かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ペルゴレージ スターバト・マーテル

今月のお買いもの、今回はペルゴレージスターバト・マーテルです。ソリスト、器楽合わせて7人という小編成です。

ペルゴレージはもともとオペラ作曲家だったのですが、後年は健康状態を悪くしてからは宗教音楽を作りました。むしろ合唱をやっている人にとってはその方面で有名でしょう。その代表作が、スターバト・マーテルなのです。

ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%8B%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B8

スターバト・マーテルについては以前ハイドンのものをご紹介したときに取り上げましたが、「悲しみの聖母」と訳される通り、イエス・キリスト磔刑となった際、母マリアが受けた悲しみを思う内容です。

スターバト・マーテル
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%AB

今月のお買いもの:ハイドン スターバト・マーテル
http://yaplog.jp/yk6974/archive/548

このハイドンのものはマリアの気持ちが前面に出ていたような曲ですが、このペルゴレージのものは激しいものは控えめになっていて、むしろ記号論的なものでマリアの感情などが表現されています。その上で、美しい旋律がバロック期らしい構造で持って乗っかっています。

まず、このペルゴレージの作品の特徴と参りましょう。あまりこれに触れているサイトが少ないのですが、編成としてはオリジナルに近いものとなっています。ソプラノが女性であってボーイ・ソプラノではない点がオリジナルとは違っている点ですが、私はこの点は評価しています。現代、特に日本で演奏するにおいて、果たしてボーイ・ソプラノを使用たり得るのかどうかを考えた場合、その点を突っつくのは現実的ではないと思うからです。

CDを聴く聴衆としてはその点を突っ込んでもいいでしょうが、かといって演奏者あるいはそれを企画する側の人とすれば、あまりそういったことを気にする必要はないと思います。むしろ、オリジナルはそうなのだと知っておくことの方がはるかに重要でしょう。それを本場のほうが分かっているとすれば、日本人である私は批判する資格はありません。

次に、数字です。今月もちょうど「音楽雑記帳」で取り上げましたが、そもそもスターバト・マーテルは3行詩です。

音楽雑記帳:洋の東西で共通する「聖なる数字」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/744

この上記エントリを読んだうえで、ウィキのスターバト・マーテルのページを見てほしいのです。そして、ペルゴレージはその3行ごとに曲を分けています。さらに、マリアの気持ちで重要な部分ではその3行ごとをひとまとめ(5トラック目「Quis est homo qui non fleret」と9トラック目「Sancta Mater, istud agas」。5トラック目が3つ、9トラック目が5つ、それぞれひとまとめ)にし、さらにそれを奇数にしているわけなのです。

なぜなら、それこそキリスト教において聖なる安定の美を表わすからです。そういった美意識の下で作曲されている曲なのです。それが分かりますと、この曲がなぜあまり旋律上において気持ちが前面に押し出されていないのかが理解できると思います。つまり、ペルゴレージとしてはすでに形式で持ってそれを十分前面に押し出していると考えて作曲しているから、なのです。そして当時はその知識を持った人たちがきちんとそのメッセージを受け取って、感動したということなのです。

その上で、この曲はバロック的ではない部分も散見されます。ホモホニックな点がそれですが、それは彼の生きた時代というものがさせたのでしょう。彼が生きたのはバロック後期です。そしてペルゴレージは実は26才でこの世を去っていまして、このスターバト・マーテルはその死ぬ間際に作曲されたものなのです。当然、来るべき次の時代というものを先取りしていてもおかしくはないと言えるでしょう。もし彼が60歳(1770年)まで生きていたとしたならば、大バッハよりも後の時代になったわけなのですから。

音楽先進地域であったイタリアで、なおかつバッハよりも後の時代に生まれた作曲家だったのです。そういった点が、この曲には散見されるわけなのです。その点からは、彼の慟哭すら聞こえてきそうです。

演奏面ではすでに現実的なものと述べましたが、その現実的な選択がとてもいい結果をもたらしているように思います。このソプラノはとても軽く、その上で力強さも持っていまして、しなやかさが伝わってきます。そもそもソプラノパートはボーイ・ソプラノであったという点が十分に考慮されていると思います。このソプラノの表現力は素晴らしいですね。力に任せて演奏することはアマチュアだってできるんです。プロであれば、女性であったとしてもボーイソプラノらしい表現ができてこそ、一流ではないかと思います。これは、カップリングのサルヴェ・レジーナでもまったく一緒です。

ブリリアント・クラシックスは本当にこういった演奏に事欠きません。それでいて630円。しかも今回は簡単な解説付き。安すぎます。

ナクソスもうかうかしていられませんね。国内メーカーはいうに及ばず、発想を転換しなければならない時代に入っているような気がします。



聴いているCD
ジョバンニ・バッティスタ・ペルゴレージ作曲
スターバト・マーテル
サルヴェ・レジーナ ハ短調
ティモシー・ブラウン指揮
アンガード・グルフィド・ジョーンズ(ソプラノ)
ローレンス・ザッゾ(カウンターテナー
ジュリア・ビショップ、ジョアンナ・パーカー(ヴァイオリン)
ペーター・ウィスキン(ヴィオラ
ジョアンナ・レヴィネ(チェロ)
マーク・レヴィ(ヴィオローネ)
(Brilliant Classics 93952)



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地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。