽器です。それはこの楽器の歴史が浅いという点に原因があります。
クラリネット
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88
そもそも、モーツァルト事典によりますと、第1曲であるクラリネット五重奏曲はA管のために書かれ、のちに今のクラリネット用に編曲されたと言います。ちょうど楽器が進化している途上の時代という背景を考える時、鵡べなるかなという想いがあります。
モーツァルトのこの二つの楽曲は、こういった点で音楽史上とても重要性を持つ楽曲なのです。
さて、まずそのクラリネット五重奏曲から参りましょう。
クラリネット五重奏曲 (モーツァルト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E4%BA%94%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%88)
シュタッドラー五重奏曲とも呼ばれるこの曲は、モーツァルト事典によりますと弦楽四重奏曲にクラリネットのソロが付いたものと考えてもよいと書かれています。確かに楽章構成は弦楽四重奏曲と同じですので、そう考えていいのではと思います。ただ、以下のCDを取り上げた時と編成が同じであるということは注目すべき点だと思っています。ピアノをクラリネットに代えれば編成は全く一緒です。
今月のお買いもの:モーツァルト ピアノ協奏曲第12番から第14番 ピアノと弦楽四重奏ヴァージョン
http://yaplog.jp/yk6974/archive/617
さて、モーツァルトはいったいこれをオーケストラ伴奏に代えるとなると、いったいどうしようとしていたのでしょうか。第3楽章を抜いてしまえば協奏曲と同じになりますが、さて・・・・・
私がそう考える理由は、実は第1楽章はまず弦楽四重奏から入るのです。そしてしばらくしてからクラリネットが入ってくるというその構造です。しかし単純に協奏曲を念頭においているとは考えにくいのは、クラリネットのソロ導入部がないということです。となると、やはり事典がいうように、純粋に室内楽として書かれているという可能性のほうが強いということなろうかと思います。
次の三重奏曲「ケーゲルシュタット・トリオ」は室内楽的な要素がはっきりしています。
ケーゲルシュタット・トリオ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%AA
ここではクラリネットはヴァイオリンの代わりに使われているわけで、もっと室内楽的に使われています。そう、ヴァイオリンの代わりなのです!
この点に最初私は気づかなかったのです。へえ、ヴァイオリンがなくてクラリネットなんだね、って感じです。しかし今では「え、ヴァイオリンの代わりにクラリネットなのか!」に変わりました。この曲、正式名称は「ピアノ、クラリネットとヴィオラのための三重奏曲 変ホ長調 K.498」ですから。
それが三つとも全く対等に会話しているのです。いやあ、その点は10年以上たってようやく分かりました。だからこそ、この曲は特に有名な曲でもあります。五重奏曲は弦楽四重奏曲に付け足したものですが、このケーゲルシュタット・トリオでは完全にソロの一つ、なのですから。
このCDではそれぞれソリストによって演奏されているせいか、その演奏の完成度にどうしても注目してしまいがちだと思うのですが、こういった点から眺めてみると、すばらしさの陰でこの二つの曲が音楽史における位置の重要性がすこしかすんでしまっているのかな、という気がします。それはこの演奏があまりにも素晴らしいが故なのですが。
古典派らしい強弱のつけ方やテンポ感はもう言うことなしです。決して有名どころのソリストばかりではないのですが、端整ながらしっかりとすばらしいアンサンブルを聴かせてくれます。そう、この二つの曲が占める重要性が吹っ飛ぶくらい^^;
五重奏曲は、もしかすると弦楽四重奏団とクラリネットのソリストという組み合わせの演奏も面白いのかもと、考えさせてくれます。
聴いているCD
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
クラリネット五重奏曲イ長調K.581
三重奏曲変ホ長調K.498「ケーゲルシュタット・トリオ」
ラルフ・マンノ(クラリネット)
ミヒャエラ・ベッチュ・ネフテル(ヴァイオリン)
ラエル・クンツ(ヴァイオリン)
ハルトムート・ローデ(ヴィオラ)
グイド・シーフェン(チェロ)
アルフレード・パール(ピアノ)
(BMG Arte Nova BVCC-6019)
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