かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:吉松隆 「カムイ・チカプ交響曲」吉松隆作品集4

今回のマイ・コレは、吉松隆の作品集の第4集を取り上げます。収録曲はカムイ・チカプ交響曲と、「鳥と虹によせる雅歌」で、藤岡幸夫指揮、BBCフィルハーモニックの演奏です。

このCDを買ったのはほぼ10年ちょっと前で、指揮者が藤岡幸夫だからだったのです。というのも、私が初めて第九を歌った時の指揮者が、まだ駆け出しの藤岡幸夫だったからです。

マイ・コレクション:ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/333

これは藤岡氏の初レコーディングCDですが、これを持ち続けていたからこそ、今度はプロオケを指揮している藤岡さん(と私は尊敬の念を持って呼ばせて頂きます)の演奏が聴きたいと思ったのです。

で、藤岡さんと言えば、吉松氏の作品をライフワークとしていることで有名であるわけです。

http://homepage3.nifty.com/t-yoshimatsu/

吉松隆
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E6%9D%BE%E9%9A%86

当時は、はっきり言って一藤岡幸夫ファンとして買ったこのCD、今では作曲者のHPを見ながら、うなづく部分がたくさんある自分がいます。

どちらの曲も、特徴を一言でいえば、「アンチ現代音楽」であるということです(公式HP「現代音楽撲滅協会」の項目を参照ください)。リズムを重視し、その上で不協和音を乗せていく。いや、旋律もけっこうしっかりとあり、20世紀初頭に東欧で活躍した作曲家たちに負けないクオリティを有しています。

その背景に、クラシック以外のジャンルが好きであるという点もあるでしょう。プログレが好きという点もそういった方向性に向かった一つの理由でしょうし、実は藤岡さんも同じような趣向があるので、単に高校、大学が一緒であったからという理由だけで吉松氏の作品をライフワークにしたわけではないと私は思っています(実際、藤岡さんとお話をした時にも、そのような話があったように記憶しています)。

買った当時は理解できなかったこの二つの、いや、吉松氏の作品全体ですが、今では理解できます。そう、現代音楽はあまりにも多くのものを「破壊」してしまったのです。特に「リズム」だと私は思っています。リズムを復興し、その上であたらしいものを再考しようとする姿勢は、とても共感を覚えます。

また、松村禎三氏の弟子であるという点も、この二つの作品を産み出す一つのきっかけになっているでしょう。第1曲目の「カムイ・チカプ交響曲」は正式には交響曲第1番で、1990年に作曲されました。カムイ・チカプとは、アイヌ語で「神の鳥」を意味します。その様子を5つの楽章に分け、各々英語で土、水、火、空気、虹という標題がついている「標題音楽」です。ソナタ形式などは在りませんが、吉松氏が模索していた「脱無調音楽」という姿勢が前面に出されている作品です。ブックレットに作曲者の解説がありますが、5つの楽章はシヴァ神の舞踏による5つの宇宙の姿とともに、仏教における5大世界観を表わしています。それを、アイヌの「神の鳥」に歌わせているのがこの作品の内容です。

この点だけでも、松村氏、あるいは松村氏に影響を与えたチェレプニンの影響(「ナショナルであることがインターナショナルである」)を見ることが出来ます。そこに、生来のクラシック以外のジャンルも好きであるという性格が相まって、創り上げられたのがこの作品であるといえましょう。

吉松氏はこの作品を作曲した当時、現代音楽に絶望し、遺書のつもりで作曲したとブックレットに綴られていますが、まさに死ぬ気になって「血路を開いた」作品であろうと思います。破壊から創造へ・・・・・なぜ、この5つの標題になったのか、その一端が音楽によくあらわれている作品だと思います。実際、第1楽章では不協和音が鳴り響きますが、スケルツォ楽章とも言うべき第3楽章ではロケンローし、第5楽章では旋律線が分かり易いものになって終ります。

次の「鳥と虹によせる雅歌」もそういった作品の一つです。曲は序奏の後大きく3つに分かれますが各々はつながっています。しかし、その音楽は旋律線がはっきりし、リズムを感じることが出来ます。でも、決して軽薄ではなく、むしろ神々しさすらあり、気品と気高さを感じます。実際よく聴きますとここにもロックの影がありますし、その上で出世作である「朱鷺によせる哀歌」や、ストラヴィンスキーの「火の鳥」のエコーが仕組まれています。その上で、やはり不協和音で始まった音楽がやがて旋律線がはっきりとして来て、落ちついて終わるという構造は、氏の音楽に対する姿勢が感じられる部分です。

ようやく、私には吉松氏が聴ける「時」が来たように思います。



聴いているCD
吉松隆作曲
カムイ・チカプ交響曲交響曲第1番)作品40
鳥と虹によせる雅歌 作品60
藤岡幸夫指揮
BBCフィルハーモニック
(Chandos MCHAN9838)



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