かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲全集1

今週は火曜日にお休みしたので、金曜日にもエントリ立てます。

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回からはヴォーン・ウィリアムズ交響曲全集を取り上げます。音源は名盤として有名な、プレヴィン指揮ロンドン交響楽団他のものです。

ヴォーン・ウィリアムズに関しては以前ニールセンの交響曲を取り上げた時に触れていますが、作品そのものを取り上げるのは初めてかと思います。

ヴォーン・ウィリアムズは20世紀イギリスの作曲家です。20世紀イギリスは二人のシンフォニストを生んでいます。一人が以前取り上げたアーノルド、そしてもう一人がむしろこちらの方が有名なのですが、ヴォーン・ウィリアムズです。

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%82%BA

知名度としてはたしかにウィキにある通り日本ではホルストよりは低いかもしれません。ただ、最近じわじわと人気が出てきている作曲家だと言えるでしょう。

さて、そのヴォーン・ウィリアムズなのですが、その交響曲は初めから番号が振られていたわけではなく、後から複数になった時に便宜上付けたというものです。この全集は取りあえず番号順になっていますが、この第1集に収録されている第1番は、通称ではなく正式名称で「海の交響曲」と呼ばれます。

海の交響曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E3%81%AE%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2

ですので、カッコ書きで「第1番」とするのが正式です。

一見すると古風な交響曲のように見えますが、良く聴きますとこの作品はオラトリオと言ってもいい構成です。4楽章形式でありスケルツォもあるので交響曲とされているようです。音楽からは全く想像できませんが、交響曲の第1作から合唱と声楽を入れているという事からしますと、ベートーヴェンの第九も念頭にあったものと考えていいでしょう。

音楽史の様々な要素を背景として持っている作品だと言えますが、内容と言えばまさしく海を題材にしており、ホイットマンの詩をとにかく音楽と声楽で愚直に表現したものです。それから、どんな印象をもたれることでしょう?

歌詞が挙げらているブログが存在しますので、ご紹介しておきましょう。

「RVWの”海の交響曲”より第1楽章」ホイットマン「草の葉」よりの編
http://d.hatena.ne.jp/fismajar/20060508/1147096353

「RVWの”海の交響曲”より第2楽章」ホイットマン「草の葉」よりの編
http://d.hatena.ne.jp/fismajar/20051225/p3

「RVWの”海の交響曲”より第3楽章」ホイットマン「草の葉」よりの編
http://d.hatena.ne.jp/fismajar/20060806/1154880363

「RVWの”海の交響曲”より第4楽章」ホイットマン「草の葉」よりの編
http://d.hatena.ne.jp/fismajar/searchdiary?word=%2a%5b%c2%d0%cf%c2%cc%f5%a1%c9%b3%a4%a4%ce%b8%f2%b6%c1%b6%ca%a1%c9%5d/

ブログ主さんはイギリスが海洋国家であるということをうたいあげたとありますが、その指摘はいい線ついているのではと思います。愛国心というよりは、海が国家をつないでいるという歌詞はコスモポリタン的ですし、開かれた国という印象を持ちます。そこに誇りを感じていることが、歌詞からよく分かりますし、それについているヴォーン・ウィリアムズの音楽も壮大で喜びに満ちているものが多く、歌詞が持つ「誇り」を十二分に表現していると言えます。

だからこそなのでしょう、オラトリオ形式を採用したのは。無論、全体的に見れば交響曲なのですが、かといってソナタ形式があるかと言えば必ずしもそうではないわけで、むしろ交響曲の形を借りたオラトリオと言っていいでしょう。まさしく「開かれた国」という点に誇りを感じるというその点を表現するために、選んだのがオラトリオだったとすれば、この不思議な形式はむしろ納得するわけです。

そして、この作品はウィキで触れられている「知的な上位中産の特権階級に生まれながらもヴォーン・ウィリアムズはそれに甘んじることなく、生涯を通して自らの信念であった民主、平等主義の理想のために活動した。」という点を善く表していると言えるでしょう。第1楽章のこの歌詞に注目してください。

「年老いたあるいは若き船長たち、航海士たち

         恐れを知らぬすべての船乗りたちについて

運命にも動ぜず 死を恐れず 数少ない選り抜きの寡黙を護る者ども

老いた大海原よ、お前が密やかにそっと拾い上げ 選んだ者たちについて

首尾よくこの種族を拾い上げ 選び出し 国々を結びつける海よ

年老いた嗄れ声の乳母のお前に育まれて お前の姿を見とおし

お前のように不羈奔放なものについて」

特定の英雄をうたいあげたのではなく、むしろ地道に輸送という作業にかかわる人たちにスポットを当てた作品だと言えるのです。現在でも決して高く評価されることはなく、むしろ海であれば海軍や日本であれば自衛隊や海保のほうが高く評価されますが、そもそも、こういったロジスティクスの人が居なければ、私達の生活に必要なものが届くことはありません。そのことに対する感謝の念が、この作品には詰まっているのです。

プレヴィンとロンドン響そして合唱団は、ことさらに強調するような演奏ではないんですが、しかし、作品自体が持つ情熱にいい意味で引っ張られているため、ロジスティクスや海という存在への感謝や畏れというものが伝わってきます。アングロ・サクソンとしては珍しい謙虚さだと思いますが、それはイギリスという国故なのかもしれません。資源のない国が生き残るために取ってきた歴史・・・・・それを反映しているとも言えるかもしれません。指揮者もオケも、そして合唱団もそれを肌身で知っているからこそ、とても柔らかさがある中でクレッシェンドしていくときには力強いという、まさしく「情熱と冷静の間」のバランスが取れている名演になっているのだと思います。

こういった作品に対する共感が、我が国で広がればいいのになあと思うのですが、ネットでいろいろ調べますと、あまりそうでもない様子です。ちょっとがっかり・・・・・

オケもあまり取り上げないという事もあるのでしょうね。ショスタコと並んでもっと取り上げていい作曲家だと思いますし、そして同じ海洋国家である日本人だからこそ、共感する部分はたくさんあるのではないかと思います。




聴いている音源
レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ作曲
海の交響曲交響曲第1番)
ヒーザー・ハーパー(ソプラノ)
ジョン・シェリイ・カーク(バリトン
アンドレ・プレヴィン指揮
ロンドン交響楽団・合唱団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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