東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリを御紹介しています。今回はシェーンベルクの有名な「浄夜(浄められた夜)」を、カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニーの演奏で聴く者です。
有名な作品なのに、私にとってシェーンベルクはずっと遠ざけていた作曲家だったので、当然ですが不惑のこの年代まで、聴くことはありませんでした。恐らく、12音階が私にそうさせていたんだと思います。
ただ、調べてみると、最も有名なこの作品は、現在確立されているシェーンベルクの音楽像とは若干異なるんですね。
アルノルト・シェーンベルク
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF
浄められた夜
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%84%E3%82%81%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%9F%E5%A4%9C
むしろ、19世紀の世紀末の社会や文化の影響を色濃く受けている、むしろ後期ロマン派に限りなく近い作品だと言えます。その上で、デームトのそもそもの詩は当時問題作でした。と言うより、多分現代日本社会でもこの詩はとても問題作なのでは?と思います。
浄められた夜 日本語訳
https://ameblo.jp/chiharu-sudo/entry-11955125897.html
歌詞がなくてむしろ交響詩とも言える「音詩」の様式を取りますが、その内容はまさに罪の意識とその救済です。え、どこかで出てきたテーマだなって?そりゃあそうです、この時期のシェーンベルクは多分にワーグナーの影響を受けていますから。
性欲と愛を、さまざまな視点から表現した時代が、この19世紀末だったと思います。その一方の様式がドビュッシーですし、もう一方がシェーンベルクだったと言っても過言ではないのではないでしょうか。ドビュッシーはもう自分で責任を引き受けてエロ全開の上で、それを洒脱に表現していく。一方シェーンベルクは、罪と救済に焦点を当てて、奔放な性が行きついた先を表現したものです。
そのどちらが正しいのか?道徳的にはシェーンベルクかも知れません。しかし、もしかするとドビュッシーかもしれない・・・・・クラシック音楽を聴く醍醐味はここにあります。そのどちらが正しいのか、それとも正解はないのか?と常に自問自答しつづける。それがクラシック音楽の醍醐味だとすれば、シェーンベルクがなぜデームトを取り上げたのかが、判るような気がします。
そして演奏は、常にアンチと賛美で揺れるカラヤン指揮ベルリン・フィル。私は聴いて驚いたのは、ベルリン・フィルの硬質な音が、あまり見受けられない点なのです。でも、演奏はカラヤン絶頂期の1970年代前半なんです。むしろ豊潤で、官能的でもあります。罪悪感というよりはむしろ、どこか吹っ切れた部分すら音楽からは見受けられます。
カラヤンの演奏では、外形的だとか、表面的だとか言われますが、この演奏ではデームトの元の詩をかみしめたような、官能的かつ豊潤で、しかも罪の意識をどこかで感じつつも、でも自分の魂には嘘つけない、女性の赤裸々な感情が音だけでしっかりと表現されているのです。これは詩をしっかりと読んでいないと無理だと思いますし、そうじゃないとそれこそ外形的で表面的な演奏で終わってしまいかねないはずですが、それがないんです。
となると、元の弦楽六重奏曲を聴きたいと思うところです。
もう一つの「管弦楽のための変奏曲」もとても豊潤で、シェーンベルクの音楽には様々な顔があることが分かります。勿論それはシェーンベルクの人生と創作に置いて変化していき、やがては12音階へとたどり着くのですが、かつて合唱団時代の友人からは「シェーンベルクを12音階の作曲家だと考えると彼の宗教曲は聴けないよ」と言われた意味が、このアルバムですべてが分かるように思います。シェーンベルクは何かがすべてではないような気がしています。こういう演奏を叩きだすのはさすが、カラヤンだと思います。
聴いている音源
アルノルト・シェーンベルク作曲
浄夜 作品4(1943年弦楽合奏版、リヒャルト・デーメルの詩集「女と世界」より)
管弦楽のための変奏曲作品31
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
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