かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ペンデレツキ 交響曲と宗教曲集1

今月のお買いもの、4枚目はペンデレツキの交響曲と宗教曲集で、2枚組となっています。横浜関内、プレミア・ムジークでの購入です。

さて、恐らくこのコーナー、いやブログのエントリ全体でも、ペンデレツキという名前は初めて出したと思います。現代音楽を比較的好む方には有名な方ですが、それ以外のファンにとってはおそらく名前しか知らないのではないでしょうか。ましてや、他のジャンルであれば名前すら知らないという人がほとんどでしょう。

クシシュトフ・ペンデレツキ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%88%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AC%E3%83%84%E3%82%AD

この方、御存命中で、実はこのCD、ご本人の自作自演なのです。つまり、指揮者がペンデレツキなのです。だからこそ、買い求めたものでもありました。

実は、順番の関係でまだエントリを立てていませんが、神奈川県立図書館からすでにペンデレツキの「ポーランド・レクイエム」を借りています。そのきっかけは、一昨年見た映画「カティンの森」です。そこで使われていたのが、ペンデレツキのポーランド・レクイエムだったのです。その音楽がけっこう私にとっては心に残ったものだったので、実は他の作品が聴きたいと、いいCDを狙っていました。

そんな中、ペンデレツキの管弦楽曲と宗教曲が一つにまとまっているこのCDを見つけましたので、購入に至った次第です。

ペンデレツキと言いますと、学校の音楽副読本などでは、なんといっても「広島の犠牲者に捧げる哀歌」で有名とある作曲家ですが、私がネットで検索した限りでは、それだけでペンデレツキを語るのは大変危険だなという印象を持っています。ただ、その作品が重要であることは確かなようです。それは、私自身「ポーランド・レクイエム」をきいた感想から言ってもはっきりと言えるかと思います。

ここではポーランド・レクイエムについては詳しく触れませんが、とにかくペンデレツキの音楽は一筋縄ではありません。とても現代音楽していますが、その割には作風が変わりすぎていまして、その分とらえどころが難しい作曲家でもあります。

その一つが、まずご紹介する交響曲第2番です。「クリスマス交響曲」とありますが、はっきり言って私たちが想像する明るくノー天気なクリスマスではありません。この曲は1980年に作曲されていますが、この時代のポーランドの社会状況が分かりませんと、この曲を聴くこと自体が難しいでしょう。ちょうどそれを端的に解説してくれているサイトがあります。

クシシュトフ・ペンデレツキの交響曲第2番「クリスマス」ほか
http://blog.zaq.ne.jp/Kazemachi2/article/605/

この方が買ったCDは私と違いナクソスですが、曲に関しては同じことを言っていいでしょう。開始早々、おどろおどろしい音楽が鳴り響き、クリスマスの明るく暖かい雰囲気どころか、重苦しい雰囲気が漂います。まるでこれから悲劇が始まるかのような雰囲気で、クリスマスの雰囲気は一番最後にちょっとだけ出て来るだけです。

当時のポーランド共産党政権下、自由が制限されその上貧しく人々が苦しんでいました。そういった状況の下、独立自主管理労働組合「連帯」が組織され、政府と対峙します。ちょうどその直前にこの曲は作曲されているのです。

つまり、この曲は当時のポーランド市民が置かれた状況下での「クリスマス」を表現した、いわば交響詩とも言える作品です。一楽章だけというその構成もとても意味深ですし、終始一貫して明るさはほとんどありません。きよしこの夜などが挿入されていると言いますがほとんど聞き取ることはできません。恐らく、この曲を本当に理解するためには、当時だけではなくむしろ第2次世界大戦勃発まで最低限遡る必要があるのではと思います。

次の曲の「テ・デウム」もちょうど同じ時期に作曲された曲です。同様のおどろおどろしい音楽で始まり、それが終始一貫しています。これも当時のポーランドの社会状況を考えないとわからない曲の一つだと思います。通常テ・デウムとは、賛美の音楽であって、悲劇的な要素がないからです。ですがむしろ、絶望の中で救いを求めるというような印象です。

テ・デウム
http://2style.net/misa/kogaku/kasi08.html

ここまで思い詰める音楽を書かなくてもと思うくらい、暗いのもこの曲の特徴です。サンクトゥスの部分でも光がさすようなものは全くなく、鐘が鳴り響きまるで「怒りの日」の如くです。合唱部分にはまるで人々が叫ぶようなシーンもあり、構成からすれば宗教曲とは言いかねるくらいです。しかし、共産党政権によって宗教が禁じられている中での作曲だとすれば、どこか絶望的な音楽は我国江戸時代の隠れキリシタンすら想起させます。

ペンデレツキは人によって好き好きもありますし、またペンデレツキが好きな人でも作曲時期によっては好き好きがあるようですが、80年代以降の作品二つを聴いた印象としては、少なくとも80年代以降の作品がそれほどつまらないものとは思っていません。特に宗教曲は伝統的な宗教曲を聴きこんでいる人で現代音楽も聴ける人であれば、とても面白いものなのではないでしょうか。初めは取りつきにくいかもしれませんが、背景を調べ聴きこんでいけば、少なくともこの2曲ははっとさせられる部分がたくさんあるとわたしは思います。

演奏面では、やはり合唱団でしょう。オケも素晴らしいですが元合唱団員としてはやはり合唱団を褒めずにはいられません。金切声の部分でもアンサンブルが崩れることはありませんし、それゆえに美しさが存在するという矛盾が私たちに社会の矛盾を突きつけるのです。その美しさゆえ、人々の絶望からの叫びが心に届きますし、はっとさせられるからです。十分訓練されているのだと思います。現代音楽はその和声ゆえに難しい点が多々ありますが、それを美しさへと昇華させているのは、さすがプロであると思います。



聴いているCD
クシシュトフ・ペンデレツキ作曲
交響曲第2番「クリスマス交響曲
テ・デウム
ヤドヴィガ・ガドゥランカ(ソプラノ、テ・デウム)
エヴァ・ポドレス(アルト、テ・デウム)
ウィースラウ・オックマン(テノール、テ・デウム)
アンドレイ・ヒオルスキ(バス、テ・デウム)
クラクフフィルハーモニー合唱団
ポーランドクラクフ放送合唱団
クシシュトフ・ペンデレツキ指揮
ポーランドクラクフ放送交響楽団
(EMI 50999 2 17669 2 3-1)



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