かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト ハイドン・セット�@

毎週水曜日と木曜日が神奈川県立図書館の所蔵CDをご紹介するコーナーになりました。その木曜日の今日ご紹介するのは、モーツァルト弦楽四重奏曲の中の「ハイドン・セット」です。

このハイドン・セット、ベートーヴェンの弦四よりも先に借りています。実は、当時私はベートーヴェンの弦四はあくまでもスメタナ四重奏団で集めるつもりでいましたから、それ以外を図書館で借りたいと思っていました。そこで、前から気になっていたモーツァルト弦楽四重奏曲を借りてみたいと思い立ったのです。

ちょうど行ったときに棚に並んでいたのが、このCDで、演奏はハーゲン弦楽四重奏団。このフレッシュなカルテットの演奏がまたすばらしい!息のあったアンサンブルと、温かい音色。それでいて、緊張感も適度にあります。

今回から3回に分けてご紹介します。というのも、このCDは3枚組みなのです。ヴォリュームがちょっとあるので、分けて述べたいと思います。

まず今回ご紹介するのは一枚目、第14番と第15番です。モーツァルトというとどうしても映画「アマデウス」のイメージがあって、ハイドン同様軽薄というイメージが固定されてしまっていますが、この演奏を聴きますとそれはかなり誇張されていると言わざるを得ません。

第14番はとても温かい曲で、しかも高貴さすら感じられます。ベートーヴェンの6番までとそれほど音色が変わらず、サロンで楽しむという様子が伝わってきます。当時もすばらしいと思いましたが、アルバン・ベルクの演奏を聴いた今では、それに引けを取らない緊張感とアインザッツのすばらしさがこの演奏からも聞き取ることができます。それが、この曲をして、モーツァルトは決して軽薄ではないと主張しているかのようです。

第15番は一転、ニ短調と第九でも使われている調性になります。そのせいか、最初から最後まで暗く、また緊張感を感じます。ベートーヴェンもそうですが、もしかするとモーツァルトもこの曲にかなり感情が入ったのかもしれません。彼が短調を書くというときにはたぶんに彼の感情が入ってきますから。モーツァルト事典を読んでいる限りにおいては、この曲はすこぶる不評だったようです。むしろ、第14番のほうが好評だったようです。

確かに、15番の暗さは一種不気味でさえあります。ただ、そこには確かに高貴さも存在し、それをハーゲンの演奏は十二分に引き出しているように思います。

この2曲は「ハイドン・セット」といわれるだけあって、あのハイドンに献呈されていて、その上ハイドンの影響を強く受けている作品でもありますが、実際にハイドンの弦四と比べて見ますと、紛れもなくモーツァルトの音楽です。むしろ、ベートーヴェンと音楽的には近いように思います。実際、このハイドンセットのうち一曲はベートーヴェンの弦四にも影響を与えたと言われており、私はそれをカップリングして携帯へいれてあります。結構それが面白いのですが、それはまた別の機会にお話ししましょう。

このCDは聴き所満載だと思いますが、特に第15番がお勧めです。ハーゲンの緊張感ある演奏が、モーツァルトの本当の一面を表現しているように、私には思えます。


聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
弦楽四重奏曲第14番ト長調K.387
弦楽四重奏曲第15番ニ短調K.421
ハーゲン弦楽四重奏団
(元CD:Deutsche Grammophon UCCG-1072/1074)