かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト ピアノ小品全集6

神奈川県立図書館所蔵CD、モーツァルト全集からピアノ小品をご紹介していますが、今回はその第6回目です。再びソナタが登場します。それも、連弾。

連弾用のソナタモーツァルトは書いていまして、それがここに紹介するものになります。ほぼ作曲順に並んでいますが、一部前後しているものがあります。

今回と次回の2回にわたって、モーツァルトの連弾用のピアノ・ソナタに触れていきたいと思います。

さて、この第6回目でご紹介するのは、ケッヘル番号で言いますと収録順に(19b)、K.381(123a)、K.358(186c)、K.448(375a)、K.426、そしてケッヘル番号が付いていないラルゲットとアレグロ 変ホ長調です。

実際には、ラルゲットとアレグロ 変ホ長調はK.358とK.448の間に入る作品ですが、完成形を重視しているのだと思います。

この内、学者からは(19b)に関しては、チェンバロ演奏用であるとの指摘があります。確かに、かなりギャラントですし、曲全体を通して動き回る感じがするのは、チェンバロ演奏を意識しているようにも見えます。

それ以外は、緩徐楽章はゆったりとしているものが多く、フォルテピアノで演奏することを念頭に置いて、場合によってはチェンバロでもいいという作品となっていると思います。ただ、時代が下るにしたがって、最初からピアノ演奏を主として作曲されているものが多くなっていきます。

こういう、比較的時系列で並んでいる全集を聴くと言うのは、そういった「発展の歴史」を辿ることであり、史学科出身の私としてはとても興味深く、また喜びを感じる瞬間です。演奏も、あまりリットせず、モーツァルトの息吹というものを十分に感じさせてくれます。

ここで、リット、つまりリタルダンドをかけるということに触れておく方がよいかと思います。モーツァルトの時代までは、リタルダンドを曲の最後で書けないことが原則です。勿論、全くかけないのかと言えばそうではないんですが、例えばアレグロの曲があるとして、それにリットをかけるということはあまりしません。かけるのは緩徐楽章など、限られた場合です。

古典派の時代、まだブレーキのある乗り物がないんです。ですから、段々遅くなるという概念が音楽にありません。馬車はいきなり止まりますし、ですから音楽もいきなり止まるということが実に普通なんです。

現代では、乗り物でいきなりブレーキをかけると言うことは危険ですらありますから、前からブレーキをかけて段々遅くするので音楽がそうであってもさほど違和感がありませんが、古典派の時代ではかなり違和感があるということになります。

リットしないからあまり表現力がないと言ってしまうと間違いになってしまいます。リットをかける場所、かけない場所が適切なのかということが古典派の作品の演奏における美意識であり、それが演奏上どうなのかが、一番大切だと思います。

この演奏ではそれが適切です。勿論、アレグロでも遅くなっている部分もありますが、それはきちんと小節でいったん止まって、テンポを変えているので問題ないのです。それが、古典派の時代の「スピード感」ですから。

勿論、現代においては何でもアリですから、リットをアレグロ楽章でもかけていいと思いますが、ただそれで演奏に失敗してもそれは演奏家が負うべきリスクです。リットをかけない場面でリットをかけて演奏として成立するにはどうすればよいのか、試行錯誤をしていく必要があるでしょう。

ここでご紹介している作品は、基本的に二人いないと演奏が成立しません。いろんな議論をして、共通の意識に至らないと、いい演奏は難しく、この演奏ではそれがきちんとできているということになります。そして二人とも、基本的に古典派はリットをかけないという共通の意識の上、アンサンブルが成立しています。

こういった作品があまり演奏されなくなったということが、もしかすると後期ロマン派から20世紀音楽に至った、現代の必然なのかもしれません。ただ、私としてはこういった作品が演奏されることこそ、古典派の芸術の理解につながるのではないかという気がしています。




聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
ソナタ ハ長調(19d)(4手)
ソナタ ニ長調K.381(123a)(4手)
ソナタ 変ロ長調K.358(186c)
ソナタ ニ長調K.448(375a)(2台)
フーガ ハ短調K.426(2台)
ラルゲットとアレグロ 変ホ長調(2台)
イングリット・ヘブラー(ピアノ)
ルートヴィヒ・ホフマン(ピアノ)
イェルク・デムス(ピアノ)
パウル・バドゥラ・スコダ(ピアノ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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