かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:メンデルスゾーン 無言歌全曲演奏会第2回を聴いて

コンサート雑感、今回は平成28年4月28日に聴きに行きました、メンデルスゾーンの無言歌全曲演奏会の第2回をお届けします。演奏は瀬川玄。このブログでも何度か出てきているピアニストです。

この演奏会は実はシリーズになっていまして、すでに昨年の12月に第1回が行なわれました。第1回も聴きに行きたかったのですが、予定がどうしても合わなくて断念せざるを得なかったのでした。

今回、ちょうど休みに当たったため、予定を入れたのでした。結論を言えば、行ってとてもよかったと思っています。

さて、まずは無言歌とは、から始めなければなりません。メンデルスゾーンの素晴らしい作品である割には、ピアノ好きの人からはいまいち反応が薄いのがこの作品集ではないでしょうか。有名な曲もいくつかあるのですが。

無言歌集 (メンデルスゾーン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E8%A8%80%E6%AD%8C%E9%9B%86_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)

無言歌(ロマンス) [ピアノ独奏曲]
http://www.piano.or.jp/enc/composers/72/

ピティナの分類では「ロマンス」にカテゴライズされるこの曲集は、メンデルスゾーンの生涯にわたって成立したものです。最後の2巻はメンデルスゾーンの死後に出版されたものです。

で、今回は敢えてウィキとピティナのURLを載せました。概観をまずは抑えてほしいからです。その上でこの演奏会は特殊で、実は瀬川氏とヴァイオリン奏者でクラシック音楽の普及のためのマネジメントを行っている松本光生氏との対話がほとんどとなっているのです。

そもそも、このシリーズは8回予定されています。そう、感のいい方はピン!と来たと思いますが、それぞれの巻をそれぞれの回で取り上げることになっています。当然それぞれの回は時間が余ります。その時間を瀬川氏と松本氏との、解説対談となっているのです。

それはまるで、私にとっては、かつて毎月第2水曜日に通っていた、瀬川氏のサロン「音楽道場」そのものです。これほど嬉しいことはありません。なぜなら、今わたしは毎週水曜日は勤務となっており、「音楽道場」には参加できないからです。

クラシック音楽道場◆
〜 音楽家・ピアニスト瀬川玄主催 〜
http://artist.musicinfo.co.jp/~gensegawa/zalle%20doujou.htm

実は「音楽道場」では、もっと濃いためにせいぜい1曲しか全部を演奏する機会はありません。それはそれで素晴らしいのですが、もう少し圧縮し、俯瞰することを狙ったのが今回のシリーズだと言えるでしょう。新しいリサイタル形式の誕生だと言えます。

今回は第2回ということで、当然ですが第2巻が取り上げられたわけです。ウィキとピティナを一応挙げておきましょう。

第2巻 作品30
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E8%A8%80%E6%AD%8C%E9%9B%86_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)#.E7.AC.AC2.E5.B7.BB_.E4.BD.9C.E5.93.8130

メンデルスゾーン : 無言歌集 第2巻
Mendelssohn, Felix : Lieder ohne Worte Heft 2 Op.30 U 103, 77, 104, 98, 97, 110
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/2485/

解説が充実しているのはさすがピティナですが、しかし当日の2人の見解は実はピティナとは異なりました。ピティナでは、基本的に様式的には無言歌集をこう捉えています。

メンデルスゾーンが活躍したこの時期、ブルジョアジーの家庭を中心に、ピアノが教養として普及した。そのため、家庭で気楽に弾ける作品が多く作られたが、この《無言歌集》もその一つである。」

しかし、楽譜を見てみればそうではないぞというのが、二人の見解です。ペダルの使い方や、心象風景の取り上げ方は、人間の内面を深く掘り下げたものであり、メンデルスゾーンの想いが詰まっているというのが二人の見解です。つまり、そう簡単に弾いてほしくはない作品である、というのが二人の結論でした。

確かに、楽譜を見ますと、バッハ、モーツァルトベートーヴェンといった作曲家の遺産を受け継ぎながら、自分の作風を作りあげているのが一目瞭然です。それは私が常にメンデルスゾーンを採り上げる時に言及する点でもあります。そして私は基本的に楽譜を見ていません。耳だけです。それが今回、楽譜という資料、エビデンスが明確に示したことになります。

気軽に弾くという事は、ともすれば自分勝手に弾いていいという事になりかねませんが、メンデルスゾーンは決してそのつもりで書いていないのです。むしろ、きちんと楽譜に向き合って欲しくて様々な指示を楽譜に書きいれている点を考えますと、旋律こそ簡単ですが、それを実際に表現するためには、真摯な観察力と素直な心、そして深い洞察力が必要なことが分かります。

私は、この全集がそれぞれ6曲あり、8巻あるということから、ツェルニ―の前奏曲とフーガを想像しましたし、それはバッハの平均律クラヴィーア曲集にもさかのぼっていくものでもあります。なぜなら、これら二つの作品は、ぜんぶで48曲を収録しているからで、この無言歌集も全部で48曲になるからです。

平均律クラヴィーア曲集
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%9D%87%E5%BE%8B%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%A2%E6%9B%B2%E9%9B%86

メンデルスゾーンのこの無言歌集には、収められなかった作品が幾つかあることが確認されていますが、ではなぜそれは収められなかったのかを考える時、私は48という数字を考えるのです。楽譜を見れば3という数字にこだわっているのは明らかで、庶民が簡単に弾ける作品になぜそのような趣向をわざわざつけるのかと考える時、大バッハ、ヨハン・セバスティアンの存在を感じざるを得ません。無言歌集は決して練習曲という位置づけではないですが、バッハの平均律クラヴィーア曲集の冒頭に掲げられたように、音楽愛好家が深く掘り下げるための曲集であると言えるでしょう。

瀬川氏の演奏はそれを踏まえてか、歌うように伸びやかで、瀬川節全開なのがとてもよかったです。結構CDなどでは淡々と弾いてしまうことが多い作品ですが、端正でかつダイナミックで、表情が豊かな演奏は、明らかに無言歌集という作品に人間的な内面性を持つ作品であることが明確化されたように思います。

使ったホールがまたよかったと思います、会場は横浜市鶴見区民文化センターサルビアホール音楽ホール。収容人数は100名。それだと、例えばペダルがと言った時、じっさいどこでペダルを使っているのかが丸見えです。だからこそ、こういったサロン形式のリサイタルにぴったりだと思いました。普段の距離の近さがリサイタルで感じられる、素晴らしい演奏会だったと思います。

AKBが「会いに行けるアイドル」だとすれば、この新しいリサイタルはいわば「会いに行けるリサイタル」だと言えるでしょう。サロンは誠にAKBと同じ意味を持つからです。そのサロンをリサイタルにするためにはと、会場を工夫した結果、サルビアホールになったのだと思います。横浜はこのような小さい「響きの良い」ホールを各区に作っていますが、まさしくこのようなすそ野を広げられるイベントにはぴったりの大きさではないかと思います。さすがプロの演奏家は違うと見せつけられた点です。

メンデルスゾーンの真の姿を追求する瀬川氏を今後も応援するとともに、次回第3回もできれば行きたいと思っております。第8回まで全部参加できれば、これほど幸せなことはないでしょう。




聴いて来た演奏会
メンデルスゾーン 無言歌全曲演奏会 第2回
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
無言歌集第2巻作品30
瀬川玄(ピアノ、解説)
松本光生(解説)

平成28年4月28日、横浜鶴見、横浜市鶴見区民文化センターサルビアホール 音楽ホール

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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