かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ベートーヴェン 交響曲第10番

今月のお買いもの、平成27年12月に購入したものをご紹介します。今回はディスクユニオン新宿クラシック館にて購入しました、ベートーヴェン交響曲第10番です。

え、ベートーヴェン交響曲は9つしか作曲していないですよねという、ア・ナ・タ。ええ、完成させたのは確かに9つしかありません。しかし、スケッチで残されていたものがあるのです。それが、発見されたのが1988年でした。

当時、私は興奮しました。ベートーヴェン交響曲は9つだと思っていましたから。それが、もう一つ有ったのだと。日本初演に当たる読売日響の演奏は、VHSに録画したものです。

その録画も、もはや動くかどうかという段階になりました・・・・・となると、やはりCDで持っておきたいなあとは、以前から思っていました。ただ、実は日本初演の読売日響の演奏は、テンポ感も素晴らしく、軽めで、できればその演奏が欲しいと思っていたので、このアルバムがあるのは以前から知っていながら、手を出さないうちに、店頭から殆ど見なくなってしまいました。一時のブームが去ったってやつですね。

今月はすでに第九3つでディスクユニオンでの買い物は済んだはず、だったのですが、野暮用で再びディスクユニオンへ行くことになりました。その時に見つけたのがこのCDです。まあ、この段階なら買っておこうかな、と。

ベートーヴェン交響曲第10番はいくつか復元がありますが、私がチョイスしたのはオーソリティであるバリー・クーパー博士が再現したものです。

交響曲第10番 (ベートーヴェン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC10%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

幾つか再現がある中で、クーパー博士は実に誠実な仕事をしたと思っています。自分は学者であるという限界を認め、ベートーヴェンの手法を定量調査したうえで、その範囲内での復元に務めたからです。つまり、モツレクのように、「作曲」がなされていないという点が、最も評価される点です(だからと言って、私はモツレクの「作曲」、つまりジュスマイヤーが付け足した部分も高く評価しています。実際、モーツァルトが指示を出していると言う点もあります)。

それで復元された作品は、何ともふくよかで喜びに溢れて居ることでしょう!ベートーヴェンは第7番を作曲した以降、作品に深みがさらに加わり始めるのは、順番に聴いていきますとよく分かることですが、この第10番では第九で試したことをさらにコンパクトにしながらも、絶対音楽の中に落とし込み、新しい地平を切り開いています。つくづく、完成されなかったのが惜しいなあと思います。

このCDには、クーパー博士の講演も収録されており、日本語訳も、そしてピアノでの実演もついていますから、博士がどの点に注目して復元して行ったのかがよく分かります。その中でも、特に注目すべき点は、序奏の部分では不協和音を使い、調性があいまいになっているという事です。これこそ、私が述べた「第九で試したことをコンパクトに」という点です。第九の第1楽章の、もやもやというような開始。あれをもっとコンパクトにしてファンファーレとしてつかい、序奏とする・・・・・なんと独創的!

ベートーヴェンは死ぬの其間際まで、音楽の可能性を信じて、新しいものを生み出そうとしていたことがよく分かるのです。となると、これを一過性のものにしてしまうのは、惜しい気もします。

ただ、演奏はあまりにも重々しくて、弱冠生き生きとしたものに欠けます。変ホ長調という、英雄でも選択された調性であれば、もっと生き生きとしてもいいよなあって思うんです。その点、クーパー博士自身が指揮した読売日響は、とても生き生きとした演奏を聴かせてくれます。ロケーションも東京芸術劇場なので、CDによる販売を希望したいですね〜。結構日本のオケもいい仕事やっているんですよ。

第10番の復元は、そのスケッチの数により第1楽章だけに終わっていますが、もしどこかでスケッチが見つかれば、全楽章の復元のあるかもしれません。その時に、主調を使う第1楽章の演奏で幾つかのヴァージョンがあることはとても大切なことだと思うからです。ベートーヴェンは死ぬ間際、弟子たちにこう残したからです。「第10番のスケッチは全楽章できている」と。ただ、死後該当する者はなかったとされています。しかし、それが本当かどうかなど、実際に見ていないので誰にもわかりません。史実では残されていないことになっていますが、ただ、新たな史料がでるのが歴史学というのものです。それは音楽史に限らず、私たちの国の歴史、日本史でもよくあることなのですから。

その時のために、この演奏だけではなく、読売日響のものも販売するということは、決して悪いことではないと思うのですが・・・・・これほど日本日本とさわいでいるにも関わらす、そういった動きがないことは、とても残念だと思います。あまりにも軽薄に映ってしまうのです。


さて、このエントリは今年最後のエントリとなりました。今年一年は、本当にきつい一年でした。

仕事上では新たなことにチャレンジした一年でした。そのために、このブログのエントリも、遅れがちになったり、お休みをいただいたりという事の連続でしたが、それでも、大みそかにエントリを通常で上げることができることは、何よりの喜びです。

皆様に良き年が巡りますよう、祈りながら、ことしのエントリを書く筆をおきたいと思います。




聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第10番変ホ長調(バリー・クーパー博士完成版)第1楽章
ウィン・モリス指揮
ロンドン交響楽団
(ファンハウス 18ED-7040)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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