かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:ヤマカズさん最後の「第九」

今日のマイ・コレは、はたまた第九です。山田一雄指揮、札幌交響楽団という、今回も地方オケを取り上げることになりました。

これは、山田一雄の最後の「第九」です。おそらく最後の演奏記録なのではないかと思います。一応新日フィルとジュピターを録音しているというのが最後となっていますが・・・・・

それまでは買っていないので詳しいことはわかりません。この第九は1991年5月20日、札幌交響楽団第325回定期演奏会の録音です。

実は、この演奏会は札響の「ベートーヴェン・ツィクルス」のうちの一つでした。後二つというところで、ヤマカズさんはこの世を去ってしまいます。しかし、この録音はそんな遺言めいたものが全くないのです。

生き生きとしたオケ。のびやかな合唱。地方オケも素晴らしいことを教えてくれます。特に、北海道はヤマカズさんのファンが多かった地域で、その熱気すら伝わってきます。この演奏には私の合唱団時代の友人が参加していまして、その時の様子を私は友人から直に聞いています。

北海道という土地はどこに人材が隠れているかわからない地域で、特に札幌、函館、室蘭といった都市は優秀な合唱人を輩出することでつとに有名です。その中でも特に室蘭は室蘭工業大学が音楽に強く、さらに新日鉄が企業レヴェルで力を入れていたことから、北海道の中でも優秀な人材を輩出している地域でもあります。

そんな人材が、この演奏会の合唱団員としてまたぞろ参加しているのです(合唱団は札幌アカデミーですが、そこに「応援」という形で参加しています)。それが、ヤマカズさんと対等に渡り合っています。実際、ヤマカズさんに文句すらつける人がいて、それが理にかなっているため、ヤマカズさんですらその言を聞き容れるほどの人材がごろごろしています。

それが演奏として表れているのが、フォール・ゴット!の前のソリスト。プロが完全に音程が乱れています。これは合唱団の熱気に押されたが故、冷静さを欠いているものとなっています。それくらい、この演奏はとても合唱団に力があります。

そんな中で振ったのが、この演奏なのです。ですので、とても緊張感が伝わってきますし、実際演奏はとても引き締まっています。

合唱団のまとまりという点では多少難もありますが、かといってアンサンブルが悪いのかといえば、これが抜群です。難なのは二重フーガへ入る直前だけ。オケも統率がとれていますし、聴いていて安心できます。

もちろん、例えばトスカニーニとかフルトヴェングラーと比べてしまえばそれ以上では決してないのですが、しかし、熱気が伝わってきます。こういう演奏はなかなかないと思います。淡々とした中で、だんだん盛り上がってゆくその様は、まさしくライヴだと思います。

いったい、これがその年に亡くなる方のタクトなのだろうか・・・・・と思ってしまいます。もちろん、私がこれを買ったのはヤマカズさんの指揮だったからというのも当然あります。札響の演奏なんてなかなか手に入るものではありません。おそらく、これがヤマカズさんで、なおかつ第九で、それが最後の第九だったからこそ、東京で売られていたのでしょうから。

そのおかげで、ほぼ20年前のヤマカズさんの演奏を、私はいまだに聴くことができます。そして、東京にいながらにして、地方オケの素晴らしさを実感することができます。

もし、山田一雄がそのタイミングでこの世を去っていなかったら、私はこの演奏に出会うことはあっただろうか・・・・・と、今でも考えてしまいます。もっと、神フィルを聴きなさいと、ヤマカズさんに怒られているような気がします。



聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付」
大野洋子(ソプラノ)
西明美(メゾ・ソプラノ)
大野徹也(テノール
木村俊光(バリトン
札幌アカデミー合唱団
札幌放送合唱団
(合唱指揮:宍戸悟郎)
山田一雄指揮
札幌交響楽団
(ファンダンゴ 25NW3004)