かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト ピアノ協奏曲第1番、第2番

今回の神奈川県立図書館所蔵CDのコーナーは、リストのふたつのピアノ協奏曲です。リヒテルのピアノ、コンドラシン指揮ロンドン響の演奏です。

リストは以前から興味を持っている作曲家でしたが、ピアニストという点が私の中では大きかった作曲家だったので、あまり聴いてこなかった作曲家です。しかし、管弦楽に関しては以前より興味を持っていた作曲家でして、そのため交響詩を以前借りています。この音源はその延長線上で借りたものです。

そして、この音源が、私の興味をさらに変えていくとは、この時は思いもよりませんでした。

この二つのピアノ協奏曲は、第1番が1830年から56年にかけて、第2番が1839年にいったん完成し、1861年に改訂され決定稿が出された作品で、リストの楽曲の特徴を詰め込んだ、エッセンスのような作品と言えます。二つとも基本的に単一楽章であること、リストが成立させた、交響詩的な雰囲気を持つことがその理由です。

第1番は3つ(解釈によっては4つ)に分かれる作品ですが、切れ目なく演奏されることから単一楽章とみてもいいくらいの作品です。ヴィルトォーソが強調される点はロマン派らしい作品ですが、この曲は「トライアングル協奏曲」とも言われ、当時音楽評論家ハンスリックから酷評されますが、私はその点に、この第1番の先進性を見るのです。なぜなら、トライアングルを「重厚な」管弦楽曲に採用したのは、何もリストが最初ではないからです。それはベートーヴェンであり、私が一番好きな第九の、第4楽章アラ・マルシアの冒頭に使われています。常に私が第九を評論するときに言及する、vor Gott!の直後です。

リストの業績の一つに、第九のピアノ版編曲があります。以前取り上げたワーグナーよりもリストのほうが有名ですが、それです。当然、リストはそこでスコアを見ているはずで、そこにトライアングルが使われているのを見ていないはずはありません。リストがベートーヴェン交響曲をピアノへ編曲し始めたのは実は第1番を作曲し始めた後なのですが、第1番が完成するまでに「運命」と「田園」、第7番は第1稿が出されています。第九に関してはまだですが、編曲中にひらめいたのを否定はできません。

リストはベートーヴェンを尊敬しており、彼のためにカンタータまで作曲しています。ですから、第九を意識してこの第1番が作曲されたという推測も充分考えられるのです。

それと、切れ目ない楽章構成も田園や第九を彷彿とさせます。特に主題が回帰する循環形式は、第九における変奏形式を思い出させるのに十分です。第九が変奏曲であるのを、リストは循環させたと考えれば、関連性は出てきます。

いや、循環形式の成立を考える時、こういった音楽史の経緯に目を向けざるを得ません。それをしっかりと第1番は教えてくれます。

第2番はそれがもっと前面に押し出され、もはやピアノ協奏曲ではなくピアノが入った交響詩というべき作品へと変化しています。着手は第1番と同じくらいだと言われていますが、成立は1861年と、もはや精神世界へとリストが力点を移した時期になります。そのせいか、第1番よりは内省的になっています。

ピアノ協奏曲第1番 (リスト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88)

ピアノ協奏曲第2番 (リスト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88)

特に、各々校訂していた時期は交響詩に力点を置いていた時期とあって、幻想的な楽曲となっており、それが第2番ではさらに強調されていると言えるでしょう。

この音源ではリヒテルのピアノが、こういった特徴をさらに前面に押し出しています。力強いうえに表現力が豊かなピアノと、繊細な表現までサポートしきるロンドン響。コンドラシンリヒテルのサポートをすべく、オケには余分なことをさせません。ソリストとオケがきちんとアンサンブルし、セッションもしています。ある意味それだけの演奏ですが、それがダイナミックな演奏として現出されています。

パガニーニショパンと言った、ロマン派を代表するヴィルトーソ達と並び立つリストのコンチェルトですが、繊細さも忘れてはなりません。その点をきちんと表現しているのはとても素晴らしいと思います。

この音源をきっかけに、私はどっぷりとリストの世界へとはまっていくことになりますが、それはまたお話をする別の機会にいたしましょう。



聴いている音源
フランツ・リスト作曲
ピアノ協奏曲第1番変ホ長調
ピアノ協奏曲第2番イ長調
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)
キリル・コンドラシン指揮
ロンドン交響楽団



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