かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:プーランク 鍵盤楽器のための協奏曲集2

今月のお買いもの、大阪ワルティクラシカルセカンドハンドで購入しましたものをご紹介しています。今回は2枚組のプーランク鍵盤楽器のための協奏曲集から2枚目です。

この2枚目は、一枚目のオルガンやクラヴサンから時代的に一気に下り、現代ピアノのための協奏曲が並びます。こういった編集は、さすがエラートですね。なかなか国内レーベルではやってくれない編集です。

CDはまだまだ編集面でやれることがたくさんあると思います。このCDはそれを明確に私たちに教えてくれています。

1曲目が2台のための、そして2曲目が1台のためのピアノ協奏曲ですが、どちらも全体の構成として、時間配分は古典派を踏襲しているという点に特色があります。そういえば、私も過去にたとえばシマノフスキなど20世紀の作曲家を取り上げていますが、協奏曲の時間配分は古典的な部分もあったことに気が付かされます。

この時代、時間配分などは自由ですが、だからこそ、古典派的でもいいという考え方もアリなわけで、それはまっすぐ現代音楽へとつながっているように思います。ラディカルな無調音楽だけが現代音楽ではないことはわたしよりもご存知の方は多いかと思いますが、それは20世紀からの特徴であるのだなと気が付かされるのです。

音楽的にもそれは言えることでして、2台のためは不協和音を多用し、1台はもう少し旋律的です。こういった点にも、20世紀音楽の特徴を見ることが出来ます。その出発点として、私はどうしてもシェーンベルクの12音階だけではなく、新古典主義音楽を挙げなくてはならないだろうと思います。この二つの潮流が、今の音楽シーンにすべてつながっているからです。

クラシックでは無調音楽がずいぶんともてはやされていますが、実際に市場で評価されているのはクラシックではなくJ-POPなどの旋律に重きを置く音楽です。だからと言って無調音楽がだめではないと私は思いますが、しかし多くの人の心をとらえる、或いは動かすのは、残念ながら旋律線がはっきりしている音楽であることは間違いありません。ただ、だからと言って無調的な不協和音を否定するのも、私は違うと思います。

実際、ここでは一番最後の一楽章形式の「オーバード」も含め、なぜか色彩感にあふれています。しかし、音楽は印象派とも言い難いもので、様々な音楽史の蓄積が一気に解放されているような音楽です。それが音の多様性を生み出し、一言でいえば「楽しい音楽」を形成しています。人の様々な感情というか、表情というものが一つに結実し、芸術へと昇華されたものと言えるでしょう。

20世紀の音楽は、このように複雑で、だからこそなかなか人気が出ないのだと思いますが、しかし一つずつ解析していくと、がぜんおもしろくなるのが特徴だと言えます。だからこそ、20世紀から現代にかけての音楽は、私たちが寛容の精神をもって、粘り強くつきあう必要があるでしょう。

勿論、かく言う私もまだ食わず嫌いの作曲家や作品もあります。しかし、それを理解できないと言って拒否するのではなく、取りあえず距離を置いて、じっくりと攻めてみるというのも、スタンスとしてアリだろうと思っているのです。特にプーランクの音楽は私にそれを常に教えてくれる作品群です。

このピアノ協奏曲群は旋律線が比較的はっきりしているものが多いのですが、これが合唱曲になりますととたんに不協和音ばかりになります。しかし、構造面や構成面などに注目しますと、発見が多く、私に今まで欠けていた視点をはっきりと教えてくれます。ある意味、プーランクはわたしにとって20世紀音楽を照らす灯台のようなものです。

プーランクの音楽が20世紀音楽を「すべて」」代表するとは思いませんが、多くの特長を兼ね備えているとは思います。その中で、彼の個性である諧謔性や高貴さなどが前面に押し出されています。逆に、それが一切なかった「人間の顔」は、プーランク反戦への想いが込められたものであると、このピアノ協奏曲からひしひしと伝わってくるのです。歌詞だけではなく、音楽的もなのだということです。それは、さすがに私もこのCDを聴くまでは理解できなかった点です。

それだけ、20世紀の音楽は複雑なのだということです。複雑と言えばショスタコーヴィチがすぐ挙げられると思いますがそれだけは決してないということを、私はまるでこのCDでがつーん!と頭を殴られたかのように教えられたのです。

演奏は極めて端正ですが、それは国際色豊かだからこそ実現できたのかもしれません。いや、フランス人のみでも可能だったでしょうが、外国人の視点が入ってくることによって、一歩引いてみてみることが出来るからで、「情熱と冷静の間」のバランスが絶妙です。そのことが、前述しましたが、色彩感と様々な表情を絶妙に表現できていることに繋がっているのだと思います。

20世紀の音楽はどれも理知的で、だからこそわかりにくい部分も多いのですが、俯瞰すると途端に見えてくることが多いと私自身は思っています。それをこのCDでは、自国の演奏家だけに頼らないということで実現しています。こういったことは日本の作品でもたまにあるので、いい演奏は食わず嫌いなしに聴くべきだと改めて思います。

こうなると、プーランクの作品はもっと聴きたいなあと思う昨今です。



聴いているCD
フランシス・プーランク作曲
2台のピアノのための協奏曲ニ短調
ピアノ協奏曲
オーパード」(舞踏協奏曲)〜ピアノと18の楽器のための〜
フランソワ=ルネ・デュシャーブル(ピアノ)
ジャン=フィリップ・コラール(ピアノ、2台のための)
ジェイムズ・コンロン指揮
ロッテルダムフィルハーモニー管弦楽団
(エラート WPCS-12266)



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