かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:牛込の獅子舞1

神奈川県立図書館所蔵CD、今回から2回にわたり横浜北部の民俗音楽である、牛込の獅子舞を取り上げます。牛込獅子保存会の演奏です。

牛込とは、現在の横浜市青葉区美しが丘やあざみ野、新石川と言った地域の旧名です(間違っても現在の東京都新宿区ではありません)。東急田園都市線たまプラーザ駅と言えば、全国的にはわかりやすいのではないかと思います。

え、たまプラーザって、おしゃれな町でしょ?って思いますよね。ええ、確かに。しかし、そのおしゃれな町が昔からそうであるはずなんてありません。きちんと伝統文化もあるのです。その代表的なのが、牛込の獅子舞なのです。

青葉区文化財/牛込の獅子舞
http://www.city.yokohama.lg.jp/aoba/70guide/bunkazai010.html

そもそも、青葉区の旧牛込地区は、芝増上寺の裏鬼門とされ、かつては徳川二代将軍秀忠の正室、江姫の化粧料地であり、秀忠公ともども位牌が収められた寺も存在する土地で、歴史もきちんと存在するのです。江戸だけではありません。中世に於いてもたまプラーザ駅周辺は重要な交通路で、鎌倉街道も通っている土地柄なのです。

http://hayabuchi.chips.jp/hayareki1.html

そういった歴史を背景に、この牛込の獅子舞は成立しています。どんな形では正確な伝承を欠きますが、恐らく300年ほど前に今の川崎市高津区あたりから移入されたと言われます。

実は、この獅子舞が舞われるお祭りは二つの神社にて行われますが、その間を神輿が行き来します。そのルートが、わが家の近くであるので、以前から興味を持っていました。祭りの時期になりますと、獅子舞のお囃子を練習する音が聞こえ、ああ秋が来たんだなあと思う、いわば風物詩です。それが図書館にあると分かり、即借りることとしたのです。

まずこの第1集では、解説のトラックと前半が収められています。使用楽器はひきりきと太鼓で、それに先導、あるいは合わせて獅子が舞われるのです。太鼓は獅子が持ち、まさしく叩きながら踊るので当然ともいえます。

前半はまず、道行と言って、獅子が神社へ入ってくる場面から始まり、祝詞を述べ、五穀豊穣、悪霊や疾病退散を願って舞い始めるところで終わりますが、私にとっては聴き慣れた旋律が支配します。クラシックと異なりアインザッツにこぶしが付き、それが合わさって見事なアンサンブルを形成します。それが郷土の結束にも繋がる、重要なことなのです。

もともと、ヨーロッパでもオーケストラの前身のアンサンブルには、そういった結束という意味もありました。それをいまだに残している例だと言えるでしょう。それがなんと、ごく身近なところに存在するなんて・・・・・

どんな舞をするのかは、以下ののブログに詳しく出ています。

楽の祭り見物
横浜青葉区 驚神社 牛込の獅子舞 2009
http://raku-sanpo.cocolog-nifty.com/maturi/2009/11/2009-6acb.html

各曲には名前がついていまして、この前半には岡崎というものが出て来ます。牛込には関係ないのですが、それはやはり他の土地からの移入を想像できる言葉です。後半には二宮というものも存在します。

特に祝詞をあげる場面では、この獅子舞が明らかに神への奉納であることがはっきりと謳われ、それを合図に演奏が開始され、舞も始まります。

それにしても、編成面から見ますと明らかに雅楽文楽、或いは浄瑠璃など伝統的な音楽に基づいていることがよく分かります。だからと言って私たち現代人に理解不能かといえば、編成からは興味深い点が見え隠れします。マーチで通奏低音の役割を果たすのが小太鼓であるように、牛込の獅子舞でも太鼓が通奏低音の役割を果たしており、それにひちりきが合わさって、舞が始まるのです。

つまり、舞と音楽は不可分で、常にセットなのです。ヨーロッパにおける世俗音楽の成立と同じ編成であることに驚かされます。これは何も牛込の獅子舞に限ったことではなく、祭囃子では特段おかしなことではありません。つまり、日本は江戸期によって、西洋音楽受容の準備ができていたということなのです。江戸期は音楽的に見るべきものはないと言われますが、私はこれを聴きますとそんなことはないと断言します。こういった祭囃子こそ、西洋音楽受容の基礎をはぐくんだと言っても差し支えないでしょう。特に、舞曲はバロック音楽にも通じます。

ヨーロッパでは音楽史を踏まえて、19世紀から20世紀にかけて、まず後期ロマン派の流れから国民楽派が成立し、さらに民謡収集の動きが生まれます。それはやがて新古典主義音楽へと結実し、その後民俗的、或いは民族的な様々な音楽が成立することとなりました。勿論その中には、戦前から戦後の日本のクラシック音楽も含まれます。

そのためこの音源は、特にカントルーブの「オーヴェルニュの歌」やバルトークなどの民謡収集の流れに私が興味を持ったからこそ借りたという側面もあります。そしてそれはやがて、新古典主義音楽への興味へとつながって行ったのです。その点で、私の中ではとても重要なライブラリになっています。



聴いている音源
牛込の獅子舞
牛込獅子保存会



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