かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ストラヴィンスキー 交響曲ハ調、3楽章の交響曲

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はストラヴィンスキー交響曲ハ調、三楽章の交響曲を取り上げます。

この二つの交響曲が書かれたのは、1940年代、ちょうどストラヴィンスキーの「新古典主義時代」に相当します。つまり、ストラヴィンスキーの「交響曲」のほとんどは、新古典主義音楽で彩られているということになります。

交響曲第1番は、むしろ後期ロマン派と言っていい作品ですから、例えば今回の2作品とは別に考える必要がありますが、見た目には同じに見える部分もあるあります。そこがストラヴィンスキーの音楽をやや難解に見せている側面があるなあと思います。

1940年代と言えば、音楽史的にはヨーロッパでは新古典主義音楽は退潮した時期です。その代わり、世界中に拡散していく時代に相当します。そしてそれは、第二次世界大戦の時期とも一致します。

激動が世界を覆っていた時代において、音楽もまたさまざまに影響を受け、それはクラシック音楽も例外ではなかったわけですが、この二つの作品は新古典主義音楽と言うよりは、20世紀音楽と言っていい作品だと思います。

新古典主義音楽
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%8F%A4%E5%85%B8%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E9%9F%B3%E6%A5%BD

交響曲ハ調 (ストラヴィンスキー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E3%83%8F%E8%AA%BF_(%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC)

3楽章の交響曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/3%E6%A5%BD%E7%AB%A0%E3%81%AE%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2

そう、言わばこの二つの作品は、新古典主義音楽の絶頂期に書かれた作品だと言っていいと思います。元々、国民楽派へのアンチテーゼとして出発した新古典主義音楽は、単に自国の古典的な作曲家を引用するにとどまらず、正に「温故知新」という側面が強められ、その代表例がこの二つの作品だと言っていいでしょう。

3楽章の交響曲などは、そのまさに代表作品だと言えるでしょう。もともと協奏曲として着手されたことから3楽章になっていますが、それを交響曲にしたと言うことは、この時期に置いては明確なメッセージ、つまり「自由」というキーワードを含むことを意味しています。一方、ハ調の交響曲は4楽章形式ということと、和声においてバロック的なものを含んでいることから新古典主義音楽として認識されますが、ハ長調でもハ短調でもない、ハ調とすることで、当時の先端の音楽すら内包する作品に仕上がっています。

それ故、これら二つの作品はあまりコンサートピースになりにくいのでしょう。あまりプログラムで見かけたことはありません。ぶらあぼや、アマービレでもこれらの作品をコンサートピースとして載せるオケはあまり見かけません。わかりにくいという点がネックになっているのでしょうが、聴いてみればとても面白く、興味深いものばかりです。

この新古典主義時代のストラヴィンスキーの作品は、恐らく原始時代の「火の鳥」やハルサイと言った作品のように高揚感もなく、感動もないことから避けられるのでしょうが、私はストラヴィンスキーがそもそも新古典主義音楽へと傾倒していったという点にこそ、メッセージを受け取るのです。既存の基準や社会のめまぐるしい変化が、ストラヴィンスキーにとって何をもたらすものだったのか・・・・・共感や、怒りや、哀しみ。それらを一括で、かつ洒脱に表現するには、新古典主義音楽が彼にとって適当だったのだろうと思います。20世紀は「酔いの時代」と言ってもいいのですから。それと距離を置きたければ必然的に新古典主義音楽へと傾倒していったことでしょう。

一旦「酔い」に傾倒していた私にとって、そこからの回復を目指す私にとって、実にこれらの作品は共感できるものです。辛辣なことを書きます。恐らく、今の日本は「酔い」の真っ最中であることから、これら2作品の重要性はいまだ理解されていないと断言しましょう。そして理解されるときには、社会はがらりと変わっていることでしょうし、変わらなければ理解されにくいのではないかと思います。

演奏はデュトワ指揮スイス・ロマンド管。ロシアものを振らせたら一味違うデュトワに、これまたロシアものが得意なスイス・ロマンド。豊潤で味わいのあるアンサンブルが、ともすればコーピングすれば「信念」に基づく作品群でありながらも、生き生きとした生命力を持つのはこのコンビならではでしょう。毎度のデュトワ読譜力と、オケの理解度の高さと表現力には参ります。さすがですね。




聴いている音源
イーゴリ・ストラヴィンスキー作曲
交響曲ハ調
3楽章の交響曲
シャルル・デュトワ指揮
スイス・ロマンド管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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