かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:BCJ バッハ カンタータ全曲演奏シリーズ6

今回のマイ・コレは、BCJのバッハカンタータ全曲演奏シリーズの第6集です。収録されているカンタータは第31番と第21番の二つです。

この二つはバッハの初期におけるカンタータのうち傑作の誉れ高いもので、特に第21番は何度も再演されています。

まず第31番「天は笑い、地は歓呼する」です。1715年4月15日に初演された復活祭用のカンタータです。ライプツィヒでも3度、1724年と1731年、そして1735年にも再演されようです。1724年と1731年は年月までの記録があるので確実ですが、1735年は推測の域を出ません。

内容としてはルターの復活観が反映されたものとなっており、BWV4と深い関係にあります。つまり、復活の喜びは受難にその大元があるという考え方です。それ故に喜びは激烈で半端なものではなく、それを表現しているのが冒頭楽章であるシンフォニアと、それに続く合唱です。シンフォニア、いや、カンタータティンパニを使うことはそうよくあることではありません。そういった楽器構成でキリストの復活の喜びを表現しているわけです。

この曲はもともと変ホ長調でしたが、ライプツィヒでの再演の際、ハ長調へと移調されました、具体的には管弦楽の一部をハ長調へと移調しているのですが、この聖なる調が本当にこの曲が表わしている「受難と復活」、それによる喜びをよく表わしているように思います。

次に第21番「わがうちに憂いは満ちぬ」です。1713年10月8日に初演されたとされていますが、その年の12月のハレ聖母教会オルガにスト採用試験用に改訂され、さらによく14年6月17日にさらに改訂され、1723年6月13日にライプツィヒで再演された時にも改訂されています。もしかするとその間1720年にも改訂がなされているとも言われています。

このCDでは最後に3つ、異稿が収録されているのですが、それはこういった改訂があったことに由来します。しかし、内容が大きく変化したわけではありません。大きく変化したと考えられているのは一番最初で、まず6曲のカンタータがあって、それを2部構成の全11曲へと拡大したのが一番大きな変化だとされています。しかし、その後この曲が使われた目的によって、何度か改訂を受けています。

そもそも、この曲は追悼用であろうとされています。1713年に初演された時には、シュヴァルツブルク=ルードルシュタットの前宰相A.フリッチュ夫人A.M.ハレスの追悼用として作曲され、その内容から翌年のヨーハン・エルンスト公がフランクフルト・アム・マインへ病気療養におもむくときの別れの音楽用として演奏されています。そのせいか、独唱が最初ソプラノであった部分をテノールへと変えています。そして、ライプツィヒでの再演の際には、それが混然一体となった版となり、それが現在演奏によく使われています。

しかし、このCDではその版では演奏されません。あくまでも1713年に演奏されたスタイルで演奏しています。実はこの曲は第12集にも収録されているのですが、そこではライプツィヒで演奏された形で演奏されています。となると、1714年のものはどこへ行った?となるわけなのですが、それが最後についている3つの異稿ということになるのですが、正確にはそれは間違いで、いくつかのレチタティーヴォがソプラノになっているものもテノールになりませんと、1714年版とはなりません。ですので、BCJの演奏ではあくまでも再現しているのは1713年と1723年のものであるということは留意しておく必要があります。

私としては、できれば1714年版が再現できるよう収録してほしかったですね。というのは、この曲は2曲目の冒頭合唱に当たる部分で、「Ich」に長音を使っているのです。これはかつてマッテゾンが言語感覚に合っていないと批判した点なのですが、事典同様、私はバッハを支持します。というのは、なぜ「私」に長音を使っているのかと言えば、その私がそれぞれその演奏対象の偲ぶ方であるから、なのです。その悲しみを今度は聴き手に引き合わせるため、音楽が進行していくという構造を取っているためなのです。だからこそ、バッハはソプラノが主であるヴァージョンと、テノールが主であるヴァージョンの二つを残したのです。

恐らく、その後どちらでも使えるようにとしたのだと思いますが、実際にはその男女どちらともが折衷され、性を超えた悲しみを表現するヴァージョンへと落ち着いたようです。その点はまた第12集の時に詳しく述べることといたしましょう。

演奏面としては、ソプラノソロの高音部での硬さが目立ちます。もしかするとこれはわざとかもしれません。いつもの鈴木美登里女史ではなく、モニカ・フリンマーが担当しているからです。それが分かるのが、第21番第3曲めの異稿の演奏です。これは1714年に演奏されたヴァージョンになるわけなのですが、そのテノールゲルト・テュルク)は実になだらかに演奏しています。女性、男性で表現を鈴木氏が変えているという可能性の方が高いと考えます。

合唱団は本当に秀逸です。それが分かるのが第21番の第6曲目の合唱で、途中で前奏なしに場面展開する所で全くアンサンブルが崩れることなく次の部分へと突入していきます。日本人気質というところでしょうか、前奏なしで入るというのは特に合唱では難しいのですが、それを難なくこなす合唱団を評価する向きは少ないです。

海外では「日本人がよくこの合唱を!」と評価されているということは、知っておいていい点だと思います。それはやはり、文化の違いなのでしょうが、それゆえに宗教曲をどれだけ重視しているかの違いの方が大きいのだと思います。



聴いているCD
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第31番「天は笑い、地は歓呼する」BWV31
カンタータ第21番「わがうちに憂いは満ちぬ」BWV21
モニカ・フリンマー(ソプラノ)
ゲルト・テュルクテノール
ペーター・コーイ(バス)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
(BIS CD-851)



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