かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:リリンクのマタイ受難曲

今回のマイ・コレは、バッハのマタイ受難曲です。ヘルムート・リリンク指揮、シュトゥットガルト・バッハ合奏団、ゲッヒンゲン聖歌隊他の演奏です。

これを買いました14年ほど前、そのきっかけは現在「今月のお買いもの」で取り上げていますバッハ・コレギウム・ジャパンヨハネ受難曲を聴いたことがきっかけでした。当時、アマチュア合唱団に入っていた私は、モーツァルト至上主義の音楽監督の方針に、何か物足りないものを感じていました。間違ってはないけど、もっとだいじなものを忘れてはいないか・・・・・

そこでたどり着いたのが、バッハだったのです。第九にも二重フーガが存在しますが、そもそもそのフーガと言えばバッハの職人芸であるわけで、そういった点を顧みていないと思ったのです。

たまたま、日本のバロックの団体(それがBCJだったわけです)がヨハネ受難曲をやるということを知りまして、なんとコンサート当日、職場から駆けつけましてその場でチケットを買ったのです。今から考えますとよく当日買えたなあと思いますが・・・・・

それと、その前にブラームスを聴いていたこともバッハへと傾倒していったきっかけでもあります。特に、交響曲第4番のパッサカリアなど、後期ロマン派に与えたバッハの影響を見て、その源流に触れたいという、クラシック好きというよりもむしろ、歴史好きの意識が働いたのです。

で、コンサートのヨハネがとてもよかったので、今度はCDでも聴きたいと思っていましたら、その時ヨハネはありませんで・・・・・マタイならある、という状況でした。しかし、当時バッハの受難曲と言えば、リヒターです。しかし私はあまのじゃくで、リヒターでは時代精神が違いすぎるのではないかと思い、リヒターではなく当時比較的録音が新しかったこのリリンクを選んだのです。

演奏に入る前に、まずマタイがどんな曲か、ごく簡単に説明しておきます。

マタイ受難曲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%BF%E3%82%A4%E5%8F%97%E9%9B%A3%E6%9B%B2

一番詳しく載っているのはこのウィキでしょう。これくらいのヴォリュームがありますとバッハ事典が要りません^^;

エス磔刑を題材に選んでいるのではあるのですけれど、それを新約聖書「マタイによる福音書」に準拠して台本が描かれていることから、マタイ受難曲と言われます。いっぽう、ヨハネは当然、ヨハネの黙示録に基づいて台本が描かれているのですね。こういった違いは、曲の内容を左右するので、とても重要です。

マタイはとにかくヴォリュームが多いのですが、コアのテクストは、キリストの性格付けにあります。マタイではとても人間くさいイエスが描かれます。自らを犠牲にすることで人類の罪を被ろうとするわけなのですが、そこで死ぬのをさんざん悩むわけなのです。自ら望んだことではないのですが、でもこれも「神の子」としての運命であると言い聞かせ、イエスゴルゴダの丘へと向かうのです。

そういった点に重点が置かれているため、特にリヒターの演奏は思い入れが激しいと言われ、特にかつては熱狂的なファンが存在しましたが、リリンクはもっとすっきりと、むしろピリオド楽器的なアプローチをかけています。それゆえに、実に3時間はかかろうというこの曲が、まったく飽きないのです。むしろ、聴き手をぐいぐいと引き込んでいきます。

盛り上がりという点では確かに足らないかもしれませんが、しかし合唱団の歌わせ方がとても秀逸です。イエスを殺せ!というイスラエルの人たちの声を磔刑の場面に近づくにつれて厳しいものにさせる点は、映画を見るよりもぞくぞくします。

私は方々でいうのですが、このマタイを聴いてしまうと、下手な映画を見ることが出来なくなってしまうのです。それだけ、リリンクの演奏自体もとてもドラマティックなものがあります。緊張感とそれを維持するテンポ。モダン演奏だからこそすっと耳に入ってくる素直な音。ウィキの名盤には入っていませんが、私は名盤であると思います。

それは一言でいえばやはり端整であるということです。それがまぎれもなくドラマティックな部分を作り出しているのです。リリンクの場合、この曲が福音記者などのレチタティーヴォや合唱が主体となっていることを重視していまして、声楽部分がとても秀逸で、それだけで十分盛り上がっているのです。

私も一度リヒターの演奏をFMでしたかで聞いたことがありますが、おなかいっぱいでした^^;確かに素晴らしいのですが、リヒターではあまりにもロマンティシズムになりすぎていて、現代的な感覚ではないと私は思います。名演には違いないのですが・・・・・

その点、リリンクは現代的なテンポ感を大切にしながら、声楽には表現をつけることをいとわず、その要求に合唱団が完全に応えています。聖歌隊だからかもしれませんが、その点は高く評価できるものと思います。



聴いているCD
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
マタイ受難曲BWV244
クリスティアーネ・エルツェ(ソプラノ、アリア)
インゲボルグ・ダンツ(アルト、アリア)
ミヒャエル・シャーデ(テノール、福音史家)
マティアス・ゲルネ(バス、イエス
トマス・クヴァストホフ(バス、アリア)
ウルスラ・フィードラー(ソプラノ、第1の下女)
バルバラ・オスターロー(ソプラノ、第2の下女)
ベッティーナ・アリアス(ソプラノ、ピラトの妻)
ダニエラ・シントラム(アルト、第1の証人)
マルティン・ヴァンナー(テノール、第2の証人)
クリストフ・ヴァ―グナー(バス、ユダ)
ペーター・ペッペル(バス、ペテロ)
ラルフ・エルンスト(バス、ポンテオ・ピラト
イェルン・ザクート(バス、第1の祭司)
シュテファン・ミュラー=ルッパート(バス、第2の祭司)
ゲッヒンゲン聖歌隊
ヘルムート・リリンク指揮
シュトゥットガルト・バッハ合奏団
(Haenssler COCO-78346→48)



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