かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

ベートーヴェン ピアノソナタ第27番ホ短調作品90

今日は、ピアノソナタ第27番です。いよいよ、中期の最後まで来ました。

この曲は短調ですが、決して激しくはなく、むしろ寂しさすら感じます。しかし一方、最後は明るいと、いろんな面が見え隠れする曲です。

その理由は、こんなところに求めることができるでしょう。

「この時期(1814年、筆者注)、ベートーヴェンは政治の問題に悩んでおり、長期的にスランプに陥っていた。この作品はそのような時代に書かれた数少ない名曲である。」(ウィキペディア

この時期とは、ちょうどナポレオンがロシアとの戦争に敗れ、反動ゆり戻しがヨーロッパを包み込んでいた時期です。愛国心が芽生える一方、自由と民主主義が弾圧される時代へと突入し、そのバランスをどう保つのか、市民は誰しも悩んでいた時期です。曲を聴きますと、そのベートーヴェンの悩みが聴こえてきそうです。

愛国心はここで頂点を極めます。その一端が、指定です。普通はイタリア語で表記されますが、この曲は指定がドイツ語です。

第1楽章:速く、そしていつも感情と表情をもって Mit Lebhaftigkeit und durchaus mit Empfindung und Ausdruck
第2楽章:第2楽章 速すぎないように、そして十分に歌うように Nicht zu geschwind und sehr singbar vorgetragen

この手の指定は、この後マーラーブルックナーへ受け継がれていきます。

気がつくと、この曲は二楽章形式ですね。しかし、そんな革新性など微塵もありません。特に最終楽章は音楽をのびのびと歌わせ、もう「革新性など遠い昔の話さ」などと言うかのようです。文字通り、指定どおりの音楽が展開されてゆきます。

この曲はベートーヴェンが試してきた「旧来の形式打破」という殻をさらに打ち破り、さまざまな形式を使いこなすという段階へ入ったように思います。

それは、この後後期の作品群に入ると、顕著になりますね。次回からはそんな点に注目したいと思います。