かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト交響曲全集3

今回の県立図書館のコーナーは、モーツァルト交響曲全集の第3回目です。マリナー指揮、アカデミー室内のまず「前期交響曲集」となっている3枚目になります。

そう、これは「モーツァルト全集」からではありません。確認していませんが、確かほとんど交響曲もこの前後期に分かれた全集から採用していたと思いますので、どちらでも番号付を聴くのでしたら違いはないと思います。

しかし、今ではこの前後期に分かれているほうを借りてよかったと思っています。それは、こちらですと偽作の疑いがあるようなものや、ほぼ本人作に間違いはないが、まだ確証が得られていないものも聴けるからです。

この3枚目はほとんどそのような作品を取り上げています。

まず、交響曲ヘ長調K.76(42a)です。パッケージでは第43番となっていたと思います。この曲は現在かなり偽作ということで固まりつつあります。素人目にみても「これはモーツァルトではないな」と感じます。音のつながりや和音は、モーツァルトが好むものではありませんから。

専門家は父レオポルトではないかというのが一般的になっていますが、それすらまだ確証を得ないという作品です。

堂々たる4楽章形式ですが、音楽的にはハイドンに近いものになっていまして、モーツァルトが師事したヨハン・クリスティアンカール・フィリップ・エマニュエルといった、いわゆる「大バッハの息子たち」の音楽とはちょっと違います。そもそも、ハイドンと違って、モーツァルト交響曲の特徴は3楽章形式が多いことですから(それでも、数からいえば若干4楽章形式が多いですが)、それを考えましても、ここで唐突に堂々たる4楽章の音楽はないだろうなと思います。

次の交響曲ニ長調K.81(73l)も偽作の疑いが濃い、というよりもう学者さんたちは「レオポルト」と決めつけているくらいの作品です。もちろん、その確証がないからいまだモーツァルトの作となっているわけですが、これも幾分息子ヴォルフガングの音楽とはやはり違います。ただ、終楽章にヴォルフガングらしいものがあり、そのあたりでいまだ判明がつかないのでしょう。

むしろ、次の第11番のほうが「らしい」と思います。とは言え、番号が付いているこれすら、今では疑義がさしはさまれているという現状です。2番、3番、37番と同じ道をたどる可能性も無きにしも非ず、という立場の曲ですが、私からしますと前2曲よりはずっとヴォルフガングらしさを感じます。これも3楽章の曲で、チェンバロが入っているのが特徴です。それでいて音楽が軽い!かといって軽薄ではないのが特徴で、そこに私は「らしさ」を感じます。さて、今後はどうなりますことやら。

その次の交響曲ニ長調K.95(73n)はどちらかといいますとモーツァルトの作品と思われるが確証がないものとなります。以前の言い方だと第45番になるこの曲は、4楽章形式となっていて、それが軽さと気品さを持つものになっていまして、その点こそ私はヴォルフガングらしいと思っています。ただ、構造的にはこの曲は交響曲というよりはシンフォニアでして、第1楽章と第2楽章がいったん終止して再び始まるという形になっています。いやあ、また「つなぎ忘れたか!」と一瞬焦りました^^;終止が比較的長いのが救いです。

私の推理は、モーツァルトの作曲だけれども、勉強のためイタリア様式で書いてなおかつ、それを4楽章にしてみたらいったいどうなるのか?というPDCAを回している最中の作品というものなのですが・・・・・

最後の、交響曲ハ長調K.96(111b)(旧表示第46番)も4楽章。しかし、それ故かやはりなかなか真作とは認められず、はっきりとした史料が見つからないと認めてあげないよという作品ですが、正直最初の2曲に比べればずっとヴォルフガングらしいです。でも、この2曲が本当にヴォルフガングのものだとしますと、本当に彼はなぜ以降どんどん4楽章で書かなかったのかと、尋ねてみたいものですね。

だからこそ、私は当時のモーツァルトが受けていた「評価」から、彼は3楽章で書かざるを得なかったのでは?と推理するわけなのです。君はまだ4楽章の曲を書くだけの立場ではないのだよ・・・・・そういう目に見えぬ圧力があったと考えるほうが自然です。

彼の能力からすれば、彼の個性あふれる4楽章の交響曲が書けたはずなのですから。実際、数の上でも若干ですが4楽章のほうが多いですし。ただ、ハイドンのように4楽章で行くと決めたらそれでまっしぐら!というものがないのです。そこから、私にはモーツァルトの苦悩が見えてくるのです。

マリナーの解釈はそんなものを全く感じさせませんが、「正しい軽さ」であるがゆえに、私には伝わってくるものがあるのです。



聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
交響曲ヘ長調K.76(42a)
交響曲ニ長調K.81(73l)
交響曲第11番ニ長調K.84(73q)
交響曲ニ長調K.95(73n)
交響曲ハ長調K.96(111b)
サー・ネヴィル・マリナー指揮
聖マーティン=イン=ザ=フィールズ教会アカデミー(アカデミー室内管弦楽団