かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:宮城道雄の至芸

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリを御紹介しています。今回は宮城道雄の自演集である「宮城道雄の至芸」というアルバムを御紹介します。

普通、クラシック・ファンで、宮城道雄に注目するってことは少ないんじゃないかって思います。邦楽の作曲家というイメージが強いのだと思います。確かにそもそもは箏の大検校ですから、仕方ないとは思いますが・・・・・

けれども、日本の音楽教育の中で、実は必ず音楽史の中で触れられているのが宮城道雄です。ただ、私はその触れ方というのは、かなり文科省のいいなりになってしまっている部分があるなあって思いますし、また採り上げ方が保守的だって思います。だって、宮城道雄という人は、正に新古典主義音楽の作曲家として位置付けることができる作曲家なのですから。

宮城道雄
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%AE%E5%9F%8E%E9%81%93%E9%9B%84

そう、クラシック音楽の歴史の中でも、フランス六人組に端を発する新古典主義音楽の、一つの到達点なのです。たまたまそれが、宮城道雄のそばにあった箏という楽器で表現されたってことなんです。

宮城道雄を語る時、実は重要なのはクラシック音楽の存在なのです。彼の生まれは神戸の居留地です。そこには箏よりも、断然クラシック音楽など、欧米の音楽が溢れていたはずなのです。ジャズもあったことでしょう。そんな音楽が、箏の「大検校」の身についていたとすれば、このアルバムに収録された作品たちは、とても納得する物ばかりです。

第1曲が宮城道雄の作品で最も有名だと言える「春の海」で、しかもこれは基本自作自演のアルバムですから、実はウィキにもあるシュメーとのセッションなのです。ですから普段お正月に流れる尺八ではなく、ヴァイオリンなのです。けれどもそれが全く違和感ない!これって、すごい事なんですよ。だって、ほぼ移調せずに、ですから。恐らく、この作品を作曲した宮城のあたまの中には、バッハがいたのではって思います。箏はまさにチェンバロと同じです。それに尺八もしくはヴァイオリンってことは、宮城のあたまの中には、箏に他の楽器を組み合わせるということはソナタだって思いがあったんだと思います。その上で、作品はA-B-A'の三部形式を取ります。正にこの作品はクラシックの作品だと言っていいわけなんです。

2曲目の「水の変態」はカノンを筝曲の伝統に応用したものですし、歌が付いている作品はピアノを箏に置き換えた歌曲ですし、そこかしこにクラシック音楽が見え隠れするんです。旋律や構造的には筝曲なんですけどね。

そんな中に、八橋検校作曲の「末の契り」も収録されています。大検校として、箏奏者宮城道雄の面目躍如!生命力あふれる演奏は、正に宮城の言葉である「自分の歩くところは狭いが 耳や心に感じる天地は広い」をそのまま表していると思います。

宮城道雄は箏奏者ってことでくくられる学校教育が多いのですが、それはそろそろ改めたほうがいいと思います。勿論箏奏者で箏の音楽の作曲家ですが、私は宮城をクラシック音楽の作曲家と位置づけています。たまたま、その楽器が箏だったにすぎない。バッハがオルガンやチェンバロだったり、ベートーヴェンモーツァルト、或はシューマンブラームス、リストやドビュッシーらがピアノだったとの同じなんです。そこを教えようとしないんですよね。単に日本の伝統音楽とだけしか教えず、宮城道雄が如何に当時の先進の音楽潮流の中にいたのかを教えないんです。それで、日本の誇りとか言って、子供たちが大人になって納得するのか、腑に落ちるのかと言えば、私は疑問です。「さくら変奏曲」は完全なるクラシック音楽の伝統である変奏曲ですし、その一つ前の曲である「瀬音」はまるでドビュッシーです!

どこがって思いますよね?そりゃあそうです、音楽自体は箏ですからね。でも、クラシック音楽を聴き慣れた私からすれば、驚きの連続なんです!恐らく、「春の海」のシュメーセッション版を聴いた欧米の聴衆たちも同じだったと思います。楽器は箏なのに、このクラシック音楽ぶりはなんだ!と。しかもそれを見事な技術と魂で、美しくかつ生命力に富んで演奏するわけなんですよ。

このアルバムは、すべて宮城道雄の演奏なので、実はすべてモノラルなんです。けれども、そんなハンデを微塵も感じさせないんです。それはずっと視覚障害者として生きてきた宮城ならではなんでしょう。録音として広く知られることの喜びのほうが勝っているんだ・・・・・そんな宮城の声すら聞こえて来そうです。

真に日本の誇りとか言う人たちは、是非とも正月だけではなく、通年で宮城の音楽を愛してほしいって思います。それが真に日本の伝統文化を守ることになるんですから。皇室だけに任せておいて、日本の伝統文化が守られるとでも思っているんであれば、それこそ脳内お花畑だと思います。その意味では、このアルバムは日本文化の守り方すら、問題視している意欲作だとおもいます。




聴いている音源
宮城道雄作曲
春の海(編曲:ルネ・シュメー)
水の変態(作歌:大和田建樹)
秋の調べ(作詞:小林愛雄)
瀬音
さくら変奏曲
ロンドンの夜の雨
伝 八橋検校作曲
六段
松浦検校作曲
浦崎検校箏手付
三井次郎右衛門高英作詞
末の契
光崎検校作曲
秋風の曲(前弾)
宮城道雄(箏)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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