今日はピアノソナタ第16番です。番号的には折り返し点に来ましたね!
さて、この曲は楽しいリズムから始まり、美しくはつらつとした音楽が鳴り響きます。第1楽章の「タン、タララララン、タンタンタン♪」という音形が私たちを引き込みます。
この曲は作品31の3部作のうち、最初の曲にあたり、ウィキペディアでは「一番影が薄い」などと書かれてしまっていますが、そんなことはありません。確かに、31-2である第17番「テンペスト」の最終楽章に比べれば、平明ですが・・・・・
実は、この作品群の成立時期は「ハイリゲンシュタットの遺書」が書かれた時期にあたります。その割には、この曲はとても美しく、かつ清潔感にあふれています。青年ベートーヴェンがそこにいます。
まず、この作品では耳が聞こえなくなるといういわゆる「障害」を自分で認識する前の、まだ希望に燃えるベートーヴェンの姿なのではないかという気がします。作風はこれまでの曲に近いものの、一方で既に充分自己主張が感じ取れます。
そう考えますと、この3部作の最初を飾る曲としてとてもふさわしいように私は思います。弦四はまだ第6番が書かれて時間が経っていてラズモフスキーまで行っていませんが、交響曲は第2番が成立する直前と、ピアニストとしてだけでなく、交響曲作曲家としても売り出し中の時期にあたります。その後、自分の身に降りかかる運命を感じることになります。
それを知って聴いてしまいますと、この曲の最終楽章などは切なく感じてしまいます。転調部分は泣けてきます。それでも、長調部分は明るく希望に満ち、生きる勇気を与えてくれます。特に運命のような激しさはないのですが、そこが管弦楽にはないすばらしさだと思います。
こういうピアノ曲を指南してくださった方々に、感謝!