かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト ピアノ作品全集5

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、シリーズで元音源ナクソスのリストピアノ作品全集を取り上げていますが、今回は第5集を取り上げます。

第5集はシューベルトの歌曲の編曲が収録されています。セレナーデなど、有名な作品が続々出てきます。

で、ここで問題になりますのが、編曲された時期、という事になるでしょう。じつは全て1830年代なのです。ということは、リストがまだ駆け出しの時代、演奏者としてスタートを切り、作曲の勉強をしていた時代という事になります。

フランツ・リストの楽曲一覧 (S.351 - S.999)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%84%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%AE%E6%A5%BD%E6%9B%B2%E4%B8%80%E8%A6%A7_(S.351_-_S.999)

フランツ・リスト
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%84%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88

リスト Liszt, Franz [ ハンガリー ] 1811 - 1886
http://www.piano.or.jp/enc/composers/83/

では、どんな編曲なのかと言えば、実はその後の演奏家としてヴィルトォーソ絶頂期に編曲されたものとは異なり、むしろもっと後の、晩年に近い、原作を殆どいじらない編曲に終始しています。それはまさしく、他者の作品の研究という側面もあっただろうと思います。

それは視点を変えれば、モーツァルトベートーヴェンが同じく駆け出しの頃やっていたことを踏襲しているとも言えます。さらにその元を辿ればバッハに辿りつくわけで、リストがいかに伝統から新しいものを紡ぎだしたかが、これらシューベルトの作品の編曲は明確に示しているのです。

それを、まだ有名曲が出ていない第5集に持ってくる・・・・・いや、有名曲が出る前の第5集にわざわざ持ってきた、というべきでしょう。これは全集です。リスト作品を俯瞰できるようにという編集が色濃く出ている、さすが海外盤だと、私はうなってしまいました。

リストの業績の中で、意外と知られていないのが、こういった編曲です。なぜなら、これは後世、合唱団のヴォーカルスコアへと繋がっていくからです。例えば、ベートーヴェンの第九。リストの編曲なしには考えられません。

それはベートーヴェン交響曲の編曲の項目でおいおい語っていきますが、ピアノと合唱部分をピアノ一つで演奏できるように編曲するには、相当の苦労がある訳ですが、意外ですが、このシューベルトの編曲では、ピアノ1台で歌唱部と伴奏部が自然に一つにまとまり、作品として成立しています。

演奏するヤブロンスカヤは、ナクソスではおなじみのピアニストですが、その一つにまとまっているという部分を尊重して、ピアノで存分に歌っています。リストの超絶技巧振りが好きな方は信じられないかもしれませんが、その「歌」も間違いなくリストなのです。

リストは後に合唱曲も数多く作曲しており、その中にベートーヴェンカンタータもある訳ですが、リストは尊敬していた人だけを研究するのではなかったという事なのです。少なくとも、この若い時代に置いては、様々な要請だけではなく、自身の作曲のための編曲という事が言えるでしょう。

この素晴らしい仕事ぶりは、後年クライアントからの要請と自身の表現とのはざまで悩むことにつながりますが(例えば、ピアノ協奏曲第1番の初演)、この基礎があったればこそ、リストはピアニストだけではなく、交響詩というジャンルの確立に資力した、シンフォニストという側面も持つ事になったと言えるでしょう。それはリストが表現者としてベートーヴェンを尊敬していたということからいずるものだったことでしょう。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト ピアノ協奏曲第1番、第2番
http://yaplog.jp/yk6974/archive/874

ピアノ協奏曲第1番 (リスト)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88)

リストの全体像をつかむためには、編曲ものを後ろに申し訳ないように収めるのではいけない・・・・・そんな編集者の想いがここからは伝わってきます。ヤブロンスカヤののびのびとした「歌」からは、その編集者へとリストへのリスペクトが伝わってきます。




聴いている音源
フランツ・シューベルト作曲
フランツ・リスト編曲
シューベルト歌曲編曲集1
水の上で歌う(「12の歌」G/S558/R243,No2)
あふれる涙(「冬の旅」G/S561/R246,No.6)
水小屋と小川(「6つの水小屋の歌」G/S565/R249,No.2)
彼女の絵姿(「白鳥の歌」G/S560/R245,No.8)
セレナード(「白鳥の歌」G/S560/R245,No.7)
セレナード「きけ、きけ、雲雀」(「12の歌」G/S558/R243,No.9)
挨拶を贈らん(「12の歌」G/S558/R243,No.1)
しぼめる花(「6つの歌曲」G/S563/R248,No.4)
春の想い(「12の歌」G/S568/R243,No.7)
君こそわが憩い(「12の歌」G/S558/R243,No.3)
影法師(「白鳥の歌」G/S560/R245,No.12)
糸を紡ぐグレートヒェン(「12の歌」G/S558/R243,No.8)
さすらい人(「12の歌」G/S558/R243,No.11)
わが宿(「白鳥の歌」G/S560/R245,No.3)
オクサナ・ヤブロンスカヤ(ピアノ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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