かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今日の一枚:メンデルスゾーン 交響曲第4番「イタリア」・シューベルト 交響曲第9番「ザ・グレイト」

さて、「今日の一枚」、今回は今月私が買ってきたCDの2枚目です。メンデルスゾーンの「イタリア」と、シューベルトの「ザ・グレイト」です。指揮はテンシュテット、オケはベルリン・フィルです。

私はこの組み合わせには一つの信頼を置いていまして、特にそれはワーグナーを聴いたときに決定的になりました。まあ、その組み合わせばかり買っているわけではありませんが、テンシュテットだと食指は動きますね。

はじめ、私はこのCDをそれほど積極的に買うつもりはありませんでした。しかし、先日モノラルでカラヤンのすばらしい「ザ・グレイト」を聴いてから、ステレオでも欲しかったのは事実で、そのことが心を動かしました。実際、値段も安かったですし(1000円!)

まず、メンデルスゾーン交響曲第4番「イタリア」ですが、実は私はメンデルゾーンの曲のCDを買うのはこれで2つ目というオクテなのです。合唱団でレファレンス担当だったこともあり、なかなかこういう名曲まで手が回らなかったということが主な理由です。前から聴きたかったのですが、やっとその願望がかなったといえるでしょう。

第1楽章はN響アワーのテーマ曲にも使われたことがあるくらい有名な楽章です。生き生きとして、かつ明るい旋律は心を楽しくさせます。それでいてメロディは情緒的かつ理性的。リズムとのバランスもよく、とても心地いいですが、それをごく普通に演奏してしまうあたり、さすがです。音楽が普通に流れてゆきます。うーん、気持いい・・・・・

第2楽章は典型的な緩徐楽章になっています。それがまた牧歌的でとてもいいです。それをまた流れるように演奏するあたりがすばらしいです。え、ベルリン・フィルなら当たり前だって?いやいや、それがどうしてそうとも限らないのです。例えば、アッバードが振りますとね・・・・・これがまた全然違うのです。

第2楽章をそのまま引き継ぐかのように第3楽章がそっと始まります。同じ緩徐楽章なのが驚きます。しかし、そのゆったりとした音楽がまた心地いいのです。テンシュテットは本当にごく普通に音楽を鳴らすんですよね。そこが一見するとつまらなく見えるのですが、実は聴けば聴くほど味が出る指揮者なんですね。飽きが来ないのです。一応スケルツォですが、ゆったり過ぎてボーっとしているとそれが当たり前に過ぎてゆきます。それがなんとも心地いいですね。

しかし、第4楽章は一転して激しい音楽。しかし、モーツァルトの再来と言われたメンデルスゾーンらしくバランスがいい構造を、これも丹精に演奏しています。それでいて速いテンポをごく当たり前に演奏してしまうベルリン・フィルのもともとの能力の高さと、それをきちんと引き出すテンシュテットカラヤンではなくてもすごいオケであるということを如実に語る演奏です。そう、テンシュテットという人は自分が前に出ないのです。オケの力を前面に出す演奏をします。その能力がすばらしいのです。

少なくとも、この曲はそのテンシュテットの意向がばっちりはまっているように思います。

シューベルトの「ザ・グレイト」は、どうしてもカラヤンのすばらしいモノラルの演奏が頭によみがえってきて、比較をしてしまいます。それだけ、テンシュテットの指揮は本当に特徴がないのです。しかしながら、それは何度も聴いてゆくうちに変わってきます。それがテンシュテットのすばらしいところで、いわゆる「かめばかむほど味が出る」という演奏です。金管の鳴らし方はとても神々しく、シューベルトにしては珍しくかっちりとした交響曲を、きちんと提示しています。

私はロマン派の交響曲をどっぷり聴くというのは実はあまりないのですが、今回はブログを書くまでに既に2回聴いてしまっています。勿論、どちらも名曲であるわけですが、それをきちんと演奏しているがゆえに、聴けば聴くほど二つともいつまでも聴いていたいという気にさせるのです。時間の制約があるのでいつまでも聴いているわけには行かないのは確かですが、そんなのかんけーねえ!と言いたくなるほどです。実はそこがテンシュテットマジック。一度聴いたら病み付きになります。何度でも聴きたくなります。

第1楽章はまずゆっくりとした音楽で始まりますが、それは序章に過ぎません。主題提示部では激しい音楽に変わります。それ以降はソナタ形式で展開してゆきますので、激しく、かつ高貴な音楽が続きます。ベルリン・フィルのすばらしい演奏に、何をあとスパイスをつけようというのか、とテンシュテットが述べているかのようです。確かに、この名曲に付け足すものはないでしょう。

第2楽章は緩徐楽章になりますが、これも端正な演奏です。緩徐楽章なのに、襟を正した緊張感がみなぎります。ブルックナーのような感じすら一見感じるくらいの金管はすばらしいです。本当に神々しい・・・・・それでいて、すがすがしさもあります。そして弦の激しさ。この曲のいろんな面を教えてくれます。まるで興福寺の阿修羅像のようです。

第3楽章はスケルツォです。このスケルツォも激しい音楽で緊張感がみなぎり、また端正な音楽が全体を支配します。それでいてここではシューベルトらしいメロディアスな旋律もあって、心地いいです。それをさらりとやってのけてしまうのですね、テンシュテットベルリン・フィルは。もうたまりません。トリオの部分のゆったりとした音楽も、のんびりとした中に緊張感もあり、美しいです。

プロ中のプロと言われるベルリン・フィルを、ここまで統率するテンシュテットは本当にすばらしいですね。地味かもしれませんが、堅実な音楽はどんどん胸に迫ってきます。こういう演奏を聴きますと私は幸せな気分になります。

第4楽章はとても明るく堂々たる音楽が支配します。まるでファンファーレです。速いテンポがいっそうその祝祭感を醸し出しています。中間部ではメロディアスになり、主題再現部ではふたたび祝祭感あふれる音楽へ戻り、フィナーレを迎えます。その間の徹頭徹尾の緊張感。それを統率するテンシュテット。手綱は片時も緩むことはありません。うなってしまいます。

全体的にこのコンビのよさが前面に出ている演奏で、私自身は名演と述べたいと思います。かめばかむほど味が本当に出ますから。


聴いているCD
フェリックス・メンデルスゾーン作曲
交響曲第4番イ長調作品90「イタリア」
フランツ・シューベルト作曲
交響曲第9番ハ長調D.944「ザ・グレイト」
クラウス・テンシュテット指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(EMI 5 09022 2)