今回は、マイミクさんから買いましたCDのご紹介です。今日は、ロッシーニの「小荘厳ミサ」曲です。
実は、この曲は私がまだアマチュア合唱団に入っていたときに教えてもらった曲なのですが、なかなか聴く機会がなかった曲です。何度も定期演奏会の候補に上がった曲です。その理由は、演奏編成にあります。
この曲はオーケストラによる演奏ではありません。ハルモニウム(学校にあるようなオルガンのこと)一つとピアノ二つだけです。しかし、それがとても深い音楽になっています。
その編成が、私にはとても懐かしく思えます。なんといっても貧乏アマチュア合唱団ではやはりレパートリーはピアノで演奏可能な曲に絞られます。私も、実際佐藤眞の「旅」とかをよく歌いました。日本の合唱曲はまず全てといっていいほどピアノ曲ですし、特に日本の合唱曲を歌っている人には、興味深い曲なのではないかと思います。
全体的にはグローリアまではドラマティックな部分がありますが、クレド以降はそれほどドラマティックではありません。むしろ静謐さが目立つ曲です。
また、通常のミサ・ソレムニスにはない曲が入っており、少なくとも教会を意識した曲ではありません。実は、ロッシーニはミサ曲を教会から外へ出した人として音楽史上では有名な人です。どうしても、私たちはオペラを考えてしまいますが、しかし彼の宗教曲は特に日本のアマチュア合唱団界や欧米の合唱団ではポピュラーで、むしろ親しみやすい宗教曲を書いた人物として知られています。
この演奏では2枚組みになっていて、親しみやすいとは申せ長い曲ですが、確かに音楽としては親しみやすい旋律です。しかし、クレドまで親しみやすいのには驚いてしまいます。やはり、モーツァルトのミサ曲の明るくかつドラマティックな旋律に慣れてしまいますと、びっくりしてしまいます。
もし、今でも合唱団に入っていて、この曲をやるというかどうかは、私は微妙です。ただ、静謐さからロッシーニが決していい加減な精神でこの曲を作曲したものではないことだけは伝わってきます。ただ、部分部分でどうしてもオペラ風な部分がありますので、そこを歌う団員がどうとらまえるのかが重要になるでしょう。オペラとして歌うのも間違いですし、単なる宗教曲としてあまりにもくそまじめに歌ってしまうのも、私はこの曲の魅力を殺してしまうのではないか、と思います。
こういう曲をきちんと録音して取上げる欧米の合唱団は、さすがだなあと思うのです。自分たちの伝統はそれがたとえ平易なもので一見くだらないように見えるものであっても、魅力をきちんと見据えてまじめに取り組むことで守る姿勢に、脱帽です。
聴いているCD
ジョアキーノ・ロッシーニ作曲
小ミサ・ソレムニス
ルチア・ポップ(ソプラノ)
ブリジッテ・ファスベンダー(メゾ・ソプラノ)
ニコライ・ゲッダ(テノール)
ディミトーリ・カフラコス(バス)
ケンブリッジ・キングスカレッジ聖歌隊
シュテファン・クローベリー指揮
カティナ&マリーレ・ラッベク(ピアノ)
デイヴィッド・ブリッジス(ハルモニウム)
(EMI CDS 7 47482 8)