かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:BCJ バッハカンタータ全曲演奏シリーズ16

今回のマイ・コレは、BCJのバッハ教会カンタータ全曲演奏シリーズの第16集を取り上げます。収録曲は第194番と第119番です。

え、消防ですか?って、アナタ・・・・・違うがな〜><

まあ、消防という公的な部分に目を付けたことは素晴らしいですねえ。実は、この2曲はバッハが教会以外からの依頼で作曲されたものだからです。しかも、そのうち119番はまさしく、ライプツィヒ市からの依頼だったのです。

以前、もっと後のシリーズにおいて、市参事会の交代式において演奏されたカンタータを「今月のお買いもの」で取り上げているかと思います。この第119番はその第1曲目なのです。では、世俗カンタータなのではという疑問が、少しバッハの音楽を知っておられる方はわいてくるかと思いますが、テクストが聖書にもとづいているため、教会カンタータに属します。

また、第194番は珍しく初演はライプツィヒではなく、その近郊のシュテルムタールで初演され、その新しい教会の献堂式用として作曲されました。いずれも1723年11月にほとんど間をおかずに演奏されています。

つまり、このシリーズは1723年の教会歴によらない教会カンタータを取り上げているということになります。ということは通常は用途として一回きりということが多いのですが・・・・・

実は、どちらも古いカンタータをまた使いまわしているようで、第194番はケーテン時代の、恐らくその領主のために作曲した世俗カンタータが元であろうとされています。第119番も全部ではないですが一部管弦楽曲から転用されいるといわれていまして、その最たるものが第1曲目のフランス風序曲です。

規模としては第194番のほうが大きいのですが、よりバッハらしいと思うのは私は第119番だと思います。119番はエルサレムの民が神を讃える内容です。それでライプツィヒと関係がないなどと考えるのは浅はかです。実は、エルサレムライプツィヒを指すのです。当然、そこで主をほめよ!と謳われているのは歌詞ではエルサレム市民ですが実際にはライプツィヒ市民を意味するのです。

しかも、第119番はフランス風序曲で始まりますが、それにも意味があります。ルイ14世の時代のフランスでは、王と随身がオペラなどの観劇で入場するときには、必ず「フランス風」といわれる付点が付いた音楽が付いたのでした。第119番が市参事会の交代式用であるということを思い起こしてください。バッハは市参事をフランスの王とその随身になぞらえたのです。

奇しくも、119という数字は、日本では消防、特に救急車を呼ぶ時のコールサインであり、まさしく公的な部門の代表でもあるわけですが・・・・・

バッハの公(おおやけ)のために仕事をするという意識もさることながら、私はこのレトリックが、時が下ってショスタコーヴィチまでに受け継がれていることに驚きを隠しきれません。ショスタコといえば、ともすれば左翼と批判されうる作曲家ですが、しかし彼は体制を批判しつつ身を護るために、さまざまなレトリックを使っています。そこに、バッハが使ったのと同じ「なぞらえ」や、あるいは「使いまわし」「コラールを引用するのと同じように他の作曲家から旋律を引用する」など、実にバッハと同じような作曲技法を使っています。

私はこれに、伝統を感じるのです。バッハの時代、決して自由というものがあったわけではありません。同じように、ショスタコーヴィチの時代も決して自由があったわけではありません。そこに、ふたりの音楽に似たものがある理由があるように思います。

実際、ショスタコーヴィチはバッハの対位法も研究しています。バッハからは、いろんな音楽家のいろんな側面が見えてくるものなのです。それだけ、後世の作曲家に多大な影響を与えているといえるでしょう。

バッハは宗教曲ばかりで・・・・・え?では、ブランデンブルクは?フーガの技法は?ゴルトベルクは?様々な協奏曲は?

バッハをばっはっはと笑うことは、その本質を見失いかねないのです(って、ダジャレ言っても説得力ないかもしれませんがー)。

さて、演奏面では、珍しくアルトに女声を使っています。これがなぜかは解説には触れられていませんが、たまにはこういった現代的な編成もいいものだと思います。違和感はありませんし。もしかすると、この2曲だからこそ、女声を使ったのかもしれません。ただ、その後はカウンターテナーを使っていることを考えますと、この時はたまたまだったのかもしれません。



聴いているCD
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第194番「こよなく待ち焦がれた喜びの祝いよ」BWV194
カンタータ第119番「主をほめよ、エルサレム」BWV119
野々下由香里(ソプラノ)
緋田芳江(ソプラノ)
キルステン・ソルク=アヴェラ(アルト)
桜田亮(テノール
ペーター・コーイ(バス)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
(キングレコード KKCC-2330)



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