かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:ディースカウの「冬の旅」

今回の「マイ・コレ」は、シューベルトの歌曲集「冬の旅」です。独唱はディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ、ピアノはジェラルと・ムーアです。

このコンビはゴールデンコンビと言われていまして、名盤も生み出していますが、残念ながらこれはその名盤のほうではありません。ただ、その名盤を生み出した時期に近い1962年に収録されたものです。

私が持っているのは廉価盤ですが、もともとはどうやらドイツ・グラモフォンから出ていたもののようです。昔全く同じものを見かけた記憶があります。

このCDは、父がだれかから頼まれてチラシを持ってきたのがきっかけだったと思います。実はちょうどそのころ、私はシューベルトの三大歌曲集を集めようとしていました。その時に話しが来たのがそのチラシだったのです。確か、一枚1000円だったと思います。

今でしたら、古い録音はもっときちんとしたレーベルから廉価盤として出るでしょうが、このCDを買った十数年前はまだそういう時代じゃなかったんですね。ディースカウでしたらそれなりの値段が付いた時代です。しかも、私もこの曲はディースカウ、もしくはハンス・ホッタ―でほしかったので、ちょうどよかったのです。

すでに社会人になっているとはいうものの、「失われた10年」に入ったばかり。先が見えない生活の中でクラシックをそろえてゆくという事態に直面していた私は、快諾してシューベルトの歌曲集で二枚買うことにしたのです。そうすれば、父の顔も立つというもの。

初めて聞いたときの感動は、もうたとえようのないものでした。今、もっと性能のいいパソコンで聴きますと、本当に素晴らしい演奏をなんと安い値段で買えたのだろうと思います。父に感謝ですね。

ディースカウの声は濁りがなく、優しく、しかし力強いもので、それによる表現力が抜群なんですね。この「冬の旅」という歌曲自体、只者ではないですから、当然といえばそうかもしれませんが・・・・・

「冬の旅」は、1827年に完成した、シューベルト最晩年の歌曲集です。翌年に彼は死んでしまうわけですから、まさしく死を意識して書かれた曲です。当時のシューベルトは体調が思わしくなく、回復の見込みもないことから次第にふさぎ込みがちになり、ついに死を意識し始めます。その中で出会ったのがミュラーの詩「冬の旅」だったのです。それにインスパイアされて作曲したのが、この歌曲集です。

ですから、その内容はとてつもなく暗いです。ネクラという表現のほうが正しいでしょう。でも、なぜかそれが心を打つんですね。

特に、私は昨年来死を意識してきましたから、このシューベルトの感覚がとてもよく理解できるんですね。今では私は徐々にですが回復へと向かっていますが、彼はその気配もなくなくなってしまうわけで、それはもうどん底っていうくらいの曲になるのはやむを得ないだろうと思います。

曲は二部に分かれていますが、それはシューベルトがはじめ半分の12曲分の詩ししか知らなかったからで、曲や構成に変化が起きたとかそういうわけではありません。全24曲でひとかたまりと考えるべき曲です。

本当は一曲づつやりたいくらいです。それはまた別な企画を立てたいと思います。解説でもいいですが、一つ新しい企画を考えていまして、その中でやりたいなって思います。それでけ、個々の曲が特徴あるものばかりで、聞き飽きることがありません。とても暗い曲がずらっと並んでいるというのに・・・・・・

それはおそらく、この演奏がディースカウということもあるのでしょう。彼の声はとても明るいのです。それでいて軽い。だからこそ重々しくないのです。暗い曲をあまりにも重く演奏してしまうと、自殺したくなるほどのすさまじい演奏になってしまいます。しかしこの曲はもともと歌詞が文学作品であるということを考えますと、むしろ軽い声質のほうがやはり聴きやすいですし、暗い中にほのかな明かりがともった感じで、厳しい現実を耐えて生きるという歌詞の内容に合うように思います。

一曲の解説はウィキペディアにも出ていますので、参考にしてみてください。実は菩提樹もこの歌曲集だとしりますと、また違った一面を知ることになるのでは?と思います。

冬の旅
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%AC%E3%81%AE%E6%97%85#14._.E9.9C.9C.E3.81.8A.E3.81.8F.E9.A0.AD.EF.BC.8810.EF.BC.89_Der_greise_Kopf

また、歌詞対訳も下記サイトに出ています。

http://www.damo-net.com/uebersetzung/schubert.htm



聴いているCD
フランツ・シューベルト作曲
歌曲集「冬の旅」
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウバリトン
ジェラルト・ムーア(ピアノ)
(ピジョン GX245)