かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:グリエールとヒナステラのハープ協奏曲

今月のお買いもの、ようやく9月の半ばになりまして8月に購入したものをご紹介することができます。まずはグリエールヒナステラの協奏曲が入ったアルバムです。銀座山野楽器本店にて2394円にて購入です。

このCDを選びましたのは、まずヒナステラへの興味が沸いていたこと、そしてグリエールもいつかは聴いてみたいと思っていた作曲家であったこと、そして、後期ロマン派以降の作曲家の作品では珍しいハープの協奏曲であること、さらにグリエールのもうひとつの協奏曲は、「人声」とのものであるという点です。

いずれにしましても、このCDはどちらかといえば、珍盤趣味という視点が強いと思います。しかし、音楽は決して珍曲というほど珍しいものではありません。

まず、グリエールという作曲家からご紹介しましょう。19世紀から20世紀にかけて活躍したロシア(旧ソ連)の作曲家で、出身はロシアではなくウクライナの人です。特に旧ソ連ではそういった人が多く、たとえばハチャトウリャンもそういった作曲家です。ただ、グリエールが幸せだったのは、スターリン時代にソ連当局から弾圧を受けなかったという点でしょう。その当時のグリエールの音楽が無国籍風であったためですが、それを「社会主義レアリズム」と受けとられたことがまぬがれた一因でした。まあ、こんなところにも旧ソ連という国家がまるで平安期日本の「院政」期における「恣意統治」とよく似た形が見えるのですね。

レインゴリト・グリエール
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AB

それはさておいて、グリエールの二つの協奏曲がまず並んでいます。第1曲目がハープ協奏曲、そして第2曲目がコロラトゥーラ・ソプラノ協奏曲となっています。第2曲目こそ、つまりは「人声」との協奏曲であるわけですが、歌詞がついているのではなくて、ヴォーカリーズとオーケストラとの競演です。コロラトゥーラ・ソプラノ協奏曲は2楽章制になっていて形式的には古典的とは言えませんが、オケとソリストの掛け合いという点では、さほど冒険をしているわけではなく、むしろとても保守的な部分すらあります。コロラトゥーラ・ソプラノ協奏曲は作曲が1943年ですので、新古典主義音楽に影響を受けたという可能性は否定できない作品でしょう。ハープ協奏曲は古典的な3楽章制で、なおかつオケとソリストののバランス、或いは掛け合いというものを楽しむ作品となっており、いずれも同時代の後期ロマン派や現代音楽の協奏曲とは一線を画しています。

最後のヒナステラのハープ協奏曲は、まさしくヒナステラらしい、ハープを打楽器として使うという意欲的な作品です。しかし、かといってピアノと同じように常に打楽器としてだけ使うというのではなく、ハープの特徴でもある流れるような音もきちんと採用し、この作品はあくまでもハープと管弦楽のための協奏曲なんですよと言いたげです。

アルベルト・ヒナステラ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%92%E3%83%8A%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A9

このアルバムを聴くだけでも、現代音楽とはなんぞや?という問いが自らに浮かんできます。不協和音?その多用という点ではそう言い切ってもいいでしょう。しかし、それだけではない沃野が拡がっているということを、このアルバムはしっかりと主張しているように思います。各々、新古典主義音楽の作曲家とは必ずしも言い難い二人ですが、影響は受けているとはっきりと言えるでしょう。調性や形式をぶち壊すこともせず、旋律も大事にする点は、各々共通するでしょう。ただ、ヒナステラに関してはより新古典主義音楽の影響下にあると述べていいのではないでしょうか。列する作曲家とは言い難いですが、影響はかなり受けているとは言えると思います。実際、ハープ協奏曲は見かけ以上に形式的には古典的です。

指揮はヒコックス、オケはシティ・オブ・ロンドンシンフォニア。とくれば、レーベルはシャンドスなんですが、聴いている範囲では、オケの編成は決して大きくなないと思われます。それはおそらく、ハープやソプラノというソリストに合わせたものであろうと思いますし、実際譜面がそうなっているのだと思います。オケとソリストともに音の強弱で同期していまして、これは明らかに古典派の協奏曲を念頭に置いています。それが演奏から見出せるというのは、誠に素晴らしい効果であると思います。けっして楽譜通りに演奏できるわけではない中で、できるだけ楽譜に込められた思いというものを浮きだたせようとしているこのアルバムは、高く評価すべきだと思います。

それにしても、国内盤では決してこういったアルバムでないですよね・・・・・二人とも決して有名とは言い難い作曲家ではありますが、ヒナステラは今ではかなり有名になってきていますから、もっと国内盤でも取り上げていいように思いますけれど・・・・・



聴いているCD
レインゴリト・グリエール作曲
ハープ協奏曲作品74
コロラトゥーラ・ソプラノ協奏曲作品82
アルベルト・ヒナステラ作曲
ハープ協奏曲作品25
レイチェル・マスターズ(ハープ)
アイリーン・ハルス(ソプラノ)
リチャード・ヒコックス指揮
シティ・オブ・ロンドンシンフォニア
(Chandos CHAN9094)



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