かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト ピアノ作品全集3

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、シリーズでリストのピアノ作品全集を取り上げていますが、今回はその第3集を取り上げます。

リストの若いころの名作、「詩的で宗教的な調べ」が登場します。この採り上げ方が本当に素晴らしいなあと思います。

「詩的で宗教的な調べ」は、1834年に単独作品《詩的で宗教的な調べ》 S.154として成立した後、1853年に最終稿が完成した作品で、19年にわたる作曲と改訂の後に成立した作品です。特に、後年の瞑想的な作風が若いころにすでに現出されていると言う点で、注目すべき作品だと言えます。

詩的で宗教的な調べ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A9%A9%E7%9A%84%E3%81%A7%E5%AE%97%E6%95%99%E7%9A%84%E3%81%AA%E8%AA%BF%E3%81%B9

リスト : 詩的で宗教的な調べ
Liszt, Franz : Harmonies poétiques et religieuses S.173/R.14 A158
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/2236/

全部では80分を超す大曲となっているため、この音源(ナクソス)では2つに分かれており、後半は第4集に収録されていますので、今回はその前半を取り上げます。

この第3集では第6曲までが収められており、さらにカップリングとしてさらに後年に作曲された作品3つが取り上げられています。この採り上げ方が、輸入盤だよなあと思います。

国内盤なら、「詩的で宗教的な調べ」だけを取り上げることでしょう。それはそれで便利です。「詩的で宗教的な調べ」だけを聴きたければ、そのほうがいいからです。この音源では、一旦パソコンで取り込んで、抜き出さないと「詩的で宗教的な調べ」だけを聴くことは出来ません。でも、そうなっていないのは、この音源はあくまでも全集の一部だからなのです。

「詩的で宗教的な調べ」が後年のリストらしい部分がすでに若いころに現出していた作品だとすれば、カップリングの3つも実にリストらしい作品だと言えます。死者たち S516/R183はもともとリストが作曲した同名の管弦楽作品をピアノ独奏に編曲したものですし、諦め S187a/R388は「詩的で宗教的な調べ」が最終的に成立した時期よりもう少し後の、これまた瞑想的な作品です。さらにハンガリーの神(P両手版)S543a/R214aも、リストが作曲した同名の男声合唱曲をピアノへと編曲したものです。

リストの音楽としての特徴としての「瞑想的」という「リストらしさ」のみならず、バッハ以来の伝統である編曲もリストらしさだと言えるでしょう。その二つの「らしさ」がここには集められているという事になるのです。

で、どれもリストらしい、瞑想的な作品が並んでおり、若いころに現出させていた作品は「詩的で宗教的な調べ」だけではないことを、はっきりと聴衆に訴えかけているのです。

演奏はフィリップ・トムソン。決してわが国で飛びぬけて有名というピアニストではありませんが、リストの「世界」を存分に表現しています。ppが特に深い瞑想を表現している部分だと思いますがその部分を実に丁寧に、そして柔らかく演奏しているのが素晴らしい!かつのびのびとしており、縮こまった部分がないのもいいですね。ppとffの差もしっかりとしているためダイナミックさも存在し、「詩的で宗教的」とはいいつつも、この作品群が実に人間的であることを訴えているように思います。

正確性もさることながら、それが全く嫌味ではなく、むしろ演奏するうえで基礎となることを表現しており、唸ります。これがもともとは廉価だったなんて・・・・・

こういった音源は本当に、様々なことを考えさせられますね。




聴いている音源
フランツ・リスト作曲
詩的で宗教的な調べS173/R14
�@第1番:祈り
�A第2番:アヴェ・マリア
�B第3番:孤独の中の神の祝福
�C第4番:死者の追憶
�D第5番:主の祈り
�E第6番:眠りから覚めた御子への賛歌
死者たち S516/R183
諦め S187a/R388
ハンガリーの神(P両手版)S543a/R214a
フィリップ・トムソン(ピアノ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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