神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はフランス・バロックのフルート協奏曲集をご紹介します。これも前回同様、エラートから出ているものです。
フランス・バロックの作曲家はたくさんいるにもかかわらず、じつはわが国ではコンサートピースにあまり乗りません。ここに並ぶ作品たちはどれも素晴らしい者ばかりなんですが・・・・・
まあ、興味をもたなければそんなもんかもしれません。私自身、きっかけはドビュッシーです。つまりは印象派(あるいは象徴主義)。でもそこから入りますと、何とその奥深いことか!
このような音源を持つのは、さすが図書館であると思います。しかもこの音源の特徴は単にフランスバロックのフルート協奏曲を並べたのではなく、そのどれも3楽章形式を取っている、と言う事なんです。
ここに、フランスバロックの先進性が見えてきます。その先進性を評価しているとは、現在とても言えない状況です・・・・・・
まず第1曲目がルクレールのフルート協奏曲ハ長調。ルクレールは18世紀フランスでヴァイオリニストとして有名だった人で、作曲もしています。その意味においては古典派のモーツァルトに近いスタンスだと言えますが、作品もモーツァルトのフルート協奏曲が素晴らしいのと同様に、味わい深い作品に仕上がっています。
ジャン=マリー・ルクレール
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%AB
次が、ブラヴェのフルート協奏曲イ短調。短調の味わい深い素晴らしい作品ですが、本人も当時名声を誇ったフルーティストでした。
ミシェル・ブラヴェ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A7
そのイ短調という調性が何とも言えぬ味わいをかもし出し、個性的な作品です。その後の多感様式や古典派を彷彿とさせる作品です。
3曲目が、ノードのフルート協奏曲ハ長調。ノードはCDのブックレットではあまりわからないと書かれてありますが、その割には何とウィキにページがあると言う作曲家です。言えば分るという程名声を誇っていたらしく、確かに明るいこの協奏曲は、存在感もあります。
ジャック=クリストフ・ノード
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF%EF%BC%9D%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%89
4曲目がコレットのフルート協奏曲第6番ホ短調。コレットになりますとバロック時代と言うよりも、晩年は古典派の時代になってきます。丁度モーツァルトが活躍していた時代に最晩年を迎えた作曲家です。ドイツ音楽がバッハ以来勃興してくるときに、その配電盤の役割を担ったのがフランスで、モーツァルトもパリへと父レオポルトと旅行に行っています。そんな時代に活躍した作曲家です。
ミシェル・コレット
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88
コレットよりもさらに古典派の時代に活躍したのが、ドヴィエンヌです。時代的には古典派としてもいいと思います。コレットもドヴィエンヌも、ここに収録されている作品は古典派といいだけの様式を持っています。特にドヴィエンヌのフルート協奏曲ホ短調は規模も大きく、かつ多感様式的な作品。バロックというくくりでは正しくない位だと思いますが、フランス・バロックの先進性を、編集者が言いたいのではないかと思います。
フランソワ・ドヴィエンヌ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%AF%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%8C
ウィキを見てみれば、これらの作曲家たちが決して裕福な家の出ではないことが分かります。さらに、ドヴィエンヌはフランス革命後もその地位が保障された人です。このようなアルバムを聴きますと、私のような庶民だって芸術にたずさわれるのだと、勇気をもらえますね。
演奏は、フルーティストがランパル。それだけでも興味をそそられるアルバムですが、名手ランパルが自国フランスの、ある意味埋もれた作曲家達に光を当てたのがこのアルバムだとも言えます。オケはパイヤール室内管弦楽団ですし。日本では考えられないですよ、こういうことは。有名な組み合わせなら有名作品を演奏するのが当たり前となっているこの状況は、どうなのでしょう?この国が右へと極端に振れているにもかかわらず、日本のクラシック音楽の作曲家たちは相変わらず一部のマニアだけに留まっているというのは、実に残念です。
ランパルのフルートは実に美しいです。さすが名手ですが、それはこれら作品が当時「名手」と言われた人たちによって紡ぎだされたということへのリスペクトなのではないのかなあって思います。決して手を抜かない、しかし気品と軽妙さを持ち合わせるその演奏からは、私はランパルの実直な人柄が見え隠れするのです。
カラヤンを批判するのなら、こういった音源を是非とも取り上げてほしいですし、またコンサートピースとしてオケに要求してほしいものです。
聴いている音源
バロック期フランスのフルート協奏曲
ジャン・マリー・ルクレール作曲
フルート協奏曲ハ長調
ミシェル・ブラヴェ作曲
フルート協奏曲イ短調
ジャック=クリストフ・ノード作曲
フルート協奏曲ハ長調作品17-3
ミシェル・コレット作曲
フルート協奏曲第6番ホ短調
フランソワ・ドヴィエンヌ作曲
フルート協奏曲ホ短調
ジャン=ピエール・ランパル(フルート)
パイヤール室内管弦楽団
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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