かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ワイルの交響曲とヴァイオリン協奏曲

今回の神奈川県立図書館所蔵CDのコーナーは、クルト・ワイルの管弦楽曲を取り上げます。マリス・ヤンソンス指揮、ベルリン・フィル他です。

ワイルってだれ?という方も多いかと思います。

クルト・ワイル
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%AB

以前、コルンゴルトをご紹介したことがありますが、そのコルンゴルト同様彼もユダヤ人でありまして、ナチス・ドイツに政権が移ってからは、アメリカへ亡命した作曲家です。

基本的には後期ロマン派から現代音楽のカテゴリーと時代に分けられる作曲家です。ワイルと言いますと風刺のきいた音楽というイメージの方が先行してしまいます。その理由として大きいのは、なんといっても二つのオペラの大作「三文オペラ」と「マハゴニー市の興亡」なのですが、それとはまた違った、純器楽をここでは聴くことが出来ます。

まず、交響曲第2番です。1934年に作曲された、彼の純器楽で最後の作品です。3楽章制を取り、不完全ながらソナタ形式を取ります。時代らしい不協和音が鳴り響きますが形式的にはさほど冒険をしておらず、ワイルがもともとよって立つものが伝統的なクラシックであることを教えてくれます。音楽自体もどちらかと言えば後期ロマン派に近い現代音楽という感じで、音楽の展開を容易に追うことが出来ます。

次にヴァイオリン協奏曲です。1924年にもともと吹奏楽との協奏曲として書かれました。5つの部分に分かれますが基本的には伝統的な3楽章制で、きちんと急〜緩〜急を取ります。このヴァイオリン協奏曲ではかなり現代音楽していますが、しかしよく見てみますと形式的なことはさほど壊していません。カデンツァが第2楽章に来ていることが珍しいくらいですが、それが形式を壊しているとも言えません。モーツァルトもピアノ協奏曲の初期の作品でやっているからです。そこから見ても、ワイルは形式的にはあまり前衛的なことはやっていません。

それでも、ナチスや保守的な人から弾圧を受ける結果となりました。その原因は、恐らく3曲目の「マハゴニー市の興亡」にあるのだと考えられます。

「マハゴニー市の興亡」は1930年に作曲された、三文オペラと並ぶ彼の代表作です。ここではそこから抜粋して組曲となっています。オペラで出て来る順番に並んでいますので、オペラを一度見ますと面白さが加わります。ここでは組曲となっていることで、純粋な器楽曲としても水準が高いことを教えてくれます。

マハゴニー市の興亡はアメリカにある仮想の街を舞台にして、人間の欲というものを徹底的に風刺したオペラです。最後滅びゆくなかでもその欲を丸出しにし、まったく反省しない人間たちは、この21世紀でも充分通用します。いや、この21世紀にこそ、このオペラは光を放つといってもいいでしょう。恐らくオペラを見ましたら、多くの方が今の日本と思わず比べてしまうのではないでしょうか。それは残念ながら組曲からは感じ取ることが出来ませんので、音楽が素晴らしいと感じましたらぜひともオペラを見ていただきたいと思いますし、ヤンソンスが狙っているのもその点なのかもしれないと思っています。

その音楽性の基礎となったのが、上二つのような管弦楽曲であるということは、知っておくともっと面白いと思います。芸術を単なる高みだけではなく、そのクオリティを保ったまま、大衆へと伝えようとし、しかもしっかりとその目的を果たしているワイルの音楽は、この世紀にもっと評価されてくるでしょう。

ただ残念なことながら、日本ではまだまだ無名に近い作曲家です。「ベルリン・レクイエム」は既に触れましたが、それ以外も機会がありましたら、私もぜひ聴いて、レヴューを書いてみたいと思っています。



聴いている音源
クルト・ワイル作曲
交響曲第2番
ヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲作品12
「マハゴニー市の興亡」〜オペラからの組曲(ヴィルヘルム・ブリュックナー=リュッゲベルク編)
フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン)�D〜�H
マリス・ヤンソンス指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団



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