かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:チャイコフスキー 祝典序曲「1812年」他

今回の「マイ・コレクション」は、祝典序曲「1812年」を初めとする、彼の管弦楽曲集です。指揮はシャルル・デュトワ、演奏はモントリオール交響楽団です。

モントリオール響といいますと、カナダのオケですね。実は私はカナダのオケはこれしかもっていないはずです。有名なオケですが、ではそれ以外のカナダのオケは?と聞かれて私はこたえることができません。あるはずですが、国際的にも有名なのはこのモントリオール響くらいになりますね。

それを育て上げたとも言うべき、シャルル・デュトワ。実は、私は彼を生で見たことがあります。もう10年くらい昔になりますが、デュトワがちょうどN響の主席指揮者になる直前に、銀座の山野楽器で見かけたのです。あれ?と最初は思いましたが、英語ではない言葉を聞いて、恐らく間違いないと確信しました。

いい叔父さんでしたね。雰囲気が良かったです。店員も少し緊張していたような気がします。

私はそのときどうしたかですって?そっとしておきました。仕事も兼ねていたでしょうが、指揮者という人は仕事のために意外とCDをたくさん買うものです。その邪魔をしたくなかったのです。いい演奏をしていただくために・・・・・

そんなデュトワの指揮に初めて触れたのが、このCDでした。しかし、このCDを買った理由は、実は指揮がデュトワだからではありません。1812年を聞いたのも実は高校の音楽の時間で、これも衝動買いに近いものでした。しかしながら、いい演奏がない・・・・・

このCDは、下校途中に途中の乗換駅にあった小さなCD店で買ったものです。ですから、これしか選択肢がなかったという状態に近かったのです。

それと、私の目を引いたのは、シンセサイザーを使っているという点でした。どこでどう使っているのか?使うとすればあれしかないはず、と思いながら買った一枚です。

さて皆さん、シンセをどこで使っているでしょうか?ノーヒントでわかった方は、かなりこの曲を聴きこんでいる方とご想像します。

答えは、「大砲と鐘の音」です。

恐らく、大砲まではこの曲を知ってさえいればわかるかと思います。しかし、鐘の音までは当時私もわかりませんでした。当然、上記の「あれしかないはず」というのは大砲だったのです。しかし、それ以上に鐘の音までシンセで表現しているのには驚きました。

それを意識してか、この演奏はかなりテンポに重点を置いて演奏されています。1812年ですと、かなりテンポが激しくゆれる場合が多いのですが(特に、ロシアや旧ソ連のオケの演奏などは)、そんなことは一切ありません。その上、ダイナミクスさも兼ね備えています。アインザッツの強さはすばらしく、アルバン・ベルク顔負けです。

一定のテンポというわけではありませんが、それでもかなり理性的な部分があり、この点はやはり外国のオケの演奏なのだなと感じます。

この曲で実際の大砲、つまりは空砲が使われるということのほうが珍しいというべきでしょう。私もその演奏にめぐり合うまで、10年ほどかかりました。日本のオケでも、陸上自衛隊が空砲を撃つという演奏に出会ったか、記憶が定かではありませんが、陸自中央音楽隊の演奏であったような記憶があるのですが、それが定かではありません。少なくとも、オーケストラの演奏会で陸上自衛隊が参加したというのは、私の記憶の中にはありません。

それだけに、このCDでシンセサイザーが使われているというのは、一つの解決策を私たちに見せてくれています。実際、カナダ陸軍の協力だって得られたはずですから・・・・・まあ、冷戦時代の演奏ですから、それはなかなか難しかったのだろうと想像します。

そのほかの曲は通常のオケのみとなっていて、イタリア奇想曲は私が高校時代口ずさむほど大好きになった曲で、これだけ明るく生き生きとした曲をチャイコフスキーは書くのか!と驚きを隠せなかった曲です。今でも大好きです。全体の中でもこの演奏が一番好きだといってもいいでしょう。統制のとれたアンサンブル、それでいてやさしいタッチ。金管の美しさ。理性的な演奏。うっとりです。

その次は言わずと知れた「くるみ割り人形」の組曲です。実は買ったもう一つの理由が、この組曲の最後「花のワルツ」が聴きたいということでもありました。これはCMで当時随分使われており、またポピュラーな曲でもあります。そんな曲もライブラリにおいて置きたいと思ったからです。それまで、ある意味重たい曲ばかりそろえてきた私ですが、さすがに重たい曲ばかり聞くわけには行きません(そのうちの一つが、マーラーだったわけですから!)。たまには肩のこらない曲も聴きたいと思ったわけです。

今でも、このCDに収録されている曲は気楽に音楽が聴きたいというときに聴く曲ばかりです。ただ、最初と最後の曲を除いて・・・・・

最後の曲は、スラヴ行進曲。そう、これも戦争に関わる曲なのですね。実はこのCDを買った理由のもう一つに、戦争関連の曲が二つ入っていることがありました。当時、私はいわゆる兵器マニアでもありました。「航空自衛隊の戦力」という本も持っていました。それくらい、国防に興味がある少年でした。だからといって軍国少年だったのかといいますと、そうではありませんでした。戦争は絶対反対の立場を崩すことはありませんでした。ただ、それでも自衛隊の戦力の高さというものに非常に興味を持っていたのも事実です。

そんな理由もあり、最後のスラブ行進曲は血沸き肉踊る曲なので、私を夢中にさせました。チャイコフスキーセルビアとロシアにささげた曲だけあって、荘厳な曲です。それを、モントリオール響はすばらしいアンサンブルで表現しています。

つまり、この一枚は私の当時の興味をすべて満たす一枚だったのです。1812年だけならもう一枚たしか置いてあったはずですが、これだけ私の当時の要望を満たすCDはこれしかなかったのです。

今でも、この一枚は何かにつけて聴く一枚です。特に、1812年はサッカーA代表の試合があるときには、どうしても聴いてしまいますね。野球侍ジャパンの時にも、聴いていた曲です。携帯にも入れてあり、手放せません。

これも、今は廃盤のようですね。かつては結構再販していたCDですが、このところとんと見かけなくなりました。そういう意味では、今では貴重な一枚です。



聴いているCD
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
祝典序曲「1812年」作品49
イタリア奇想曲 作品45
組曲くるみ割り人形」作品71a
スラヴ行進曲 作品31
シャルル・デュトワ指揮
モントリオール交響楽団
(LONDON F35L 20018)