かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第15番イ短調作品132

今日は、ベートーヴェンの弦四第15番です。この曲は実は第13番より前に作曲されていて、実際は後期の弦四2番目になる曲です。第12番、第13番と共に「ガリツィン・セット」とも呼ばれます。それは献呈されたのがニコライ・ガリツィン伯爵だったからです。

構成としてはほぼ4楽章形式と言って差し支えないと思います。実際は5楽章ありますが、第4楽章はとても短く、第5楽章と一体なので、私は4楽章と捉えていいと思っています。

ウィキペディアによりますと、ベートーヴェンはもともと4楽章形式で書くつもりでいたようです。しかし、第3楽章にリディア旋法を使うことになって5楽章としたようです。でも、わたしは事実上の4楽章にしたのではないかという気がします。

ただ、4楽章形式と言いましても、細部を見ますととても古典派とは思えない内容で、ソナタ形式は第1楽章だけです。スケルツォらしいスケルツォはないですし。

しかし、第1楽章の始まりは、とても同じ時期の弦四と同じとは感じられないほど、第15番目という感覚を受けます。不協和音のような始まりです。しかし、この曲と同時期の第九と比べてみますと、この第1楽章が不協和音になっているのもうなずけます。どうやら、この曲も第九で実験したものを展開しているような感じですね。ただ、フーガがありませんが。恐らく、それは第13番で使ったのだろうと思います。それが、大フーガだったのではというのはもう随分前にお話ししましたね。

第1楽章の始まりからしますと、どんなに暗い曲だろうと思ってしまいますが、それが一転同じ第一楽章で明るく転調し、その後は第3楽章まで明るさをもちます。その第3楽章はベートーヴェンが大病から快復したことを喜んだ曲ですが、第2楽章のすがすがしさといい、第3楽章の平和的な音楽といい、どんな苦しい時に聴いてもほっとします。ベートーヴェンがたどり着いた境地を垣間見るようです。

そして、第4楽章は私が好きな楽章です。行進曲風ですが、きびきびとしつつ、さわやかで、颯爽としています。とても短いのですが、しかし印象に残る楽章です。それが切れ目なしに転調し、メランコリックな第5楽章に入ってゆきます。

この第5楽章が、もともと第九に使われる予定だったと言うのですから、驚きです。ウィキペディアではこう述べられています。

ベートーヴェンのスケッチ帳には、イ短調のロンド主題に似た主題があり、これは当初は、《交響曲第9番》の、放棄された器楽による終楽章のつもりだったらしい。」

実際聴いてみますと、もしこれが交響曲だったらと思いますと、面白いと同時に、またすごい曲が生まれたろうなあという気がします。リズム的には、ご存知の方は田園の最終楽章や、7番の第1楽章を想像されるとわかりやすいのではと思います。

アルバン・ベルクだけでなく、この曲もスメタナで聴きたいですねー。でも、この曲を聴きますと、やっぱりアルバン・ベルク盤は名盤だなあと思います。これは、私はどんなにスメタナを勧めましても変わることはありません。名盤ですよ、本当に。

ただ、名盤必ずしも人の心を打たず、とも私は思っています。