かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

ベートーヴェン ピアノソナタ第15番ニ長調作品28「田園」

今日はピアノソナタ第15番「田園」を取上げます。え、田園は交響曲じゃないの?だって、ベートーヴェンでしょ?というア・ナ・タ。いえいえ、これはピアノソナタです。

もちろん、いいたいことはわかります。私も最初同じように思いましたから。そういえばこの書き出しは、悲愴の時もそうだったように思います。あの時は作曲家が違いましたけど、今回は同じ作曲家ですからね・・・・・無理もないかと。

しかし、この曲は交響曲ではなく、ピアノソナタです。前回の月光は三楽章でしたが、今回は四楽章です。だからといって月光が前時代的かといえばそれは違います。第1楽章に緩徐楽章を配置するという変わった構成です。この15番では第1楽章はソナタ形式に戻りますが、しかしその構成的には交響曲のような一面も持ちます。

まず、第1楽章のリズムが8分の6拍子。これは難しいリズムなんですよー。私も合唱団時代、第九の二重フーガがこの拍子で、下手すると2分の2拍子になるんです。それだとマーチですよね(ToT)それほど、この拍子は難しいんです。

ですから、この楽章が全体の全てを握る、といっても言い過ぎではないでしょう。

曲想は月光から一転、明るいです。まるで、全体的に美しいものへの憧れのような感じです。何度聴いても気持ちがいいです。各楽章全てそうなのですが、特に第1楽章はその傾向が強く、なんか桜の木の下にいるような気すらします。左手でリズムを刻み、それに乗る右手のゆっくりとしたメロディ。

ああ、癒される・・・・・

実は、このタイトルはベートーヴェンがつけていません。出版時に出版社が勝手につけたものです。しかし、それが本当にベートーヴェンがつけたかのごとく田園風に聴こえるのです。そのために「田園」とつけられたのだろうといわれていますが、私も同感です。

月光の激しさもいいのですが、この田園ののどかで、憧れるかんじもすばらしいです。ベートーヴェンの路線がこのあたりからはっきりと感じることができるようになりますので、それがまた楽しみでもあります。

でも、この曲はまだはっきりとクラシックの枠内で書かれているようにも感じます。後期にはあれ?って曲が出てきますから・・・・・

この時期には、ベートーヴェンの主要なジャンルで第1番が出揃います。弦四、交響曲、ピアノ協奏曲に第1番がすでに出ていて、ベートーヴェンの前途が洋々と開けてくる時期です。そのせいか、ここまでは比較的明るい曲が多いのも特徴です。

しかし、その後彼に押し寄せる悲劇はよく知られているものです。ちょうど、この曲あたりは弦楽四重奏で初期の作品から中期へと飛ぶ、そのさなかの作品になります。そう、ハイリゲンシュタットの遺書へと続く道です。そういう意味でも、重要な作品であると思います。