かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:アーノルド 映画音楽集

今月のお買いもの、平成29年7月に購入したものを御紹介しています。今回は銀座山野楽器本店にて購入しました、アーノルドの映画音楽集を取り上げます。

アーノルドはクラシック好きだとあまり知られていないんですが、映画音楽で活躍した人でもあります。ですがこのブログではむしろアーノルドの本職である、クラシック音楽を御紹介してきており、交響曲も全曲取り上げさせていただいています。

そう、我が国ではむしろ、映画が好きな人たちに圧倒的に知られているひとなんですよね。しかーし!私はクラシック音楽が大好きなので、まずは交響曲や協奏曲を取り上げた、と言う事なんです。

そして今回、アーノルドのもう一つの顔である、映画音楽作曲家としての側面をご紹介できることは、本当に幸せなことです。

このアルバムはVol.1となっており、ということは続く可能性もあるアルバムです。いつかはVol.2をご紹介できればいいなあと思います。

さて、我が国では映画音楽となると、あまりプロオケと言うか、たとえば在京オケを使うことは稀です。というのは、ある意味我が国は恵まれており、映画音楽専門の楽団があるんです。今では減りましたけれど、そのため有名なオケが映画音楽をっていうことは珍しいのですが、このアルバム、母国イギリスでのアーノルドの認知度の高さと、リスペクトぶりを象徴するかのように、ヒコックス指揮ロンドン響なのです!

そんなバカな!って思うでしょ?ある意味、日本は恵まれている反面、映画音楽ってどこか低く見るんですよね。だからこそ、日本の新古典主義音楽とも言うべきチェレプニン派の第1人者である伊福部昭の音楽(まさにゴジラがそう!)が顧みられないなどと言う現象が起きるんです。こういうことは英国ではありえないでしょう。

でも、伊福部は幸いなことに、プロオケも収録しており、まだ良いでしょう。他の作曲家だと、いったいどうでしょう・・・・・それでもまあ、状況はよくなってきているのかなって思います。

アーノルドはウィキで幾つかの映画音楽を書いていると映画名は列挙されていますが・・・・・

マルコム・アーノルド
映画音楽
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%83%89#.E6.98.A0.E7.94.BB.E9.9F.B3.E6.A5.BD

そのうち、今回のアルバムに収録されたのは、以下の5作品の映画音楽です。

戦場にかける橋(The Bridge on the River Kwai)
汚れなき瞳(Whistle Down the Wind)
超音ジェット機(The Sound Barrier)
ホブスンの婿選び(Hobson's Choice)
六番目の幸福(The Inn of the Sixth Happiness)

「超音速ジェット機」は狂詩曲となり、それ以外は組曲となっています。特に圧巻なのはやはり「戦場にかける橋」。ボギー大佐は著作権の問題で映画同様には扱っていませんが、それを堂々たるオケで聴けるのは素晴らしい!帯にそうあってどれだけなのかな〜ってワクワクしながら聴きましたが、本当に圧倒的なサウンドとロンドン響のアンサンブルは力強く美しく、映画音楽というよりは、彼らはどこか国民楽派として演奏しているなあって気がしました。

「汚れなき瞳」は日本未公開だそうで、しかしあらすじを読んでみただけでは、とても考えさせる作品だと思います。ある意味「レ・ミゼラブル」に通じる点もあり、ヨーロッパの共通する文化を見ることができる素晴らしい作品だと思いますが、音楽もかなり緊張感のあるもので、一見すれば戦争もの?って思ってしまいます。

アーノルドの交響曲などで見せる諧謔性が全面に押し出されているのは、「ホブスンの婿選び」。CDでは「ホブソンの選択」となっていますが、御茶目で楽しい音楽満載!それをロンドン響の素晴らしいアンサンブルが彩れば、映画そのものは楽しそうです。見てみたいな〜

「超音速ジェット機」は吹奏楽で演奏されることが多い作品ですが、オケの力強いサウンドも聴きごたえありです!ブラバンの方、推奨です!

「六番目の幸福」は中国の幸福論をモティーフに、日本軍の虐殺から中国人を守った実在した女性の物語を描いた作品ですが、戦争の側面ではなく、女性の「人生の荒波に負けない生き方」がテーマになっているだけに、いきなり音楽は楽しそうな、ポジティブなもので始まり、その後中国へのあこがれが中国的旋律で現わされるものとなっています。クラシック音楽の伝統をよく知りぬいたうえで、さまざまに織りなされる音楽は実に美しいものです。

これ等の映画そのものは、イギリスのだったりアメリカのだったりしますが、どれもクラシック音楽作曲家アーノルドの才能が随所に見られるものとなっています。そのためか、指揮するヒコックスも、そしてオケのロンドン響も、どこかリスペクトしている様子がうかがえるんですよね。これだけの映画音楽に誇りを持っていると言うか。その「誇り」って言う点こそ、日本の演奏家たちに欠けている点ではないのだろうかって思います。例えば、伊福部の映画音楽、例えばゴジラの音楽を、日本のオケはどれだけ自国の作曲家の作品としてとらえ、誇りを持って演奏しているか、と言う事です。

伊福部は自衛隊のテーマとして、戦前旧軍のために作曲したものを使いました。それは自衛隊が生まれ変わった軍隊として、あってほしい姿を音楽に投影したと考えていいでしょう。勿論、伊福部だけの選択だったわけではないでしょうが、伊福部が許可をしたわけです。そこをどれだけ私たちはそのメッセージを受け取っているか、と言う事です。

決して日本を守ったとは言えなかった旧軍。でも、それでよかったのだろうかという想いが、ゴジラという映画を作った人たち、そして伊福部の中にあったことでしょう。その想いをどれだけ汲んで、その想いに誇りを持てるのか・・・・・

このアーノルドの映画音楽を聴いていると、本当に我が国に必要な「誇り」って、今のままでいいのかなって思います。




聴いているCD
マルコム・アーノルド作曲
管弦楽のための組曲「戦場にかける橋」
管弦楽のための組曲「汚れなき瞳」
管弦楽のための狂詩曲「サウンド・バリアー」
管弦楽組曲「ホブソンの選択」
管弦楽組曲「第六の幸福(をもたらす宿)」
リチャード・ヒコックス指揮
ロンドン交響楽団
(Chandos Chan9100)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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