かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今日の一枚:ベートーヴェン 交響曲第7番・第8番

さて、マイミクさんから「譲り受けた」CDレビュー、今日はその第2回目です。今回はベト7とベト8です。クリストファー・ホグウッド指揮、エンシェント室内管弦楽団です。勘のいい人であれば、もうお分かりかと思いますが、この演奏はピリオド楽器によるものです。

もともとこのコンビはハイドン交響曲で有名です。前にもご紹介したハイドン交響曲研究のサイトでも、CDとしてほぼ全ての番号で出てきます。すでに古楽演奏では一つのステイタスを築き上げたと言っていいでしょう。

このCDを譲り受けたきっかけは、もっていらしたご本人が古楽演奏があまりお好きではないことでした。私はベートーヴェン古楽演奏には前から興味があり、すでにほかのマイミクさんからはブリュッヘン/18世紀オーケストラでチクルスをもらっていましたし、第九は自分でもブリュッヘン/18世紀オーケストラで別に持っていて、さらにガーディナー/オルケストル・レヴォシュショネル・エ・ロマンティクで持っていますので、是非とも第九以外で別に欲しかったところではあったのです。

古楽演奏の特色としましては、ピッチが低いという点があります。そしてまさしく、それが好き嫌いの判断になっていますね。確かに、モダンとピリオドを混ぜて聴きますと、まずピッチの違いに頭がついてゆかないことはあります。それは私も結構しょっちゅうありますから。

でも、特に楽譜が読める人ならば、慣れてくればそれほど問題ないかと私は思っています。特に、この18世紀という時代背景を知りますと、ピッチの低さより、私は例えばリタルダンドの仕方やテンポというもののほうに興味が行きますので、私としてはピッチはあまり気にならないのです。

演奏自体は、かなり名演です。7番はテンポもよく、いわゆる古楽にありがちなかなりテンポの速い感じはありません。ゆったりとした部分もきちんとあり、メリハリが利いています。ただ、アインザッツがかなり強めですね。これはピリオドですので仕方ないところではありますが、ただそれはベートーヴェンが作曲した当時の演奏を想起させてくれます。そう、ピリオド楽器が当時を反映しているというのは、実はそういう点こそなのです。テンポが早くなってしまうのも、楽器がよくならないが故ですし。

しかし、このCDではそれほどめちゃくちゃ急いでいるわけではありません。それは、第3楽章を聴きますとよくわかるかと思います。第3楽章ではきちんと繰り返しがありますが、だからといってそれほど急いでいるようには感じません。テンポ自体もモダンと比べてそんなに速い感じはしません。ただ、速いパッセージはかなり速くしています。そのあたりで稼いでいますね。ゆったりとしたトリオの部分ではゆっくりと演奏しています。ピリオドですとトリオも急いでしまう演奏もある中で、これはすばらしいと思います。さすがオーソリティです。

続く第4楽章もモダンと比べてそれほど速くありません。むしろ、私が持っているモダンのショルティ/シカゴ響の方が速いかも・・・・・

金管も、かなりほえていますが、かといってぶんぶん言わせるような感じではありません。メリハリを利かせるため、という感じですね。当時の金管の技術水準を考慮にいれた演奏です。それでも、歌わせている部分があるのです。ベートーヴェンがよく未来を見据えて作曲していたといいますが、それがこの7番を聴きましてもよくわかるかと思います。特にそれは金管に注目して聴いていただきたいと思います。意味がすぐわかりますよ。

さて、もっと注目なのは、実は8番なのです。これこそ、ザッツ・ピリオド!速い速い!テンポがはやーい!

実は、このCDをいただく直前に、モダンで速い演奏を聴いたのですが、それよりも恐らく速いかと・・・・・でも、それはほとんどメトロノームの指示通りなのですね。ここにも、ホグウッドの「当時を再現する」という高い意識を感じることができます。それは第1楽章からもう全開です。金管もよく聴こえています。このCDでは、弦よりもむしろ金管の方が目立つくらいです。ベートーヴェン金管を重視していた現われでもあります。これが、前回近衛さんの時に言いました「ベートーヴェン金管に重要な役割を持たせることがある」という意味なのです。

ただ、ピリオドで聴きますと、そのものすごく速いテンポが普通に聴こえてしまうのですね。なるほど、なぜベートーヴェンはこんな速いテンポを指示したのかということが、感覚的にわかる名演かと思います。

つまり、モダンですと性能が良い分、鳴らしすぎてしまうのですね。だからといって鳴らすことは悪いことではない。その兼ね合いが、ベートーヴェンは非常に難しい作曲家なのだなとわかります。

第2楽章も速いですよ〜。とはいえ、この演奏はそれほどめちゃくちゃ速いわけではないのですが・・・・・・あまりにも、第1楽章が速すぎるのですね。この楽章も充分ほかに比べても速いのですが・・・・・・とてもゆったりと聴こえます。でも、決してゆったりとしたテンポではありませんよ!念のため。ただ、この楽章は通奏低音とメロディのバランスがとてもいい楽章です。速度だけにとらわれていますと、そういう部分の美しさがわからなくなってしまいます。この演奏はそれがよくわかる点で、本当に名演だなあと感じます。メリハリがきいていますね。

第3楽章は、まず冒頭リフレインがあります。え、この楽章ってリフレインしたっけ?と驚かされます。ただ、よくよく考えて見ますと確かに冒頭は同じメロディが続いているので、確かにリフレインがあるんですね。これはモダンですと鳴らしすぎになってしまうので、今までは私自身もよくわかりませんでした。このあたりは目からうろこですね。楽譜を見ながら聴ける人であれば、そのあたりはよくお分かりかと思います。そういう部分も、この演奏のいい点ですね。

第4楽章は、とにかく速い!第1楽章もそうですが、本当に速いです。この曲は第3楽章がメヌエットなのでモーツァルトの時代へ先祖がえりしたかのような構造になっていますが、そのせいか特に急楽章は本当に速いです。だからといって、緩徐楽章がゆっくりかといえばそうではない点が単なる先祖がえりではないのですけどね・・・・・・その魅力がわかるまで、私は20年かかりました。

全体的なさらなる特徴としましては、リタルダンドがきわめてすくないという点が上げられます。古楽演奏でもここまでリットしない演奏は珍しいかとおもいます。徹底されていますね。もちろん、リットの指示が楽譜にないからでしょうが、通常なくても最後はリットすることが多い昨今、これだけ徹底的にリットしない演奏は珍しいですね。これもホグウッドの高い意識を感じます。

レファレンス的な要素が高い演奏ですが、しかし普通に聴いても充分楽しめる演奏です。そのあたりに、ホグウッドの深い譜読みを感じ取れる、名演です。


聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第7番・第8番
クリストファー・ホグウッド指揮
エンシェント室内管弦楽団
(デッカ FOOL-20442)