かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:スクリャービン 法悦の詩・ピアノ協奏曲・プロメテ

今回の神奈川県立図書館所蔵CDは、三度スクリャービンです。今回は法悦の詩とプロメテ、そしてピアノ協奏曲です。指揮はブーレーズ、オケはシカゴ交響楽団です。

法悦の詩はすでにスヴェトラーノフ指揮USSR交響楽団のものをご紹介していますが、重複してでも借りたのはやはり図書館でできるだけスクリャービン交響曲を集めたいという希望があったことが大きかったです。

それと、スクリャービンと言えばピアノなのです。ですから、ピアノ協奏曲は聴きたいと思っていました。その矢先に見つけたのがこの音源でした。

それにしても交響曲が二つ入っている割には、協奏曲の棚にありました。もともとそうなのか、それとも司書が間違えていたのかは定かではありませんが・・・・・恐らく、「プロメテ」が入っているからなのではとは思っています。

まず、法悦の詩は当然以前聴いたスヴェトラーノフとの比較になるわけなのですが、このブーレーズのものは意外とすっきりとしています。特に最後の盛り上がりの部分ではスヴェトラーノフのほうがいいようにも思いますが、不協和音の鳴らし方がうますぎるのかもしれません。上品すぎる感じがします。

もう少し突き抜けたものがあってもいいのでは?という感じもします。よく言えばエクスタシーを冷静に表現しているとも言えるんですが・・・・・

スヴェトラーノフのは清潔なものでしたが、最後の盛り上がりは本当に鬼気迫るものがありました。このブーレーズのは、全体的にはスヴェトラーノフよりはいいのですが、最後の部分で物足りなさを感じます。

この一曲だけでも、別個にCDを買ってもいいなと思っています。

次に、ピアノ協奏曲ですが、1897年という、まさしく世紀末に成立したこの曲は、その割にはメロディラインははっきりしていますし、ラフマニノフ風な曲でもあります。そういえばスクリャービンラフマニノフとは同じ学校の卒業(モスクワ音楽院)ですし、互いにその存在を認め合った間柄でもありました。そういった関係が垣間見える作品がこのピアノ協奏曲です。その点では、いわゆる次のプロメテなどと言った作品のイメージで聴いてしまうとあれ?と思うかもしれません。

そのプロメテですが、正式には交響曲第5番です。プロメテと略されたり、プロメテウスと略さずに言われたりしますが、いずれにせよ、この曲は一楽章の交響曲です。でありながら、実はピアノが大活躍する曲でもあります。ピアノ協奏曲かと見まごうばかりの曲ですが、最後には声楽すら入っていまして、そしてとても神秘主義の色彩が強い作品で、このブーレーズもその点を前面に押し出して演奏しています。

そうなると、なぜ「法悦の詩」を多少上品にブーレーズが演奏したのかも、ある程度想像できます。つまり、法悦の詩ではまだ神秘主義にようやく傾いたときであり、ピアノ協奏曲はモスクワ音楽院という保守的な音楽を制作する作曲家を生み出す学校卒業生らしい気風が残っている時代の作品なのでその点を前面に押し出し、そしてプロメテでは完全に神秘主義に染まっている時期なのでその点を前面に押し出す、という区分けをしていると考えてよさそうです。

プロメテが描いている内容は、西洋文化、特にギリシャ神話の根幹でもあるのですが、ベートーヴェンも音楽劇「プロメテウスの創造物」で音楽にしていまして、古今の作曲家が題材にしてきました。

交響曲第5番 (スクリャービン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC5%E7%95%AA_(%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%B3)

ウィキの説明からも明らかなように、この曲は神話を描いているというよりは、プロメテウスを褒め称えるという内容でして、その点ではまったく神秘主義的な作品であると言っていいでしょう。ゾロアスター教とも関連があると考えられるでしょうし、ウィキの神秘主義の項目を見れば、その中には密教も含まれていることから、仏教とも遠くつながる音楽とも言えるかと思います。

神秘主義
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E7%A7%98%E4%B8%BB%E7%BE%A9

密教
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%86%E6%95%99

まるで、両界曼荼羅を見ているかのような、そんな雰囲気がする音楽です。しかし、その点だけ見てしまうと、この音源が持つ特徴を見誤るような気がします。

この音源は、ブーレーズなりの「スクリャービン論」なのだと思います。特に、その作品の時期区分に注目して、それに基づいてスコアリーディングをし、演奏していた結果、こうなりましたよという、ブーレーズの一つの解答なのです。

私にスクリャービンという作曲家の立つ位置を顧みさせてくれた音源であると言えるかと思います。できれば、成立順に収録してくれるとありがたかったなと思います。




聴いている音源
アレクサンドル・スクリャービン作曲
交響曲第4番「法悦の詩」作品54
ピアノ協奏曲嬰ヘ短調作品20
交響曲第5番「プロメテウス」作品60
アナトール・ウゴルスキ(ピアノ)
シカゴ交響合唱団
ピエール・ブーレーズ指揮
シカゴ交響楽団



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