今日は水曜日。神奈川県立図書館の所蔵CDをご紹介するコーナーです。今回はハイドンの交響曲のうち、「ロンドン交響曲」と言われているものを取上げます。
ロンドン交響曲とは、いわゆる「ザロモン・セット」のことで、エステルハージ侯亡き後、ザロモンの招きでハイドンはロンドンへと渡りますが、そこで作曲された93番から104番までの作品のことをさします。
詳しくは、以下のサイトを参照してください。
ハイドン交響曲一覧と関連情報−ザロモン・セット
http://www.kanzaki.com/music/mw/sym/haydn#t5
今回ご紹介するCDは、そのうち最後の二つ、第103番「太鼓連打」と第104番「ロンドン」です。シギスヴァルト・クイケン指揮、ラ・プティット・バンドです。つまりは、古楽演奏ということになります。
最近のハイドンの演奏はほとんど古楽になってしまいました。それはそれで私はモーツァルト以上に似合うと思っていますので歓迎ですが、ただ、もう一度モダンでも挑戦するオーケストラがあるといいなあと思います。全曲を収録してあるのはモダンですが、現在ではモダンの演奏の方が少数派になっています。
もう少し、モダンでの演奏を見直してもいいのでは?と思います。少なくとも、古楽だからといって当時の演奏を完全に再現できるわけではありません。ただ、雰囲気的には一番近いということでしかありません。
ですので、ここはモダンのオーケストラに一段と奮起していただきたいものです。
第103番「太鼓連打」は、1795年に作曲されました。「太鼓連打」というのは勿論通称で、これは第1楽章冒頭でティンパニが連打されることから名づけられました。この連打は主題の一つになっており、ソナタ形式の中で再現部でも連打が繰り返されます。
その連打から繰り広げられる音楽は、以前ご紹介した89番と比べますと俄然高貴で、深さがあります。これほどまでに違うのかと思わされます。第2楽章の短調も決して軽薄ではなく、重々しさがあります。ただ、その印象がハイドンは強いせいか、他の作曲家に比べますと初心者には敬遠される傾向にあります。逆に、ベテランからは今度は軽薄と言われてしまう、非常に肩身の狭い思いをされているであろう作曲家であるなあと思います。
ハイドンの後半、特に80番台から104番にかけては、ハイドンの特色が全て出ている作品ではないかと私などは考えています。決しておちゃらけではい、まじめな反面、肩肘張らない作品群が並んでいると思います。この103番もそんな作品のうちの一つだと思います。
104番「ロンドン」もそんな作風で、軽薄とはいえない感じがします。恐らく、それはこの時期の作品がロンドンで演奏されているということと、無関係ではないのではないかという気が私はしています。
この演奏は古楽ですから、当然音自体がすこし軽めに聞こえるはずなのです。それが全くないのです。
エステルハージ侯時代は、エステルハージ家に関わる人たちのためだけに音楽を作っていたわけで、当然依頼主の好みに左右されたはずですし、実際そういう作品は数多くあります。しかしながら、このザロモン・セットの時代になると、聴衆がお金を払って聴きに来ます。上記のサイトによれば、それがハイドンの作曲に大きな影響を与えたようです。
つまり、個人の庇護の下から、自立を求められる時代へと入ってゆく。そういう過渡期へと時代は変化している、その只中にハイドンはいたような感じをこの2曲から感じるのです。
そんな曲自体がもつもともとの特徴が、この演奏でも如実に表れている、そんな気がします。それだけに、もう少しモダンでも演奏があってもいいなあと、私は思うのです。
この後、私はできれば古楽でハイドンの交響曲は全曲そろえたいと考えますが、その期待は甘かったですね^^;図書館でもさすがに古楽だけで全曲そろえるのは難しかったのです。その後、私はモダンで全曲そろえることになりますが、それはまた別の機会にお話ししましょう。
聴いている音源
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
交響曲第103番変ホ長調Hob.�T-103「太鼓連打」
交響曲第104番ニ長調Hob.�T-104「ロンドン」
シギスヴァルト・クイケン指揮
ラ・プティット・バンド
(harmonia mundi BVCD1520)