さて、今日は今度はまたほかのマイミクさんから「買った」CDをご紹介します。ブルックナーのミサ曲第3番です。指揮はサー・コリン・デイヴィス、オケはバイエルン放送交響楽団、合唱団はバイエルン放送合唱団です。ドイツでは良くある組み合わせですね。
実は、この曲は既に私は朝比奈/大フィルで持っています。ですので、わざわざこのCDを買った動機は、やはり本場がどう演奏しているかが知りたかった、というものです。
全体的には、デイヴィスの地味ながら端正な音楽を聴かせる姿勢が貫かれています。特に、このミサ曲第3番では、静かな部分がかなりあるので、その部分をどう聴かせるかが非常に重要で、デイヴィスは奇をてらわず正攻法で攻めています。もともとデイヴィスは宗教曲はかなり得意で、ベートーヴェンやブラームスで名盤を残しています。ですので、悪かろう筈がありません。
しかし、私はそれは当然と思いながら、やはり朝比奈さんと比べてしまうと、合唱団がなあと考えてしまうのです。
勿論、バイエルン放送合唱団はすばらしいです。キリエの静謐さ、グローリアの堂々たる神々しさ、それに続くクレドのドラマティックな展開、正確さを要求されるサンクトゥスとベネディクトゥス、そして合唱団にとっては緊張を強いられるはずの静かなアニュス・デイ。どれをとってもすばらしいです。それを支えるオケのバイエルン放送響も文句のつけようがありません。
しかし、合唱団は朝比奈さんのも負けずすばらしいのです。しかも、それは日本人のアマチュア合唱団(T.C.F合唱団)なのです・・・・・
それを考えますと、もう少しプロらしいものが欲しかった、という気がしないわけでもないのです。
デイヴィスのこの演奏が朝比奈さんよりも勝っているとすれば、間違いなくオケだと思います。大フィルには申しわけありませんが・・・・・それほど、合唱団は甲乙つけがたいですね。
つまり、この演奏は図らずも、朝比奈さんの演奏のレヴェルの高さを認識させてくれるものだったのです。唯一バイエルンが勝っている点、それは「やわらかさ」でしょう。ただ、それはとても微妙なあたりで、それだけで朝比奈さんのほうを下に見ることは私にはできません。なぜならば、やはり私は「歌うたい」だからです。どんなに苦労して歌っているかが、実際に歌っていなくても手に取るようにわかってしまうからです。
ホールはどちらもとてもよく響くホールですし、私はむしろ東京カテドラルという、独特の響きを出すホールで本場並みの演奏をたたき出した朝比奈さんの統率力と、T.C.F合唱団の実力を高く評価したいです。バイエルンだったら、勿論この曲は決して簡単な曲ではありませんが、それでもプロであるならば当たり前にたたき出すであろうと思います。それほど、本場はレヴェルが高いのですから。
ですから、私はあえてこの演奏には辛口でいたいと思います。しかし、だからといって平凡な演奏ではありません。特に、グローリアの神々しくかつ緊張感のある、しかしやわらかい合唱はとてもすばらしいです。これぞ本場というものを見せてくれます。
しかし、それでも、私はあえて「聴くなら朝比奈さんの東京カテドラル盤」と言っておきます。それほど朝比奈さんの演奏がすばらしいことを、デイヴィスが教えてくれたように思います。
聴いているCD
アントン・ブルックナー作曲
ミサ曲第3番へ短調
カリータ・マッティラ(ソプラノ)
マルヤーナ・リポフシェク(アルト)
トマス・モーザー(テノール)
クルト・モル(バス)
バイエルン放送合唱団
サー・コリン・デイヴィス指揮
バイエルン放送交響楽団
(PHILIPS PHCP-9236)