かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:リスト 十字架への道程、ミサ・コラリス

今月のお買いもの、平成28年6月に購入したものを御紹介しています。今回は銀座山野楽器本店にて購入しました、リストの二つの宗教合唱作品のCDをご紹介します。

リストが合唱曲を数多く作曲しているということは、このブログでも何度か触れてエントリを立てているかと思いますが、今回もその一つになります。しかも恐らくですが、初めてリストの宗教作品を採り上げるかと思います。

リストはピアニストとしての絶頂期をむかえた後、作曲家に転向した後に特に宗教作品を数多く書いています。このCDに収録されている二つの作品も、時期的には1860年代以降、つまり作曲家として歩み始めた時期に書かれています。

1曲目は「十字架への道程」S53。1862年に作曲に着手され完成されたのが1878〜79年。かなり時間がかかっていることが窺えます。宗教人でもあるリストの意気込みというか、様々な想いがその時間が語っているように思います。本来は独唱と合唱、オルガンとピアノのための作品なのですが、この演奏ではピアノがなくてオルガンだけになっています。

内容はざっくりいえば、キリストがゴルゴタの丘へ自分で十字架を背負っていく、その道すがらを描いたものです。キリスト教のコアな部分ですね。リストはこの風景を、ドラマティックに描くのではなく、淡々と情景を切り取るかのように描いているのです。

ピアノや管弦楽作品でのリストからすれば、あっけにとられるくらい、淡々と音楽が進むのです。然し私からすれば、例えば「伝説」に共通するものをそこにみるわけです。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト ピアノ作品全集8
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1439

その「淡々と」という部分にこそ、リストが作品に込めた「キリストの苦しみと人類の原罪解放」がテーマとしてある訳です。そこを私たちがどう受け止めるのか、という事になろうかと思います。キリスト者とそれ以外とでは当然差は出ましょう。それでも、リストが静かな中に込めた想いにはせることは出来ます。特に何度も叫ばれる「キリスト!」という言葉は印象的で、静的であってもそこにはドラマがしっかりと作られています。

続く「ミサ・コラリス」は1曲目よりは古い作品で1865年に完成した作品で、サール番号は10。古風な作品ですが旋律も少し古風です。それは「十字架への道程」も同じなのですが、このミサ・ソラリスではさらに古風であると言えましょう。編成は合唱とオルガンというとてもシンプルなもので、ロマン派にルネサンス期を復活させたような作品です。

二つともコラールを重視しているなど、リストの宗教人としての背景が見て取れます。それはおそらく、ベートーヴェンへの尊敬と同時に、その源流であるバッハへの尊敬もあったことでしょう。オルガンと合唱というのは例えばバッハのコラールやモテットの編成である訳で、そのこと自体が何を意味するかは、当時の人たちであればメッセージとして伝わっていたと判断していいでしょう。このCDではあえて編成を共通化し、リストの作曲の源流を浮びあがらせようとしていると私は判断しています。

で、実はこのCD、それが1000円だったのですね。いやあ、こんなにバジェットプライスでいいの?って感じですが、むしろ内容が内容だけにその値段じゃないと売れないという事もあるのでしょう。

演奏面はすでに編成は触れていますが、第1曲目のオルガンは唯一ドラマティックな演出をしています。ピアノ部分も担当し八面六臂の活躍ですが、わたし自身は全く不自然さを感じませんでした。合唱団もBBCのですし、さすがヨーロッパの放送合唱団だと思います。西側なのでビブラートがかかりますがそんなのは全く気になりません。私としてはノン・ビブラート派ですけども。

第2曲のミサ曲も実にステディな演奏です。そのステディさによって逆に、第1曲ではキリストの悲劇が切々と語られ、第2曲では喜びが語られています。この「語られる」というのは合唱においてとても大切な点だと思いますが、普通に歌うことで「語る」ことができるのははやり指揮者トルネの力量ではないかと思います。できればこのような作品は是非とも「ビバ!合唱」でも取り上げてほしいものです。




聴いているCD
フランツ・リスト作曲
十字架への道程S53
ミサ・コラリスS10
フランシス・ジャクソン(オルガン)
ゴードン・トルネ指揮
BBCノーザン・シンガーズ
(alto ALC1154)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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