かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:組曲 銀河鉄道999

火曜日も「マイ・コレクション」になりました。今回は、アニメ「銀河鉄道999」の組曲です。

え、サウンドトラックじゃないの?と仰るかもしれません。そうなんです。サウンドトラックではないんです。あくまでも、組曲なのです。

つまり、サウンドトラックを使って、新たな曲として編成しなおしたものです。

当時、というよりそれより前、小学生のころ、私は銀河鉄道999にはまっていました。原作アニメともそのころが人気の絶頂でした。

それが一段落ついた高校生の時、このアルバムに出会いました。これは即買いでした。

銀河鉄道999といえば松本零士氏の代表作で、鉄郎とメーテルアンドロメダにある機械の体をくれる星へ向かうというストーリーですが、そこには人間としての尊厳など、私たちに考えさせる内容がちりばめられています。

しかし、音楽自体はそんな内省的な内容ではありません。もともと、サウンドトラックを基本としていますから、楽しいものです。

まず、第1曲目「序曲〜出発(きらめく銀河〜アンドロメダへ)」は、遠い未来の地球にあるメガロポリス銀河鉄道ターミナルの様子で始まります。これから、999に乗って出発するという場面。途中、ベートーヴェンピアノソナタ「月光」が奏でられます。実は、物語では水に囲まれた、過去の地球(いわゆる、今の世界なのですが)に良く似た惑星に止まるのですが、そこでベートーヴェンに憧れる青年に出会います。その青年が奏でていたのが、「月光」なのです。

それが意外とこの物語を貫くテーマにもなっていまして、永遠とは何か、生命とは何か、希望とは何かをということと無関係ではないのです。そこに、楽聖ベートーヴェンの音楽を持ってくる。にくいです。

前に、ベートーヴェンピアノソナタでも触れましたが、私はこの曲でベートーヴェンピアノソナタに目覚めたと言っても過言ではありません。ただ、当時はお金がなかったのでオーケストラ曲へと走りましたが、いつかはピアノソナタをきちんと聴きたいという意思だけは持ち続けていました。そのうち、ある方との出会いが私をベートーヴェンピアノソナタへと導いてゆくことになります。そのきっかけを作ってくれた曲です。

第2曲目「慕情(母の面影−青い地球)」は、鉄郎の母の思い出と、挿入曲「青い地球」をモティーフにしたものです。旅をしていれば当然親子連れとも出会います。鉄郎は父と母をなくし、しかも母は機械伯爵によって人間狩りの獲物として目の前で殺されてしまいます。そういった彼の感情がいっぱい詰まった曲です。悲しくもあり、また温かくもある音楽です。母とは、そういう存在かもしれませんね。失ってみて、母の偉大さはわかるというものです・・・・・

第3曲目「挑戦(襲撃−怒り−苦悩)」は、物語中でよく緊迫した場面で使われたサウンドトラックです。それをきちんとした1曲に仕上げたものです。これを聴きますと、物語中のいろんな緊迫した場面が思い出されます。人間を岩に変えてしまうガスに覆われた惑星で、緊急発進する999の場面や、列車強盗に襲われる場面などです。また、鉄郎やメーテルが怒りに打ち震える場面にも使われています。

第4曲目「不思議な星(未知への誘い)」は、いろんな惑星を描いた曲の第1曲目。雨がずっと降り続く惑星や、太陽系最後の惑星である、氷に包まれた「冥王星」。西部劇のような街となった「火星」や、戦場惑星「エルアラメイン」・・・・・そこで多感な鉄郎は地球以外の世界を知ってゆきます。

第5曲目「流浪(悲しみの旅路)」は、哀愁きわまる曲です。特に、弦とオーボエスキャットがよく表現しています。楽しいことばかりではありません。悲しいこともたくさんあります。ガラスの体をしたウェイトレスが乗客の身代わりになって死んでいったり、心が通い合った友人と別れなくてはならなかったり・・・・・人生は出会いと別れの連続であると教えてくれます。そんなことを表現している曲です。最後は999が急いで出発してゆく場面を描いたサウンドトラックで終わります。

第6曲目「冒険(孤独−追跡)」は、鉄郎の心のうちを描いた曲です。旅をする間には戦うことが多いのですが、その間にはふとメーテルがいなくなったり、また敵に追われることも敵を追いかけることもあります。そんな鉄郎の心のうちを表現したものです。

第7曲目「出会い(宇宙の盗賊たち)」は、999が立ちよる星の中で、大四畳半惑星(松本零士ファンならご存知だと思いますが、これは松本氏の作品「おとこおいドン」の世界なのですが)という昭和の世界そのものの惑星へ到着します。そこで出会った男性と鉄郎は友人になります。どうやら鉄郎は昭和の四畳半の世界が似合っているようで・・・・・もう二度と会わないかもしれないのに、鉄郎はその部屋の主と終生の友情を誓い合います。

その次に止まったのは、西部劇さながらの惑星。そこには、999に乗りたくて、乗客のパスを狙っている盗賊がいます。その決闘は鉄郎の勝利に終わりますが、相手とは心が通ったようです。

そんな中で鉄郎が思い出したのは、貧しい中希望を持って生きている、第四畳半惑星の友のようです。何か今でも通じるような感じの音楽です。閉塞感ただよう平成の世。しかし、大事なものを忘れていないか?と問いかけてくるようです。

第8曲目「終曲−永遠の祈り(望郷−目覚め−祈り)」は、地球や母を鉄郎が思い出しながら、前を向いて歩いてゆくということをモティーフにした音楽です。文明と人間との狭間で揺れ動きながら、機械の体をもらえる星へと旅をし続ける鉄郎・・・・・そんな様子を表現した音楽です。ハッピーエンドという終わり方でもないですし、またクライマックスがあって堂々と終わるわけでもありません。遠くへ遠ざかって行くような終わり方です。つまり、終着駅へはまだたどり着いていない・・・・・

このCDが出た当時、原作も終わっていて、さらにテレビアニメも、映画も一応の決着を見ていました。ですから、私も最後どうなるかは知っています。そして、このアルバムが出た当時、多くのファンが知っています。それでも、最後をあえて描かずに終わる・・・・・恐らく、組曲にした当時はまだ終わっていなかったためだと思いますが、それでも追加を出さずに終わっている・・・・・それがまた、私たちにいろんなことを考えさせてくれます。

実は、この組曲だけでほとんどサウンドトラックは使い果たしています。ですので、もう他に表現するものはない、といえるかもしれません。終わりがどうであろうとも、最後は希望を感じるように終わる・・・・・その方が、聴き手にいろんなことを考えさせることができる。そう作曲者が考えたのではないかと思います。

この後、私はもう一枚999でCDを買うのですが、それはまた別の機会、このコーナーでお話しします。


聴いているCD
青木望作曲
組曲 銀河鉄道999
伊集加代子スキャット
杉並児童合唱団
中谷勝昭指揮
コロンビア・シンフォニック・オーケストラ
(コロンビア 32C35-7589)