かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:日本古代歌謡の世界1

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介します。今回から4回にわたりまして、日本古代歌謡の世界というアルバムをご紹介します。

日本の古代歌謡と言われてもピンとこない人のほうが圧倒的に多いかと思います。そもそも、我が国の歴史において、音楽がはっきりと出てくるのは国家の体をなしたあたり、ちょうど奈良時代あたりからです。しかもその中心は宮中でした。

つまり、朝廷内なんですね。主に天皇の儀式の中で演奏される雅楽がその中心を担っていました。ですのでこのアルバムもその中心は雅楽ということになります。

このアルバムを借りてきたのはもうずいぶん前なんですが、取り上げるのがちょうどこの2019年秋となったのは奇遇だと思います。今年は天皇の代替わりで元号が替わった年でもあります。そんな時には特別展などが開かれるのが常ですが、今年は正倉院展が東京にやってきます。東京国立博物館の「正倉院の世界展」がそれです。

まだ行っていないので、どんな展示内容なのを詳しく語ることは難しいのですが、例えば本場奈良国立博物館の「正倉院展」では、復元楽器による演奏が館内でBGM代わりに流れていたりします。まさにそれは雅楽であるわけなんです。

ちょうどこのアルバムの第1集は、そういった宮中で使用される、主に舞曲を中心に収録されています。これを「御神楽」と言います。

www2.ntj.jac.go.jp

それに声楽が付いているんです。特にこの第1集では、本役(神迎え)の御神楽が中心に収録されており、特に圧巻なのが「早(はや)韓神)」。ゆっくりとした音楽で始まりますがそのテンポは一切変わらず。しかし最後へ向かって徐々にクレシェンドしていき、最後を迎えます。この作品を作曲した人は相当独創性豊かな人だったのではないでしょうか。楽器は4つしかない中で声楽を上手に使って喜びを表現するのはクラシックの作品でもなかなかお目にかかれることはありませんし、そういった演奏をする演奏家にもなかなかお目にかかれません。

演奏するのは東京楽所。宮内庁式部職楽部のOBたちで設立された団体で、仕事としての音楽ではなく、自立した音楽家として雅楽の演奏に携わるプロフェッショナル達です。

amati-tokyo.com

ですので聴いていますと、神に捧げる音楽であり通常は一部の人しか聴けない作品たちを、人間が神へ捧げる音楽として、血の通ったものにしているのが素晴らしい!その典型例が上で取り上げた「早韓神」なのです。これは舞曲であり歌でもあるのですが、その神を迎える人間の喜びの表現の見事なこと!なかなかお目にかかれない演奏です。これが日本人の得意とする表現なのだとすれば、クラシック音楽における表現もおのずともっと違ったアプローチがあってもいいのかもしれないと思います。

 


聴いている音源
①縒合(よりあい:神楽歌)
②阿知女作法(あじめのさほう:神楽歌)
③問籍音取(もんじゃくのねとり:神楽歌)
④榊(さかき:神楽歌)
⑤閑韓神(しずからかみ:神楽歌)
⑥早韓神(はやからかみ:神楽歌)
⑦於介阿知女(おけあじめ:神楽歌)~於介(おけ:神楽歌)
⑧小前張阿知女(こさいばりのあじめ:神楽歌)
⑨篠波(さざなみ:神楽歌)
東京楽所

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。