今月のお買いもの、5月に購入したものをご紹介していますが、今回はアルヴェーンの交響曲全集の第3回目です。
第3集には、スウェーデン狂詩曲第3番と交響曲第3番、そしてバレエ音楽「放蕩息子」が収録されています。ヤルヴィ指揮、ロイヤル・スウェーデン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏です。
この第3集ではアルヴェーンのナショナリストとしての側面が強調されている楽曲が二つ収録されています。それがスウェーデン狂詩曲第3番「ダラーナ狂詩曲」と、バレエ音楽「放蕩息子」の2曲です。
まず、1曲目であるスウェーデン狂詩曲第3番「ダラーナ狂詩曲」です。前の二つの狂詩曲からかなり離れた1932年の作品です。曲名のダラーナとはスウェーデンにある県の名まえで、スウェーデンの原初風景を残していることから「スウェーデンのハート」とも呼ばれる地方です。
ダーラナ県
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%8A%E7%9C%8C
※「ダーラナ」と「ダラーナ」とふたつ表記がありますが、どちらでもあっているようです。
この曲はこのダーラナ県にある湖、オルサ湖畔にある丘から眺めた風景から作曲者がインスピレーションを受けて作曲されたものですが、
シリヤン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%A4%E3%83%B3
この記述にある「Orsasjon湖」がそれです
この曲を読み解くときに重要なのが、オルサ湖が付随しているクレーター湖であるシリヤン湖の成り立ちと自然、そしてその場所が辿った歴史がカギとなるということです。ウィキの「ダーラナ県」の記述にはこうあります。
「1523年のスウェーデン独立戦争は、この地から始まった。」
統一王国の誕生とカルマル同盟
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2#.E7.B5.B1.E4.B8.80.E7.8E.8B.E5.9B.BD.E3.81.AE.E8.AA.95.E7.94.9F.E3.81.A8.E3.82.AB.E3.83.AB.E3.83.9E.E3.83.AB.E5.90.8C.E7.9B.9F
「1397年にはデンマークとノルウェーの摂政であるマルグレーテ1世のもとでカルマル同盟が結成され、スウェーデンはデンマークの支配を受けることになった。
デンマーク支配に対するスウェーデン人の抵抗運動は絶え間なく展開され、デンマークによる弾圧は1520年、クリスチャン2世による「ストックホルムの血浴」で極点に達した。このような弾圧に対し、スウェーデン人はグスタフ・ヴァーサを指導者として蜂起した。ハンザ同盟の助力も得て独立を勝ち取り、ヴァーサ朝が開基された。」
こういった歴史が、走馬灯のようにアルヴェーンの頭をよぎったことは間違いないでしょう(1932年という時期を考えれば当然だと私は思っています)。さらに、3億7700万年前のデボン紀の隕石衝突の様子もあったことでしょう。この二つが微妙に絡み合い、幻想的でかつ透明な音楽が展開されていきます。
2曲目が交響曲第3番です。これはずっと古くて1905年の作品です。その時期のせいなのか、今度は一転して比較的のどかな音楽へと変わります。舞曲のような第1楽章、これぞ緩徐楽章という第2楽章、動物が草原を走り回っているかのようなスケルツォの第3楽章、そして壮大で軽妙さもある第4楽章。強烈な祖国愛は影をひそめ、ごく自然なナショナリストとしての側面だけになっています。
そして、3曲目がバレエ音楽「放蕩息子」。あれ、プロコフィエフだけではないの?という方はクラシック・ファンの方ですね!プロコフィエフのほうが有名ですが、アルヴェーンもじつは同じ題材を、しかも同じようにバレエ音楽としているのです。作曲は1957年で、アルヴェーンの最晩年となります。
この放蕩息子という題材、実はいろんな作曲家が題材にしています。アルヴェーンの他には既に上げましたプロコフィエフ、そしてドビュッシーがいます。
放蕩息子 (Prodigal Son)
http://goballetstory.seesaa.net/article/58876910.html
※これはプロコフィエフの曲を解説しているサイトですが、聖書に出て来る説話は同じなので取り上げます。
あるサイトでは、資本主義がどうのという解説もあるのですが・・・・・ただ、そのサイトのほうが聖書の内容がしっかりと記述されていますので、それも上げておきましょう。
DRACの末裔による徒然の日々
聖書のエピソードを題材にした音楽
http://sawyer.exblog.jp/14115708/
つまりは、宗教説話を題材にしているわけなのですが、これをアルヴェーンはバレエ組曲として、スウェーデン民謡風の旋律で表現しています。そこにアルヴェーンの自然なナショナリストとしての側面を見ることが出来ます。
ヤルヴィはこれらの曲を、オケにとにかく冷静に演奏させています。それでいて、劇的な部分はきちんとドラマティックですし、楽しいところは楽しいです。のどかなところはのどかですし。プロオケなら当たり前かもしれませんが、しかしこういった「自然さ」が特徴である曲の場合、どれだけ冷静に聴き手につたえることが出来るのが一番難しいものです。
いや、熱い曲だって大変です。冷静さをいかに失わないかがカギですから。ところがこういった楽曲は逆に、平明すぎてどこかで妙にドラマティックにしてやろうという場合も少なくありません。それが一切なく、統率のとれた演奏はさすがは「王立」です。
アルヴェーンの作品は、いくつかCDも出ていますので、機会があったら別の演奏も聴きたいなと思う今日この頃です。
聴いているCD
ヒューゴ・アルヴェーン作曲
スウェーデン狂詩曲第3番「ダラーナ狂詩曲」作品47
交響曲第3番ホ長調作品23
バレエ音楽組曲「放蕩息子」
ネーメ・ヤルヴィ指揮
ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
(Brilliant Classics 8974/3)
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