かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ワイル ベルリン・レクイエム他

今月のお買いもの、まず第1枚目はワイルのベルリン・レクイエム他です。へレヴェッヘ指揮、アンサンブル・ミュジク・オブリク他です。

これは横浜関内の「プレミア・ムジーク」で買い求めた一枚です。

ワイルは私が最近はまっている作曲家の一人です。ワイルと言いますとミュージカルや劇音楽で有名な人です。特にワイマール共和制時代のドイツにあって、ちょっと斜に構えた独特の世界を持つ音楽を作曲したことで知られています。三文オペラや「マハゴニー市の興亡」がその点で高い評価を受けています。

クルト・ワイル
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%AB

このワイルの世界を語りだしますとながーくなりますので、今回は割愛しますが、ワイマール時代の空気を反映したような音楽は、個性的です。しかしその個性は日本ではあまり受け入れられていないように思います。というより、比喩のレヴェルが高いので、なかなかついてゆけないというところでしょう。

実際にワイルの世界を理解するには、芸術だけではなく政治学社会学、経済学や論理学、はたまた哲学など、様々な分野に興味がないと難しいというのが私の実感です。こう書いている私ですら、果たして彼の芸術をきちんと理解し得ているか、はなはだ疑問です。

それはおそらく、特にワイマール時代の音楽がブレヒトに影響を受けて作曲されたものが多いという点にあるのだと思っています。

ベルトルト・ブレヒト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%92%E3%83%88
(簡単に言いますとこの人かなり左です。そのため、ワイルはのちにブレヒトとは距離を取っていきます。)

実際、このCDに集録されている曲のうち、「森の中で死す」と「ベルリン・レクイエム」はブレヒトの詩です。いかにワイルがブレヒトに影響を受けたかが分かります。

ちょうど1927年から、ワイルはブレヒトと創作の共同作業をするようになり、「マハゴニー市の興亡」や「三文オペラ」などの社会の不条理を鋭く突いた作品を発表します。そんな作品と同じ意味合いを持つのが、声楽が入っている二つの曲ということになろうかと思います。

一方、ワイルは普通に管弦楽室内楽も作曲しており、アメリカでの活動と比べますと色合いの違う作品を生み出しています。そういった作品が2曲目の「ヴァイオリンと管楽合奏のための協奏曲 」になります。

その点で、このCDはワイルの音楽のエッセンスが詰まった一枚と言えるでしょう。

特に形式面で注目なのは、やはりベルリン・レクイエムでしょう。1928年の作品で、フランクフルト放送局の10周年を記念して委嘱されました。レクイエムとなっていますが実際には通常のレクイエムの体裁を取っていません。その理由は、以下のブログのほうが詳しいでしょう。

私たちは20世紀に生まれた 赤いローザの死を悼む
http://numabe.exblog.jp/11519909/

つまりこの曲には、弾圧による人の死というものが関わっているわけで、それを悼むという意味があって「レクイエム」という「名称」を使っているというわけなのです。

上記ブログを読みますと、このベルリン・レクイエムだけでもとても考えさせられるインパクトを持っています。第3曲が検閲逃れのために差し替えられているという点からしても、現代の私たちに対してもメッセージをきちんと伝えているように思います。

ブレヒトもワイルも、ワイマール時代の自由な空気のもと創作活動をしてきたわけですが、二人のスタンスには若干のずれがありました。ブレヒトはカッコ書きでも述べましたが左寄りの人ですし、ワイルはほぼ中庸。そのため、特にアメリカにわたってからは二人は距離を取るようになりました。

ワイルにとって、この時代が一番幸せだったように思います。

さて、そんなある意味癖のあるワイルを表現しているのは、なんとバロック演奏で有名なへレヴェッヘなんですね。オケも合唱団もどちらかと言いますとバロック音楽で耳にする名前ですが、そんな団体がワイルを演奏しますと、なんとワイルの世界がくっきりと浮かび上がってくることでしょう!

ソリストのひとりペーター・コーイは日本ではバッハ・コレギウム・ジャパンに参加していることで有名な人ですが、彼がバッハだけでなくワイルまで歌うとは・・・・・しかも、その表現力は豊かで自在です。それを第1曲目「森の中で死す」でじっくりと聴かせてくれます。

ワイルの独特で癖のある世界が、美しいものに変わる・・・・・・そんな一枚です。



聴いているCD
クルト・ワイル作曲
森の中で死す 作品23
ヴァイオリンと管楽合奏のための協奏曲 作品12
ベルリン・レクイエム
アレクサンダー・ライター、ペーター・コーイ(バス)
シャペル・ロワイヤル
フィリップ・へレヴェッヘ指揮
アンサンブル・ミュジク・オブリク
(Harmonia mundi HMA1951422)



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