かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ショパン ピアノ作品全集13

神奈川県立図書館ショパン作品全集の今回は第13集です。全集の最後まで来ました。この第13集では様々なジャンルのものを一気に取り上げています。その中には、名曲の舟歌も含まれています。

ショパンはいわゆる古典派的なジャンルは得意としないと言われますが、全集をここまで聴いてきますと、果たしてそれは正しいのだろうかという想いがあります。

例えば、この第13集は変奏曲が最初に二つ並んでいますが、それはショパンらしい、ヴィルトォーソと和音に満ちていまして、どこが不得意だというのだという気がします。

形式も、三部形式がきちんと使われていたりと、決して形式が嫌いだったわけでもありません。アシュケナージおよびこの全集のディレクターは、そういったある種の「表面的な批評」に大して、それは正しいのかと真っ向勝負を仕掛けたようなように、私には聴こえます。

確かにこの第13集には、あまりショパンがたくさん書かなかったジャンルが収録されているため、ここに収められているものはあまり得意ではなかったのではないかという判断も可能だとは思います。しかし、実際はどうだったのでしょうか?

私としては、ウィキでも盛んに出て来る表現ではありますが、形式にのっとろうとするとどうしてもそこからはみ出てしまう、そもそものショパンの音楽のスケールの大きさというものを私たちは理解しておく必要があるのではないかという気がするのです。ですから私は第1集を取り上げた時に、皆さんにショパンはどのような作曲家だと思いますかと、問いかけたのです。

この第13集で見逃せないのは、タランテラと舟歌です。この二つはまさしく、私は思っているショパン像を垣間見せてくれます。バッハ以来の伝統に立脚しながら、それを超える音楽性をもった彼の精神というものがストレートに反映されていると思うからです。民族音楽をストレートに使い、それを芸術までに高めようとしたショパンの「想い」と芸術性にこそ、私たちは注目すべきなのではないのかと思います。

それがまたわかるのがフーガでして、これがきちんとしたフーガなのです。彼はやろうとすればフーガだってきちんとかけるのです。ただ、その枠内だけでおさまりたくない・・・・・そんな彼の気持ちというのが、この第13集でははっきりと見えてきます。

ショパンは自分より前の時代の何が嫌で、何を尊敬していたのかを、私たちに再考させてくれる全集であると思います。

さて、こうして全集を最後に俯瞰し締めくくってみると、アシュケナージというピアニストは実に作曲家の細部をよく見つめる演奏家だなあと思います。この第13集はどれも丁寧な演奏ですし、それだけにショパンに対する尊敬の念を演奏のそこかしこから感じることが出来ます。一方で、民族的なものが反映されているものは、いい加減な点と丁寧な点が同居する部分があります。そこから見え隠れするもの・・・・・・それは、国際政治のパワーポリティクスのような気もします。

ショパンが当時味わったであろう、祖国がなくなるということのさみしさを、アシュケナージは敢えていい加減な演奏の中に込めた・・・・・それが正しいかどうかはわかりませんが、丁寧な演奏のものにははっきりと彼のメッセージが存在することを考えた時、そんな気がするのです。それは、この全集が1970年代から80年代にかけて作られたという事実が語っているように思います。アシュケナージと言えば、旧ソ連演奏家です。ソ連と言えば、演奏家が海外で演奏する際にも監視があったという国家です。

その眼をかいくぐりながらの収録だったとすれば、なぜ民族的な音楽で技術を持っているアシュケナージがいい加減な演奏をしたのかの理由が浮かび上がってきます。

今でしたら、アシュケナージはいったいどんな演奏をするのだろうと、興味が付きません。

私は図書館でこれを借りたことで、ショパンの音楽の原点というものを、アシュケナージから勉強させてもらった気がします。



聴いている音源
フレデリック・ショパン作曲
変奏曲イ長調パガニーニの思い出」(「ヴェネツィアの謝肉祭」)による)(1826)
華麗なる変奏曲変ロ長調作品12(エロールの歌劇「リュドヴィク」のロンド主題による)(1833)
ロンド変ホ長調作品16(1832)
ボレロ ハ長調作品19(1833)
カンタービレ 変ロ長調(1834)
「ヘクサメロン」変奏曲ホ長調(1837)
ラルゴ 変ホ長調(1837?)
アレグロ・ド・コンセール(演奏会用アレグロイ長調作品46(1841)
タランテラ 変イ長調作品43(1841)
フーガ イ短調(1841)
「アルバムの一葉」ホ長調(1843)
「春」ト短調(同名歌曲作品74-2の編曲)(1838?)
二つのブーレ
�T.ト長調
�U.イ長調
ギャロップ・マルキ 変イ長調(1846)
子守歌 変ニ長調作品57(1843か1844)
舟歌 嬰ヘ長調作品60(1845か1846)
ウラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)



このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。