かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:第九吹奏楽版

今月のお買いもの、平成26年10月に購入したものをお届けします。今回は山野楽器銀座本店にて購入しました、ベートーヴェンの第九吹奏楽版を取り上げます。

先日、面白い演奏を買いましたと述べましたが、それが実はこれです。なんと、第九をオケではなく、ブラスバンドでやってしまおうというものなのです。

この手のものを、このブログではピアノ版(正確にはワーグナー版)と弦楽五重奏版をご紹介してきておりますが、それ並みのキワモノ、という事になります。

つまりは、まあ、私の珍盤収集癖が再燃したという事です・・・・・ハイ。

最近、第九でそれほど珍しいものはなくなりました。殆どやり尽くされていると言っていいでしょう。その中でも、ブラスバンドというのは私も想像していませんでした。このブログでもブラスバンドの演奏は取り上げているにも関わらず、です。「マイ・コレ」の第1回目は陸海空各自衛隊音楽隊でしたし、「ブラバン甲子園」も取り上げているにも、です。

ですので即買いです。果たして、どんなものなのか?

演奏しているブラスバンドは、ブリッツ・フィルハーモニック・ウィンズ。所謂シンフォニック・バンドと言われるブラスバンドです。

http://blitz-winds.org/

まず第1曲目として、彼らがブラスバンドであるという意味を込めて、リードの「アルメニアン・ダンス・パート�T」が収録されています。リードは交響曲も作曲したアメリカの作曲家で、元々はアメリカ空軍のブラスバンドの指揮者でした。そんな彼がアルメニア民謡を元にして作曲したのが2つのアルメニアン・ダンスで、そのうちの第1集がパート1です。

アルメニアン・ダンス (リード)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%A1%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B9_(%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89)

アルフレッド・リード
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89

吹奏楽曲というのは、特にffにおいて力強い長音が特徴的であり、印象的です。その特徴がいかんなく発揮されている作品で、なるほど、長くブラスバンドに愛される作品であるなあと思います。

2曲目に、第九です。実は第九の場合、当然編曲されているわけなんですが、4楽章それぞれ編曲者が異なります。しかし、基本的に第3楽章までは素晴らしい編曲だと思います。それゆえに、これはブラスバンドは苦労するよね、と納得しる部分も多々あります。

それが、上で述べました、力強い長音が、ほとんどないという点なのです。勿論、元々の管楽器のパートにはないわけではありませんが、当然ヴァイオリンやヴィオラなどの弦楽器パートも管楽器になるわけで、そこで問題が発生するわけなんですね。そこで何が起こるのか。

当然ながら、普段吹奏楽で演奏するような、流麗な旋律線など、ないという事です。特にヴァイオリンパートの音で顕著で、苦労して編曲され、演奏しているなあと感心します。それでも、第3楽章まではさすがシンフォニック・バンドです。

問題は、第4楽章にあります。合唱が出るまではいいんです、ええ・・・・・

恐らく、編曲する人も、そして演奏する人も、合唱が入るとどういうことになるのかということに、慣れていないのではないかなあと思います。私は歌った経験があるためによく分かるんですが、基本歌というのは息を使うので本来は管楽器と一緒なんです。ですから、音符をきちんと伸ばしきるというのは自然とやるんですね。しかし、なぜかブラスバンドがそれが出来ていないんです。

まるでヴァイオリンを弾くときに弓を立てるように、音が細かく切れてしまうんです。それはそれでとても上品で、アンサンブルはさすがプロなので素晴らしいのですが、合唱団との整合性が若干取れていない部分が出てきているんですね。恐らく、指揮者やバンドが、合唱団と歌うということに、慣れていないせいではないかと思います。1曲目のアルメニアン・ダンスではできているので。

甲子園のアルプススタンドから音を発するとき、当然ですが1塁側だろうが3塁側だろうが、ホームベースにいる選手まで音を飛ばさなければなりません。そうでなければ応援している意味がないからです。そのためには、音を最期まで伸ばしきる必要があります。それと同じことを、合唱が参加すればやる必要があります。声援というのは時として、楽器よりも強いので・・・・・

甲子園のアルプススタンドは、私も2度ほど坐ったことがありますが、人数が多ければ多いほど、本来人の声よりも強い音が出る筈の楽器が、人声にかき消されることがあります。それと同じことが、実は第九には起こり得るのです。

第4楽章第208小節以降、合唱団が「freude!」と歌い始めるあたりから、オケでさえ怯むことがあるのです。そういった演奏を私も幾度か経験してきましたし、コンサートやCDで経験もしてきました。それと同じことが起っているのです。

合唱団は高津市民合唱団。川崎では名の知れた、比較的実力のあるアマチュア合唱団です。

http://www.geocities.jp/coro_takatsu/

カルミナなど、大曲を何度も歌ってきている合唱団です。そのため、第九でも力強い演奏を聴かせてくれます。ところが、ブラバンは上品なんですね。そこに齟齬が生まれてしまっているわけです。で、この場合、どちらかがどちらかに合わせる必要がある訳なんです。それは合唱曲に慣れていないとなかなかすぐできるものではありません、たとえプロであってもです。いつもの癖が前面に出てしまうものです。

恐らく、この演奏でも最初そうなってしまったように思います。第九は第4楽章オケ部分はかなり動き回るのです。それを演奏するのに必死で、そこで合唱と齟齬が生まれたのだろうと思います。それはそれで、素晴らしい努力ですし、非の打ちどころがありません。しかし、プロの団体なのです。

こういったケースでは、やはりプロが合わせる必要があるでしょう。アルメニアン・ダンスのように力強く伸ばしきっていいと思います。それさえあれば、この演奏は完璧です。素晴らしいアンサンブルです。一番最後の「抱きあえ、いく百万の人々よ!」では、力強い演奏がなされていますので・・・・・

全体的には、端正で推進力のある演奏だと思います。練習番号Mの部分では光悦の表情すらあります。

もしこれが、陸上自衛隊中央音楽隊だったら・・・・・と想像してしまいます。あるいは、佼成ウィンドではどうでしょう?吹奏楽での第九は、もしかするともっと日の目を見るかもしれません。この演奏を機会として、もっと演奏されてもいいと思います。




聴いているCD
アルフレッド・リード作曲
アルメニアン・ダンス パート1
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」吹奏楽版(福田洋介、石毛里佳、小野寺真、三浦秀秋編曲)
吉田珠代(ソプラノ)
三輪陽子(アルト)
与儀巧(テノール
大沼巌(バリトン
高津市民合唱団
神奈川県立湘南高等学校
神奈川県立大和西高等学校
神奈川県立海老名高等学校
相模原市混声合唱
松元宏康指揮
ブリッツ・フィルハーモニック・ウィンズ
(Wako Records WKCD-0069)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村