今日は「神奈川県立図書館所蔵CD」のコーナーです。今回はチャイコフスキーの交響曲第1番と第2番。イゴール・マルケヴィッチ指揮、ロンドン交響楽団です。
このCDはかなり古い録音で、1番が1966年、2番が1965年と、ほぼ昭和40年前後になります。私は昔はこんな古い録音を聴くほうではなかったのですが、同時鑑賞会ですっかり古い録音にも抵抗がなくなりました。
ですので、新しい録音も棚にはあったのですが、この比較的古い録音を選びました。理由は単純で、第1番と第2番と連続で聴くことができるのがそのときこれだけだったからです。実は、これを借りればチャイコフスキーツィクルスが完成するという段階だったのです。
当時は、図書館を使い出してまだ間もないころで、OPACで調べることもせずに行き当たりばったりで借りていました。ただ、それも楽しいのです。CD店でCDを買うときのような、どきどき感がたまりません。
で、聴いてみて、損はなかったとほっとしたのを覚えています。つくづく、録音はステレオであれば新しい古いはまったく関係ないなあと思います。
テンポのよさ、ロンドン響のアンサンブルのよさ、どれを取ってみても卒がないのです。また、楽章によっては、熱いものさえこみ上げてきます。
第1番から、チャイコフスキーのあまく切ない音楽と、ロシア的な重厚さが同居した音楽が鳴り響きます。「冬の日の幻想」という標題がついていますが、まったくその通りの音楽に酔いしれてしまいます。
第2番は、「小ロシア」という標題どおり、第1番よりはより国民楽派的な音楽になります。チャイコフスキーはあまりロシア的ではないとさえ言われますが、決してそんなことはないという証明であるように思います。
このときから、私は図書館ではドイツ物にこだわらず借りようと思っていました。それを実践したことになります。勿論、ハイドンを借りたいとも思っていましたが・・・・・
しかし、このCDで私は確かにチャイコフスキーの初期の作品に触れることになりました。そこには、後期と違うようで、しかししっかりとつながってゆく音楽があります。特に、それぞれの第2楽章はそれ以後の交響曲へとつながってゆく基礎になっていると思います。チャイコフスキー独特のメランコリックな音楽を使い、その後第3楽章のスケルツォは比較的速いテンポの音楽と対比させるといった部分がそれにあたります。
この2曲はチャイコフスキーの若き日の熱を感じ取れるように、私は思いました。爽快な音楽と、緊張感。初期の作品もこんなに魅力的だったかと思います。
有名な作曲家はたいてい交響曲が全曲そろっている県立図書館。これこそ、図書館としての使命を果たしているようなCDだと思います。
聴いている音源
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
交響曲第1番ト短調作品13「冬の日の幻想」
交響曲第2番ハ短調作品17「小ロシア」
イゴール・マルケヴィッチ指揮
ロンドン交響楽団
(元CD:PHILIPS UCCP3397)