かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ベートーヴェン ピアノソナタ全集3

今週の県立図書館のコーナーも、ベートーヴェンピアノソナタ全集です。今回はその第3集で、ピアニストは山根弥生子さんです。

この第3集から番号順に戻ります。つまり、番号順と作曲順が基本的に同じ、ということになります。収録曲は第7番から第10番までで、ピアニストで作曲家であったベートーヴェンの若い発露が感じ取れます。

演奏については、基本的に以前聴いたものと印象は変わっていませんが、このCD自体についてもう少しつけ加えれば、とにかくまじめ、という一言に尽きるのではないかと思います。淡々と音楽は流れてゆくのに、聴いているこちらはだんだん気持ちが高ぶってくる・・・・・・

そういう演奏にはあまり出会うことはありません。それは、この全集で貫かれていることでありますが、この一枚を聴いても本当にひしひしと感じます。

以前の言及は以下の通りです。

第7番
http://yaplog.jp/yk6974/archive/61
第8番
http://yaplog.jp/yk6974/archive/63
第9番・第10番
http://yaplog.jp/yk6974/archive/64

ちょうどこの第3集までに収録されている曲は弦楽四重奏曲を生み出す前の作品になります。それを作曲順に聴けるというこの全集は、曲を簡単に理解できるものでは決してなくても私は価値があるものと思います。

確かに、有名ピアニストの演奏もすばらしいと思いますが、私は全集であればこういう演奏こそ価値があると思います。全集というのは、その曲全てが聴ければいい、というものではないと思っています。その全集で何を伝えたいかだと思います。

例えば、この山根さんの全集であれば、ベートーヴェンピアノソナタの歴史をたどるという側面があります。でも、録音順(つまり、その年月日)は必ずしもそれにこだわっていないので、それ以外、つまり音楽的なものも当然追求しているわけです。いいピアノ、演奏者の体調、そしてホールの選定等、綿密に練り上げられて作られているということがわかります。

この第3集ではホールが洗足学園前田ホールという、アマチュアではまず使うことのできないホールを選定していますが、それはとてもありがたいことです。国内盤であってもまずこのホールでの演奏などなかなか聴けません。それがベートーヴェンピアノソナタで聴くことができる・・・・・こんなしあわせなことはありません。

私はこのホールの地元(正確には、沿線)ですが、それでも使うことはできないのです。ですから、このホールを選択していただいたのは本当にすばらしいことだと思います。こんなにも響きが美しいホールが、日本に、しかも自分の地元にあったかと。

日本にはいい響きのホールが実は数多くあります。前田ホールもそのうちのひとつといえましょう。勿論、そうではないホールもあるのは事実ですが、探せば響きのいいホールはいくらでもあります。そんな例を、この全集では声高に叫けばず、演奏で訴えています。

こういう地道な例は、クラシックファンとして大事にしたいですし、そのような演奏を保有している県立図書館はさすが役目をきちんと果たしているなと感心します。



聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノソナタ第7番ニ長調作品10-3
ピアノソナタ第8番ハ短調作品13「悲愴」
ピアノソナタ第9番ホ短調作品14-1
ピアノソナタ第10番ト長調作品14-2
山根弥生子(ピアノ)
(元CD:ADAM ACD0035)