今月のお買いもの、5月の第2弾はアルヴェーンの交響曲全集を5回にわたって取り上げます。まずはその第1集です。
アルヴェーンという作曲家は、コアなクラシックファンであれば知っている作曲家ですが、決してメジャーとは言えません。しかし最近じわじわと人気が出てきています。
ヒューゴ・アルヴェーン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B4%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%B3
少なくとも、この第1集に収められている作品は、ウィキのこの説明こそぴったり当てはまると言えましょう。
「アルヴェーンの作品は、かなり伝統的な後期ロマン派音楽の語法を示しており、色彩的な管弦楽法やしばしば標題的な傾向、また、スウェーデンの風景を呼び覚まそうとする意欲が見出される。」
まさしくその通りだと思います。特に、後半の言葉「スウェーデンの風景を呼び覚まそうとする意欲」が強い作品が、この第1集には並んでいます。
まず、スウェーデン狂詩曲第2番「ウプサラ狂詩曲」はまさに「スウェーデンの風景を呼び覚まそうとする意欲」が強いと言えるかと思います。1907年とアルヴェーンの初期に作曲され、関係が深かったウプサラ大学建学200周年を記念して作曲された作品です。ウプサラとはスウェーデンの古都で、スウェーデンの歴史上非常に重要な役割を担った街です。其れゆえか、音楽も美しく重厚な、しかし過度に重々しくはないものとなっています。
ウプサラ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%97%E3%82%B5%E3%83%A9
昼間部で鳴り響くホルンは、狩を想像させるようなもので、その後後半のリズムを刻んでも行きます。とても美しい作品です。
2曲目の交響曲第1番は、1897年に作曲されました。ウィキではある種の卒業制作とも評価されるとありますが、それにしてはいきなり美しすぎ、またまとまりがあり、展開が素晴らしい作品となっています。「第1番」とし、さらに作品番号もついているだけあると思います。形式的には伝統的な交響曲の範疇を出ませんが、そこにはドイツ後期ロマン派の音楽がしばしばクラシック以外のジャンルから批判される「重苦しい」といったものがさほどありません。特に第1楽章はさわやかで、抜けるような青空すら見えています。
そういった作品は古典派、特にモーツァルトの作品に多く見受けられたものですが、時代が下るに従って、やや少なくなります。それをアルヴェーンは自国の自然にインスパイアする形で実現したと言えるでしょう。これは素晴らしいことです。後期ロマン派から現代に掛けては、ベートーヴェン礼讃のくびきから解放され、徐々にではありますがハイドンやモーツァルトの再評価が進んだ時代です。そういった時代の空気すら、ここには感じます。決してモーツァルトのまねではありません。すでにアルヴェーンらしさといいますか、何かに似ているようで誰にも似ていない、アルヴェーンの世界が広がっています。しいて言えば、同時代のニールセンでしょうか。
それでいて、モーツァルトの音楽によく表現されている、気品や平明さが実現されてもいるのです。そこが絶妙で、素晴らしいなと思います。
3曲目は「ドラーパ」という管弦楽のための作品です。1908年に作曲されたこれも初期の作品で、スェーデンの風景が彷彿とされるような音楽です。ここでも気品と重厚さとで美しさが現出されています。
最後の第4曲目は、黙示録カンタータから、アンダンテ・レリジオーソ。ここでは一転、重々しい音楽が鳴り響きます。しかしこれも過度に重くはなく、それもすぐに終わります。スウェーデンの済んだ空気の中で鳴り響く重厚な音楽と言えるでしょう。それだけに、暗くは感じるのですが、それほど重くは感じないのです。トンネルの中にいるのだけれども、遠くには出口が見えていると言ったような(ドライバーの方なら、新東名のトンネルといえばイメージしやすいかもしれません)。
そう、全体的に決して重苦しくないのです。重々しい音楽も聞いていて心地よく、心にすっと入ってくるのは素晴らしいと思います。
これが第2集以降もそうなのだとすれば、とても素晴らしい作曲家だなあと思います。楽しみです。
聴いているCD
ヒューゴ・アルヴェーン作曲
スウェーデン狂詩曲第2番「ウプサラ狂詩曲」作品24
交響曲第1番ヘ短調作品7
ドラーパ作品27
アンダンテ・レリジオーソ(「黙示録カンタータ」作品31から)
ネーメ・ヤルヴィ指揮
王立ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
(Brilliant Classics 8974/1)
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