かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ヴィヴァルディ フルート協奏曲作品10

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はヴィヴァルディのフルート協奏曲作品10を取り上げます。オーレル・ニコレのフルート、イ・ムジチ合奏団の演奏です。

以前から、わたしはバロックのフルート協奏曲には興味を持っていることは、コアな読者の方であればご存知かと思います。これもその延長線上で借りたものです。が・・・・・

解説を読んで、全く持って私の「ヴィヴァルディは先進的な作曲家だった」ということが、裏付けられることになった音源でもあります。さすが図書館だと思います。

というのは、これはフルート協奏曲、つまり、バロック時代に即して言えば、フラウト・トラヴェルソ協奏曲、だからなんです。だからソリストもフルーティストです。イ・ムジチはさすがだなあって思います。

つまりは、このアルバムは、イ・ムジチが如何に学究的であって、しかしそれをひけらかさず、実直に演奏に落とし込んで反映させているか、なんです。モダンならトラヴェルソならフルートでいいわけです。では、バロックの「フルート協奏曲」なら何がいいのかと言えば、当然ですがモダンであってもリコーダーだと思います。

このあたりは、わたしはバロックの協奏曲を聴きこんできて、得た結論です。勿論、元々リコーダーの作品をモダンだからと言ってフルートで演奏すると言うのもアリですが、それが通例であっていいんだろうかって、最近では思います。

この作品10が作曲されたのは1728年ですが、その当時実はトラヴェルソという楽器はまだ珍しい、つまり新しい楽器だったのです。フルートと言えば縦笛、つまりリコーダーしかなかった時代だったからです。そこに横笛、トラヴェルソが現れます。その担い手の一人が、ヴィヴァルディだったのです。

元々この作品10のうちほとんどは、旧作から転用されており、室内協奏曲と言った、もっと編成が小さい、楽器の数も少ない作品たちの編曲です。そのうち第5番は実は元々リコーダー協奏曲で、緩徐楽章はトラヴェルソに合せて移調しています。だからこそ、この演奏がフルートなのが素晴らしいと言う訳であり、私がバロックの「フルート協奏曲」をフルートで吹くことに違和感を覚えたきっかけなんです。

リコーダーにも実はモダンとバロックとがあり、モダンの演奏にはモダンのものを使えばいいだけなんです。ヴィヴァルディが移調しているということは、少なくともリコーダーのための「フルート協奏曲」はトラヴェルソである現代のフルートには実は多少そぐわないというのが、お分かり頂けるかと思います。

イ・ムジチのアルバムには、そういえば、ヴィヴァルディは先進的な作曲家であることが、必ず解説に書いてあるなと気が付きます。私も気が付かされたのはやはりイ・ムジチの「四季」だったからです。古典派的な三楽章形式をとるということは、当時如何に先進的だったのか・・・・・それを、古典派〜ロマン派の作品を当たり前に聴いている現代の私達は、気がつかずに聴いているってことなんです。

この作品10は最初の3曲に標題が付いており、その中でも「ごしきひわ」は特に有名であるだけに、ついその先進性には気づかずにすぎてしまいますが、実はすごい作品であるわけです。ただ、旧作の転用もあるので例えば第2番「夜」は5楽章と、室内協奏曲のままですが、それ以外は実は3楽章で統一されていることに気が付きます。当時の人たちがヴィヴァルディは大御所というよりは、アヴァンギャルドな作曲家として見ていたことがよく分かります。

それをこの演奏は、モダンだからこそフルートということでまずはしっかりとおさせつつ、ヴィヴァルディの作品にもある舞曲性も存分に加味し、実に愉快で喜びに満ちた演奏になっています。奇をてらわず、楽譜にある情報をしっかりと受け取り、それを自家薬篭中のものにして、その上でよろこびと愉悦を加味して私達聴衆に呈示しています。さりげないことなんですが、単に演奏がうまいと言うだけではなく、これぞスコアを読むと言うことがどういうものなのかを、しっかりとプロとして見せているのが好印象です。




聴いている音源
アントニオ・ヴィヴァルディ作曲
フルート協奏曲集 作品10
第1番 ヘ長調RV433「海の嵐」作品10-1
第2番 ト短調RV439「夜」作品10-2
第3番 ニ長調RV428「ごしきひわ」作品10-3
第4番 ト長調RV435 作品10-4
第5番 ヘ長調RV434 作品10-5
第6番 ト長調RV437 作品10-6
イ・ムジチ合奏団
オーレル・ニコレ(フルート)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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