かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:バルトーク 弦楽四重奏曲全集2

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、バルトーク弦楽四重奏曲を取り上げていますが、今日はその第2集を取り上げます。

第2集には第3番と第4番が収録されています。第3番は1927年に発表された作品で、不安感というものからは解放され、民俗色に彩られた作品です。

弦楽四重奏曲第3番 (バルトーク)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%9B%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC3%E7%95%AA_(%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF)

4つに分かれる単一の楽章、そして必ずしもシェーンベルクの12音階ではないという点で、バルトークの方向性がはっきりと示された作品だと言えるでしょう。15分ほどで終ってしまう短い作品ですが、しかしコル・レーニョなどの奏法が聴き手に驚きを与え続けます。

短さと詰まった驚きが、聴き手に不思議な魅力を与える作品です。

次の第4番は、第3番の翌年である1928年に作曲された作品です。弦楽四重奏曲中屈指の難曲とされているほど、この作品も様々な技法が詰まっていますが、それも民族音楽収集の結果が反映されているためだと言えるでしょう。1年というタイムスパンで書き上げていることからも窺えます。

弦楽四重奏曲第4番 (バルトーク)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%9B%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC4%E7%95%AA_(%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF)

この作品も22分ほどなので短い作品ですが、シンメトリーというはバッハを彷彿とさせます。それもバルトークが何らかの形で新古典主義音楽の影響を受けているのではと想定されるところです。直接ではないにせよ、コダーイとの出会いなど、民謡収集という20世紀のブームは明らかに新古典主義音楽に影響を与えていると言ってもいいくらいです。特に、この二つの作品を書く前に勃発し終了した第1次世界大戦は、正に国民楽派の元となった思想が極大化してしまったが故の結果だったとも言えるからです。

第一次世界大戦の原因
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E6%AC%A1%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%A4%A7%E6%88%A6%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%9B%A0

その後、作曲家たちは愛国心をどのように発露するべきかに悩むことになります。愛国心が強い人であればあるほど、第1次世界大戦の結果は悲惨なものでした。愛国心故に起きた悲劇。しかし、愛国心そのものはそれほど悪いことではない、では、何がいけなかったのだろう・・・・・

その一つの原因として、過度な愛国心が持つ「酔い」に注目した作曲家は多かったのでした。そこで、ことさら宣伝するよりは、もっと地に足が付いたことをしようという運動が、新古典主義音楽であり、それは当時ブームであった民謡採集にも影響を受けたものでした。

バルトークが民謡収集やその研究ができることにこだわっていくのは、彼自身の愛国心故だと言えます。それはことさら酔うものではなく、もっと理性的なものです。バルトークハンガリー政府から距離をとっていくのも、酔いに巻き込まれたくないという判断が働いたからだと言えます。

第1次世界大戦後という時期に書かれたこの二つの作品はまさに、バルトークのその後のスタイルが確立したことを示すものなのです。特に第4番がシンメトリーであるというのは、バッハを彷彿とさせることで新古典主義音楽を想起させ、そこからさらに国家主義愛国心と境界線を引こうという、バルトークの意思が表明されていると言っていいでしょう。

演奏するアルバン・ベルク四重奏団は、アインザッツはたしかに強いのですが、ベートーヴェンの時ほどそれを感じないのです。かといって弱かったり、タッチが優しかったりというのはないんですが、それはこれら二つの作品が持つ野性味という点を反映しているからだと言えるでしょう。それはまた、民謡が作曲の基礎となっているということを、私達に教えてくれるのに役立っています。

この演奏に、ベートーヴェン旧エディションのような力強さと緊張感を求める人は、拍子抜けするかもしれません。ベートーヴェンのように高いレヴェルの作品を生み出そうとしているのですが、複雑な事情を内包しているからこそ、単純にアインザッツを強くすればいいというものではないわけで、アルバン・ベルクQはアインザッツは普通に強くしている程度で、あとは普通にしています。その普通さが、この作品が持つメッセージを如実に語っているのです。素晴らしい演奏でありましょう。




聴いている音源
バルトーク・ベラ作曲

弦楽四重奏曲第3番Sz.85
弦楽四重奏曲第4番Sz.91
アルバン・ベルク四重奏団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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